15 決着
どうぞよろしくお願いします。
次の日、美咲がフランス街の方で警備隊に逮捕され、取り調べを受けているとか。内縁の男と捕まったとか、美咲が殺されそうに、人に危害を加えたとか、日本防衛隊はフランスの方に美咲の身柄を預けていた状態だから引き取りは考えていないとか……。
ざわーっと噂が飛び交った。
まあ、私にまで確認しようとする猛者はさすがに現れず、と思っていたら、敏夫が現れて「ちょっと話をしないか?」と声を掛けてきた。
「なんでいるの!?」
「いちゃ悪いか!
本部に書類を提出しに来たんだよ!」
愛理さんがタイミングよく通りかかり「部屋、使う?」と言ってきて、なんか、相談室みたいな部屋にふたりで入って、面談みたいに向かい合って座った。
「大丈夫かよ。
話は聞いた。
美咲がそんな小さい頃から、アレクをその……、染野とか、その、男に襲わせようとしてたなんて……」
私は笑った。
「なんでだろうね。
『その、男に』敏夫は入ってなかったね。
やっぱり、美咲は敏夫のことが好きだったのかもよ」
「やめてくれよ」
「あ、でも、将来的には私を愛人にするとか約束してたんだっけ?」
「……ごめん」
「ううん、もういい。
美咲と直接、なんて言うか、本音を、やってきたことの意味を聞いて、私は……。
美咲なんて従姉は最初からいなかったんだと気づいた。
いたのは、私を嫌いで、なのに殺すのでなく、傷つけて生かして、ひどい目にあわすことに喜びを感じて、利用しようとする悪魔、だった。
それを私はやっつけた。
だから、もう忘れる」
「前にアレクは……、俺が手を差し出していたら、俺の手を取ったかわからないと言っていたけど。
それは本心?
俺が美咲に好かれてるようだからって、引いた……、とかじゃなく?」
うーん、どうだったかな?
中学に入るくらいまでは、敏夫は一番よく会う友達ではあったけど。
「うーん、その時だったらどうだったか、わからないけど。
今は、振り返ってだと、手は取らない。
たぶん、あの時逃げていたら、追いかけられてもっとひどいことになっていたと思うから」
「……まあ、そうだね。
あの時、18歳の高校生と19歳の学生じゃ、守るの無理だったからな。
アレクは、今、幸せ?」
「うん、幸せだよ。
好きになった人と一緒になれて、その人の子がお腹にいて。
これからのことを、これからしたいこととか話せて。
なんて幸せだと思う」
「そっか……」
敏夫が笑う。
「ああ、大岡大尉が羨ましいな。
彼女が、奥さんが、ぐーっと幸せのハードルがひくーい人で」
「えっ?」
「本当だよ。羨ましい」
んー、悪口?
「……敏夫は志願だから2年間防衛隊で過ごして、それからどうするの?」
「んー、どうすっかな。
アレクは大岡大尉と一緒に防衛隊だろ?」
「うん……、そんな感じ。
異世界の人達のこともまだまだ気になるし」
「うん……。
アレク、俺、本当に小さい頃から。
会った時からアレクのことが好きだったよ」
「……いきなり、何!?」
「ははっ!
アレクも過去に決着つけてきたんだろ。
だったら、おえにもつけさせろ!
うん、ありがとう。幸せにな!」
「……うん、ありがとう。
敏夫も幸せになってね!」
「……ぜってー、アレクより幸せになってやる」
「ふふふっ、その意気! 頑張れ!」
ふたりで笑いながら席を立ち、ドアを開けたらハヤトがいて驚く。
「ハヤト!?」
「あ……、いや……」
敏夫がさっとその脇をすり抜けながら軽くお辞儀をして去って行く。
「ありがとう! 竹中!」
ハヤトが声を掛けて見送っているのを見て、気づいた。
ハヤトが話をするように頼んだのか!?
私はハヤトの背中に抱きつこうとしたけど、お腹が邪魔で、うう。
ハヤトが慌ててこっちを向いて肩の方を抱き寄せてくれた。
うん、幸せ。
これは言わないけど……、ありがとう。
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