12 悪魔
どうぞよろしくお願いします。
「あー、あの時のあんたの背中!
すっとしたわ。
それに、治療に呼ばれたのは染野で!
あんたのこと、前からいやらしい目で見てたもんねー。
いやらしいこと、されたんじゃないのー。
子どもなのにー、ねー」
「……美咲。
あなたはここで生きていくと決めたの?
もう日本には戻らないと」
「……何?
急に。
ええ、私はここで生きていく。
日本の早瀬製薬は黒須に買収されたみたいだし。
早瀬家の財産も賠償とか維持費とかで消えたんでしょ。
日本に帰ってもどうしようもないし」
「そう……。
なら、もう日本に、早瀬家に、私に関わらないで。
なに、その髪と目?
美咲、……そんなに私になりたかったの?」
美咲の目がつり上がる。
「あんたになりたかったわけじゃない!
早瀬家当主のお姫様になりたかったの!
あんたが邪魔だった!
いきなりギリシャから帰って来て、外国人の血が混じった混血児で!
ちょっと毛色の違う綺麗な子だからって、みんなからちやほやされて。
あんたが帰ってくるまでは、私がお姫様だったんだから!」
「……美咲だって、十分お嬢様だったじゃない。
私よりいろいろ物も持ってたし、欲しい物は買ってもらえてたよね!? 友達も多かったし」
「だけど、身分で言うと、あんたの方が上でしょ!
だから、いちゃもんつけて、傷物にして、引きずり下ろして……。踏んづけてやったのよ!
冬馬伯父様が早く死んで、決定的なチャンスが来て!
その後、私が当番にさえ当たらなければ!」
「は……。
本気で言ってる?」
「本気よ!
あんたを利用して染野と結婚させてやろうとしたけど、成人とかお父様がいろいろ言うから時期が……。男を送っても、あんた撃退しちゃうし。
もうさっさと閉じ込めて、染野にやらせとけば良かった!」
恐ろし過ぎる。
美咲はもう……。
私の従姉の美咲という人物は最初からいなかった。
いたのは、嫌いな私を全否定して消すのではなく、ただ苦しめることを喜びにした、悪魔のような……。
「もう……、美咲のことは忘れる。
だから、美咲も私のことは忘れて。
もう私の名前も、姿も騙らないで。
私を利用することは、もう金輪際やめて!!」
「……あんた、妊娠してるの?
大きなお腹抱えて!
あの大尉の!
へー。そんな醜い身体で乗り込んで来るなんてね。
本当にバカよね!
あ、いいこと考えた!
その客ね、妊娠している女に無理やりやるのも好きなんだって。
ネリの代わりをしてもらおうかな。
背中の傷もいい感じじゃない! ひどい古傷!」
一声高く、美咲は笑ってから、何か言って、くいっと顎を私の方へ示した。
立っていた男ふたりがゆっくりとこちらを計りながら回りこんでくる。
「ロイ! 亮さん!
ネリを外へ、車に先に乗せて。
佐伯さん、ピエール、私達はゆっくり戻りましょう」
私の言葉に亮さんとロイがネリを連れて、あのドアから戻って行く。
私達は男達を牽制しながらゆっくりとドアの方に向かう。
奥に座っていた男が立ち上がり、カウンターに近寄り、美咲に話し掛けている。
「ミサキ……」
ん? 名前以外に何か言っているが、フランス語、わからん。
美咲はフランス語できるんだ、すごいな。
いや、そんなこと、もう気にするな。
読んで下さり、ありがとうございます。




