10 フランス街
どうぞよろしくお願いします。
「ひいー、俺、殺されますよ!
勘弁して下さい!」
佐伯さんが恐れを隠さない。
「ごめん。
やっぱり、ケリをつけときたい」
車は日本街を出て、他の国の街を横断しながら、フランス街を目指し始めた。
フランス街、中心街はとってもおしゃれだ。
カフェとか、瓶の素敵な高級な香水店、天然のプロヴァンス地方の香料と原材料を使った保湿クリームとかスキンケアシリーズのお店とか、乙女心をキュンキュンさせる要素はいっぱい。
私はせっかくだからと、適当にお店のお薦めのいい香りのハンドクリームとボディクリームを買いこんで来て! と佐伯さんとピエールをお使いに行かせた。
「美咲さんと会って……、大丈夫ですか?」
亮さんが心配そうに言う。
「うーん、大丈夫と思うけど。
このままってのもなんかずっと引っかかるし。
美咲がこのままでいいなら、もうそれで、縁を切るというか、そう宣言したい。
それだけ」
ロイが驚愕の表情を浮かべる。
「縁を切る!?
そういう相手だったのか!」
私は頷いた。
「父が亡くなって、美咲の父の叔父が家の当主になったら、私は……、使用人のように、いや、奴隷に近いかな。
その時は、生きていくために受け入れるしかなかったけど。
今、思うと……。でも、あの時、飛び出していても、すぐに見つかって連れ戻されていただろうし。
しょうがなかったとは思うけど……。
美咲と私はそういう……関係です」
ピエールがやけに笑顔で紙袋を下げて戻って来た。紙袋を抱えた佐伯さんは顔が強張っている。
「買い物上手!
オススメ、たくさん買いマシタ!
ひとつクダサイ!」
私は紙袋を受け取り、ラベンダーのハンドクリームをひとつピエールに渡した。
「これでいい?」
「アリガトウゴザイマス!」
「ああ、ピエール、これ、大丈夫なのかよ!
俺達、大岡大尉と原隊員に絞められるよ!」
佐伯さんは悲し気に言っている。
うん、みんなへお土産はできた。私のボディクリームも確保!
「じゃあ、美咲の所へ、お願いします!」
車は進み、裏通りのほうへ……。
「ここ?
何か想像してた感じと違う……」
私が想像してたのは銀座のママがいるとかいうお酒を飲むクラブで。ビルの中とか。
ここは一棟というか、ちょっと広めの、なんだ、イメージを絞り出すと昔のニュース映像で見たキャバレーという言葉が浮かんだ。
なんか、暗い。
建物も古くて……。
まあ、雰囲気があると言えば?
ピエールが「ウラから入る、イイデスネ」と言った。
「あ、まだ営業時間じゃないもんね、OK!」
「ちょっと! アレクさん!
運転手さん!
ここで待っていて下さいよ! 絶対!」
佐伯さんがオロオロしながら、車を降りる私を見て、覚悟を決めたように付いてきた。
ピエールの案内でさらに裏に回り、裏口をノックするが誰も応対に出ない。
ピエールがノブを回すと鍵はかかっていない。
ピエールがそのまま中へ進み、私も続いた。佐伯さん、ロイ、亮さんがついてくる。
奥から女性の悲鳴が聞こえた。
「いや! やめて! お願い、やめて!」
私にはわかったということはフランス語でない。
異世界語ということだ。
異世界の女性が悲鳴を上げている!!
ロイが顔色を変えて私のそばに来て、ふたりでピエールを急き立ててどんどん進んだ。
読んで下さり、ありがとうございます。




