1 親孝行
終章となりました。
そこまで長くなる予定はありません。
どうぞよろしくお願いします。
「うう……、私も異世界行ってみたかった……」
亮さんにジトッとした目で見られる。
「私もデス……」
なぜかピエールもジトジトッて感じで。
本当にこのふたり、一緒に仕事してんだ!?
◇ ◇ ◇
異世界から戻ってすぐ防衛隊の病院に連行(?)され、風呂に入れられ、入院着を着せられ、入院させられた。
個室の病室のベッドの上でぼんやり考える。
他のみんなはどうしているんだろう。
タニアやミースは?
最初に行ったマインやライナス、ミネバにナップは!?
ノックと同時にドアが開いて、私はベッドの上に慌てて体を起こした。
井狩総班長だった。
ドアを静かに閉めてこちらに歩み寄ると、私をやさしく抱きしめてくれた。
私もそっと抱きしめ返した。
「終わり良ければ、すべて良しね」
井狩総班長の微笑みを見て私は戸惑う。
「え? それはどういう……?」
「これでこの話はおしまいってこと。
もう、これ以上のことは起こらないと思うけど?
もう異世界は謎のままこちらに関わってはこない。
あなたも原隊員も無事に帰ってきた」
「はい……。絶対帰るとは思ってましたが、不安になることはありましたから。
本当に無事に、みんなで帰って来れて、良かった……」
「うん、特に栄養状態に問題も、外傷も特になし。
……おめでとう! 妊娠してるわ。
詳しいことは後で検査を受けてになるけれど」
「あ、やっぱり!?
途中でもしかしてと思って……。
うれしいと思ったと同時に、すごく怖くなりました。
この子を守れるのかって……」
その時の気持ちを思い出して、声が震えた。
井狩副班長が、背中を撫でながら私のお腹に言う。
「いい子でよかったわ!
親思いのいい子で!
悪阻とか、体調の不調もそれほどなかったんでしょ?」
「ん、そうですね。
今のところはそれほど気になることは……」
そうだ確かに親孝行だよね。
あっちで体調不良になったり、つわりになって、吐き気に襲われてげーげーしてたら、何もできなかっただろう。
その後、医師の診察を受けて、妊娠3ヶ月あたりと言われる。
向こうでの1ヶ月弱はこっちでは3ヶ月も過ぎてるから。
性交日とか着床時期とか生理の時期とかもうずれまくってて、純粋に私が過ごした日にちで計算するとたぶん結婚した前後あたりだろうと思う。
12月から1月にかけて生まれると言われて、ちょっとあわてた。
すごく時間があるように、でも、もう、みたいな!?
その夜、やっとハヤトと原さんが病院に来てくれて。
原さんも入浴と健康診断だけは第三師団で簡単に受け、そのまま仕事に……。
私は妊娠してる可能性もあるということで大げさな扱いになったみたい。
ハヤトに、原さんにずっと守ってもらってたことを話せたし、向こうで起きたことをたくさん話せた。
そして改めて、こちらのことを聞いた。
私と原さんが魔法陣で消えてしまって、ロイが転移ということに気づいて、すぐに周辺を捜索して神官をひとり捕らえたこと。
そこから、ロイを送り返そうとして、間違えで私と原さんを異世界へ転移したことがわかったこと。
捕まえた神官から神殿の魔法陣と聞いて、ロイがもしかしたら、兄とすぐ出会えるかもしれないと前向きな予想を言ってくれたこと。
他の神官には逃げられてしまったが、神官達は向こうと連絡も取れない、人を呼び戻すことはもちろん、こちらから行くのも当分できないだろうと、捕らえた神官とロイの話を聞いて、ハヤトは呆然としたそう。
でも、ロイが楽観的な、でも具体的な予想を上げてくれ、それに縋り、待つことができたのだという。
「あの時は……、待つことしかできず……」
ハヤトの低い声に、その時の気持ちを思う。
私と原さんより、精神的にきつかったのだろうと、本当にそう思えた。
手紙のやり取りができ、それから、ライナス達が転移してきた。
ロイが中心になって、受け入れ、そして、これからたくさんの民が送られてくると予想して、各国に救援を求めた。
中国、イギリスが最初に。
当番月の前後で協力してくれていたこともあったし。
そして、研究に参加している国がどんどん手を挙げてくれたそうだ。
長い間読み続けて下さり、ありがとうございます。
終章ですが、たぶんそんなに長くならない予定です。




