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12 逃げたんじゃない

どうぞよろしくお願いします。

 モーゼとタニアの顔が少し強張っている。

 ん?

「治癒魔法ができる……!?」

「はい、母もできましたよ」

「リーリラ様が!?」

「……はい、よく幼い私の小さな怪我とか発熱とか治してくれました」

「黙っていたのか?」

 は?

 私はその言葉が私に向けられたのかと思って首を傾げそうになり、母の方か! と気づいた。


 モーゼがゆっくりと説明してくれた。

「治癒魔法はとても珍しい。

 異世界から召喚された者が、特に女性が使えることがあるが……。

 召喚者は王室に嫁ぐことが多く、稀に王家の血筋の少女に発現することがある……」

 リーリラは治癒魔法を使えたのに、黙っていたってこと?

 たぶん、神官に利用されたくなかったのかな。なんか、囲い込まれそうだし。

 家族やジュドーと一緒にいられなくなるとか、そういう理由もあったんじゃない?

 私は瞬間的にそこまで考えを巡らした。


「アレクサンドリア……。

 リーリラ王女は自分は逃げたのに、君にはずいぶんと大きな願いを掛けたものだ……」

「……アレクサンドリアの名前の由来はロイに聞きました。

 私にこの世界と地球と懸け橋になるようなそういう気持ちはあったでしょうが、そこまで強い思いはなかったと思いますけど。

 それに、母は逃げていません。 

 この世界のために、王族のひとりとして責任を持って地球へ行きました。

 その時に愛する人と一緒にいるという願いを奪われて……。

 それでも、新たに得た愛を、最後まで守ろうとしていました。

 自分の命を懸けて!」

 私は母のことを思い出しながら、モーゼに伝える。

 わかって欲しい。母は逃げたわけじゃない。

 モーゼは私を見てふっと笑った。

「君ならば、できるかもしれないな。

 この世界の王女の血と召喚者の資格を持つ女性ならば」

 私はタニアを見た。

「タニアも頑張ろう。

 ジェシーのためになら、きっとできそうじゃない?」

 タニアはびっくりしたような表情で私を見た。

「……アレク」

「できる! 私達ならできる!」

「……うん」

 タニアがちょっと泣き顔で言った。



 その日からモーゼとタニアはいろいろな魔法を教えてくれた。

 やはりイメージが大切。

 それと言葉。

 モーゼとタニアがやって見せてくれると、その仕組みがわかるようになり、すぐにできるようになる。

 驚かれた。

 でも、立ち止まっている暇はない!!

 日本がダンジョンで当番月のうちに何とかしなきゃ!



 モーゼの所に来て3日間が過ぎた。

 向こうではもう9日間過ぎてんだよね!?

 気持ちは焦るけど、ひとつひとつクリアして行かないと。

 やっとタニアの魔法のレベルに私は追いついて、モーゼから召喚魔法に繋がる、物を取り寄せる魔法を教えてもらえることになった。

読んで下さり、ありがとうございます。

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