11 魔法の修行
どうぞよろしくお願いします。
「召喚魔法はそんなに簡単にできるものではないよ」
ジェシーがそう言ってタニアを見た。
「モーゼの娘で魔法が上手なタニアにもできなかったんだ」
タニアが私を見て唇を噛むような悔しそうな表情で頷いて見せる。なんか見た気が……、あ、ジェシーも唇を噛んでたよな、さすが夫婦。
「じゃあ、タニア、一緒に練習しよ!
いろいろ教えて!」
タニアが戸惑った表情をした。
私は淡々と説明する。
「私は地球に夫がいるの。絶対に帰らないといけない。
そのためにも、まず神官の言うことを聞かなくてもいいように、召喚魔法を身につけたい」
私の言葉にタニアがモーゼを見る。
モーゼが頷いた。タニアは少し考えるような……、でも、顔を上げると晴れ晴れとした表情だ。
「はい! 私、もう一度挑戦してみます!」
この小さな家にモーゼは幽閉されてる。
若い時に地球へダンジョンを送り込むことを反対したそう。王家が地球への移民の方針をとったこともあり、その時は引いたそう。
力をつけて有力者となったが、その後、実権を握った神官の派閥に捕らえられ、幽閉ということらしい。
娘であるタニアが王太子に嫁いでいたこともあり、王家に対しての人質というか見せしめってこともあるらしい。
この家を出ない(まあ片足を鎖で拘束されてる)、この家の中でしか魔法を使わない(外部に干渉はだめ)約束を守れば、比較的自由に家族であるタニアやジェシーと会うことはできるらしい。
「お父様! 病気になって!
看病のために、私と侍女のアレクが泊まりこむことにしましょう!」
「我が娘ながら、そういうことはよく思いつくな」
モーゼが笑った。
ジェシーと原さんは城に戻ることになった。というか家が小さすぎてこれ以上人を増やせない。明日、様子を見に来ると。
ふたりを見送り、もうひとつある部屋や玄関続きの台所など確認してからモーゼの部屋に戻る。
鎖は部屋の中では移動できるくらい長く、部屋の中だけである程度生活ができるような感じに整えられていた。
ただ、鎖に繋ぐ足輪が擦れて、慢性的な傷になってしまっている。
「アレクはどんな魔法ができる?」
タニアに聞かれ、炎と水を少々出すこと。雷のような魔法で魔物を痺れさせること。一番最初にできたのが傷や身体を治療したりする魔法だったことを話す。
「実際にやって見せますね。足、失礼します」
椅子に座るモーゼの足元に膝をついて座ると傷の様子を見る。うん、足輪擦れとでもいうのかな。かなり痛々しい。
足輪が少し大きめなので手でずらすと、傷の状態がよく見える。
私はその傷が治る様子を思った。
まず出血が止まり、肌の擦れの赤味や腫れが引いて、傷が小さく周囲から良くなって……。
「……うん、いいですね。
タニア、何か足首を覆える布みたいのないかな?
こっちの世界は靴下とかないよね?」
グルグルと足首に巻くような仕草をして見せる。
「あ、ではこれは!」
タニアが差し出したのは大判のハンカチみたいな柔らかい布で。私は受け取り三角に折るとモーゼの足と足首を覆うように巻いて結んだ。
「どうです?
これで足輪が直接触れなくはなりましたけど?
痛いところありますか?」
「……ああ、大丈夫だ。もう痛くない。ありがとう」
私は立ち上がり、自分が座っていた椅子に戻る。
「後は……、言葉の魔法、日本語だけだけど。それぐらいかな?」
読んで下さり、ありがとうございます。




