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5 王太子

どうぞよろしくお願いします。

またまたちょっと長めです。

 その時、ドアの向こうで木の音というか、そして、少し乱暴な感じの足音が聞こえた。

 ああ、入口の大きな木のドアを開けて、人が入ってきたのかな?

「何故、ここにジェシー様がいらっしゃるのですか!?」

 知らない声。男性でちょっと偉そう。


 私と原さんは息を潜めて、その場にそっと座った。部屋の奥の方にいるのに、けっこう声が聞こえるから気をつけないと。

「ああ、妻とお参りに来たんだが、体調を崩してしまって。

 この資料室で休ませてもらっていた。

 タニアが詳しいものだから」

「そうですね。花が供えられていましたね。いつも、タニア様がお参りに来て下さって。

 タニア様は本当にお忙しい中でよくやられてますな。

 ……ロイ様も向こうにお渡りになりましたし、ジェシー様とタニア様もいつでもお渡りになれますよ」

「い、いや、私は王太子として、……最後に。

 私より先に国民を、困っている国民を頼む」

「そうですか……。

 タニア様もお父上のことでそれどころではないかもですね」

 なんだか嫌な感じの言い方だ。

「ところで何か、神殿の方で変わったことはなかったですか?」

「いや、特には。

 私が気分が悪くなったことぐらいか?」

「それはそれは……」

 声が急に小さくなり、聞こえない……。ドアの方に近づいて聞き耳を立てるか迷った。でも、物音を立ててしまう危険性の方が怖くて動かなかった。

 でも、収穫はあった。

 ジェシーは王太子とわかった。つまりロイは王子で、リーリラは王女だったわけだ。

 ダンジョンから放出される魔力がどこまで生存を可能にしているかの、実験台でもあったわけで。

 声の感じから、王太子であるジェシーが話の相手に遠慮しているのが感じられたし、相手の感じも圧力というか、偉そうな感じ。

 たぶん神官なんだろう。


「……わかった。ロイの石の確認だな。

 城に戻ったら、すぐ見に行こう。タニアが人を連れて来てくれるんだ。そうしたら、城に戻る」

「早急によろしくお願いしますよ」


 静かになった。神官が出て行ったのかな?

 しばらくして、物音がして部屋のドアが少し開いて、ジェシーが入ってきた。

 手に袋を持っている。

 袋から出されたのはこの世界の服?

「これに着替えてくれ。そして荷物はこの袋に」

 そして原さんにジェシーが言った。

「ハラさんだったか? 申し訳ないがハラさんはこっちで……」

 ジェシーが私を見る。

「私はアレクサンドリアです。アレクとお呼びください」

「アレク……、アレクはタニアとこの部屋で着替えてくれ」

 私が頷くとタニアが入ってきた。


 原さんとジェシーが向こうの部屋に自分の荷物を持って行った。

 私はタニアさんに教えてもらいながら服を着る。言葉がわからないふりをするのが結構苦労した。

 直線縫いのシンプルな被りの服だけど、肩から胸に垂らして腰で結ぶ長めの布、帯のような布を巻いて押さえと装飾にするんだな。

 大きめの袋に医療士の荷物と制服と靴を入れた。

 こちらのサンダルに履き替えたからね。


 着替え終わると、タニアさんがドアを開ける。なんだか強そうな男性がふたりいて、ひとりづつ、私達の荷物を持ってくれた。


 なんとなくふたりで並んで歩く感じになった時に原さんが小さな声で言った。

「アレクさん、似合いますね」

「原さんも」

 私達が言葉の魔法を使えたことは内緒なのでこっそり話す。

「大丈夫ですか?」

「私は、母の世界ということでなんか懐かしい気持ちもしちゃうんですが……」

 正直に答える。

「そうですか……。向こうで大岡大尉がどうなってるか、考えると怖いところです……」

 確かに……。向こうは私と原隊員が消えてしまい、どうなってるんだろう。

 でも、ロイがいるから、こっちに来ていることはなんとなくわかりそうだ。


読んで頂き、ありがとうございます。

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