58 名前負け
どうぞよろしくお願いします。
ハヤト、小野田さん、原さん、佐伯さん、福澤さんが中心になってイギリスからの引き継ぎを行っていた。
なんだかロイとゆっくり過ごす時間ができてしまった。
前に、私の名前について『願いが』とか言ってたことが気になっていたので聞いてみた。
「アレクサンドリアは祖国の創生というか、最初の聖女だ。
彼女から人間の世界が始まった。
アレクが、この地球と失われる祖国の両方を受け継ぐ、最初の聖女のような存在になって欲しいと思ったんじゃないかな」
それはそれは……。ずいぶんすごい名前を付けてくれてたんだね、お母さんっ!
「名前負けしそう」
私が呟くとロイが笑った。
当番月に入り3日目。
今日から日本が単独でダンジョン内の見回りを行う。
私とロイは、ハヤトの隊に同行させてもらうことになった。
ダンジョンに入る。
暗闇に覆われた空間という感じに見えるのだけれど、入ってみると中は思ったより明るい。
そして、温かい。
風がないせいもあるのかもしれない。
なんか、密閉されてるみたい。
広い空間なのに、なんか変だな。
穴から外に出ると寒いくらいなのに、空気が動かない感じがして、だから温かいというか暑く感じるのかもしれない。
私達の後方、入り口付近にもうひとつの小隊が待機しているそうだ。ベースキャンプみたいな感じ?
穴は広いすり鉢状になっていて、ゆっくりと下って進んでいくみたいな感じらしい。
普通ならずっと土とか草地とかなんだろうけど、不思議といろいろな場所があるのが見える。
山が見えたり森や湖が見えたり、でも、進んでいくと遠くも近くもなんだか変わってくるのが変な感じだ。
なので、位置と方向を見失わないようにGPSで確認し、入口の方向を常に確認している。
日本はこの場所からの入場だけど、もし、神官が入ってきているなら?
フランス防衛隊の所からだろうか?
まあ、もう少し奥に入らないと出てこないだろうが。
ちりちりした感覚がした。
「ガルムだ!」
原隊員の声。
ガルム……、北欧神話のオオカミ、犬の魔物だっけ。
灰色の毛並みに胸元が赤い。神話でもフェンリルよりは格下だ。
佐伯隊員がボウガンを構えた。
福澤隊員とハヤトは日本刀のような剣を抜いた。
小野田隊員は槍みたいだし、原隊員はなんだろう、不思議な形……、あ、十手の刃付きみたいな!?
佐伯隊員のボウガンから連射で矢が放たれ、走って来るガルムが何匹か転げるように止まるのが見える。周囲のガルムの隊列が乱れる。
連射し終えると、佐伯隊員は後方の私とロイと原隊員の所に戻ってきて、矢を補充して、周囲を警戒する。
ハヤト、福澤隊員、小野田隊員で混戦状態だ。
ロイは剣を抜くと、前の方のハヤト達の方へ出て行ってしまう。
原隊員が少し困った顔で私を見た。
本人がやる気だからしょうがない。
私は苦笑して見せて、ロイを見送った。
「大丈夫ですかね?」
原隊員が小さな声で言って。
「まあ、様子を見ましょう。あまり離れないようにはしましょう!」
読んで下さり、ありがとうございます。




