54 幸せと失う怖さ
どうぞよろしくお願いします。
ロイが寝たので、原隊員には仮眠に行ってもらった。
私とハヤトは病室の簡易ベッドに寄り添うように座っていた。
ハヤトが小さな声で言った。
「ジュドーとリーリラ……。
やっぱり、俺達が惹かれ合ったのは運命だったのか……」
私はハヤトの胸に手のひらをそっと当てた。ここにハヤトがいて、お互いに生きていると穏やかに感じられて、気持ちが落ち着く。
「私はハヤトが、ハヤトだから好きになった。
向こうの世界のことは関係ない。
……強いて言えば、父と雰囲気が似ている……と思ったことがきっかけだから、全く関係ない」
ハヤトが笑って、私の頭を撫でた。
「俺も電車の中で見かける、いつも物静かな、でも芯の強そうな女の子のことがずっと気になってて」
「ふふっ、なら大丈夫だね。
あの時、私は母にも今の私とも全然違う外見でしたから。内面を好きになってくれたってこと?」
「ああ、お互い、好きになった。それだけだ」
なんかほっとする。うん、なんでこんなに安心するんだろう。
私は心にしまっておけなくて、呟いた。
「ダンジョンがなくなっても……、ギリシャにいれば、母は生きていられたのかな……」
ハヤトがぎゅっと抱きしめてくれた。
母もわからなかったのだろう。
ダンジョンのそばにいなければ生きていけないという情報だけで、こちらに来たのだろうし。
さらに、一緒に来たはずの恋人のジュドーとは時空ではぐれてしまって。
たったひとり、ダンジョンのそばで……、保護され、生きてきた。
どんなに寂しく、怖い思いをしただろう。
だから、父と私と、何があっても、離れたくないと……、思ったのだろう。
母の気持ちがなんだかわかる。私は涙が溢れてきた。
「リア?」
「母はこちらに来て、ひとりで。
そして、やっとできた家族と別れたくなかったんだね。
それが自分の命を縮めるとわかっていても、父と私のそばにいたいと日本に……」
ハヤトが私の顔を覗き込んでから、また守るように抱きしめてくれた。だめだ、涙が止まらない。
「私も……、このまま、ずっとハヤトといたい」
「俺もリアとずっといたい」
幸せだ。
なんて幸せ。この幸せを失うのが怖い。
幸せなのに、なんでこんなに怖いんだろう。
とうとう当番月が始まる。
ハヤトはダンジョンに入る。
私は……。
私も何かできるだろうか。
医療士として後方で待つのではなくて、一緒に、行くことはできるだろうか。
何か、何かしていないとなんだか、怖さに囚われてしまいそうで、私はハヤトに抱きしめられながら、自分は何ができるかを考え始めていた。
読んで下さり、ありがとうございます。




