51 共同研究
どうぞよろしくお願いします。
その時、ハヤトと井狩総班長が病室にやって来た。
井狩総班長がロイを見てびっくりしている。
そうだよね。2時間、いや3時間ぐらい前にはまだ培養液に浸かっていたんだもんな。
「報告は受けたけど……。
実際に見るとすごいわね、あの状態からここまで回復するなんて。
もう皮膚の状態もいいの?」
「はい、再生したばかりの薄い皮膚を厚くするというのはどう治療すればいいか悩んだんですけど、大岡大尉が火傷をしていない部分の皮膚と同じぐらいにと考えたらとアドバイスくれて。
上手くいっています」
「そう……、でアレク医療士は倒れたとか」
「……すみません。
力を使い過ぎたみたいです」
「……それも気をつけていかないと。
自分の限界を知ることも重要だけど、まだこの力のことはよくわからない。
あなた自身がこの力を使うことで、あなたにどんなことが起きているのか。
体力のように休めば回復するものなのか、休みさえすれば制限なく使い続けられるものなのか。
あなたの命を削る……ようなものであるという可能性もあるわ」
「そうですね。未知数ですが……。
大岡大尉や私や、他に父が『新人類』と言っていた人達の話を聞きたいと思います。
力はそれぞれ、どのように使っているのか。どのように感じているのか。
でも、当番月になりますもんね。それが終わったらになるか……」
井狩総班長とハヤトが目をちらっと見合わせてからこちらを見た。
「そこで、大岡大尉と相談したのだけれど、日本だけで抱え込まず、各国の研究者を入れる形にしたらというアレク医療士のアイデア、いいと思うの。
あくまで日本主導でね。日本の施設で研究を行う」
「フランスへの牽制?」
「そうね。それもあるわ。
日本だけが抱え込んでいる秘密にしなければ、いいわけよね」
「そうですね。他の国の目があれば強引なことは言いにくくなるでしょうね」
「こちらの件は早乙女中尉に本部の方に研究室を用意してもらうことにしたわ。
早乙女少尉が担当になり、日本との連絡や調整を引き受けて担当してくれる。
小池中佐の方の調べも順調で、当番月が始まる前には日本へ護送できそうだと。
当番月の応援と入れ替わりという感じね」
私は頷きながら、気になっていることをハヤトに言った。
「武井先生は?」
「……検死は終わったよ。解剖も、かなり内臓や脳にダメージがあったようだ。
医師が言うには魔物の細胞が入り込んで、肉体の細胞を侵食し、一気に老化や、特に脳の『痴呆』のような症状が進んだのではということだ」
うん、最後だけ見るとそうだけど。
武井先生は日本街で診察してたよね!?
「……街で武井先生の診察を受けた人のフォローを。
そこまで痴呆のような症状は感じなかった。
ただ、なんていうか、心の底に隠していた気持ちとか、いうなれば理性で抑えなくてはいけない本能みたいなものが強くなっていたような気がします」
「人間としての善悪が考えられなくなっていた?」
「そんな感じではないかと。
でも、日常生活に支障が出るほどではない。心の奥底の抱えていたものについてだけ。
痴呆状態にさせられて、魔物の思考に乗っ取られてただけとは思えない」
「……武井は火葬されることになったよ」
「え、あ、良かった……」
私はほっとしつつ、父のことを思った。
「早瀬中佐のことも再度申請している。
リアが立ち会って、医師とともに魔物の毒性など問題がないことを確認してくれれば火葬できそうだ」
「……ありがとう、ハヤト」
読んで下さり、ありがとうございます。
リアは広く周知したいという狙いだったのですけれど。まあ牽制にもなるか。




