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47 リーリラの娘

どうぞよろしくお願いします。

「私が治療を担当すると良く治る、後遺症が少なくリハビリも上手くいくことが多い、とか。

 それぐらいの感覚で、データにすると平均よりいいくらいの。

 でも、アラスカダンジョンに来たら、その力がどんどん強くなるのを感じて。

 私は『()()』と呼んでいますが。

 自分でも驚きました。このように治っていってほしいと念じるというか、思うと、見に見えるスピードで傷が治っていったり、身体に害のある魔物の成分を取り出すように消すこともできました……」

 私は小さな声で報告した。

 医師は驚きの表情で言った。

「……ありえない力です。

 これが公表されたら、医学界、いや世界中が大騒ぎになるでしょう!!

『早瀬ファイル』が再び注目されるでしょう!」

 あ、今は注目されない方がいいかな……。


「先生、この治療の内容を加えた『早瀬ファイル』の続きというか補足というかを出したいと考えています。まだこのことは内密にお願いします」

 私の言葉に医師はハヤトを見て、それから頷いた。

「ある程度のことがわかり、データが揃ってからの発表というわけですね?

 大岡大尉、原隊員、井狩総班長とは共有と考えていいですか?」

 医師の質問にハヤトが答えてくれた。

「はい。

 本部の上層部とも共有する可能性はありますが、第三師団では、それぐらいで。 

 アレク医療士のおかげで、いろいろなことの理解が進んでいる。

 この火傷の症例も載せたいと思います。

 ただ、治ったということだけを公にしてしまうと『新人類』を人工的に造り出すなんて話になってしまうのが怖い。

 各国で人体実験などが起きる可能性が高くなる。

 アレク医療士の力の発現、武井医師の……実験の結果を合わせて発表することで、危険な考えの人や国の考えを変えられるのではと」


 医師は頷く。

「そうですね……。

 それにアレク医療士も狙われることになるでしょう。 

 こんな素晴らしい、いままでになかった、まるで魔法のような力だ……。

 各国から要請が来るでしょう。

 要請、依頼、脅し……」


 私は意識を男性に向ける。

 火傷はだいぶ良くなってきている、が、新しい皮膚がまだ薄そうなのはどうすればいいんだ!?

 皮膚を強くするって?

 時間を経ればいいのか? できそうだけど、どうイメージするかわからない。

 悩んでいると医師が言った。

「ああ、ここまで良くなれば、もう培養液から出して、通常の病室で管理入院できるでしょう」

 機器のボタンを押すと、密閉していた上の部分が開き、培養液の中に沈んでいたベッドがゆっくりとせり上がってきて、中ほどに浮くようになっていた男性の身体を掬い上げるようにする。

 バイタルチェック、酸素マスクも外す。呼吸の確認。

 モニターに大きな変化はない。

 左腕の点滴のラインはそのままに、酸素チェックの装置を通常のものに付け替えた。

 彼が目を開けた。濃い青い色の瞳。私をひたと見つめてから、唇を動かした。

「リ、リラ?」

 かすれたようなはっきりしない囁き。

 ずっと声帯を使っていなかったものな。

「リーリラは私の母です」

 男性の瞳に優しい光が灯ったような気がした。

 こちらに手を差し出そうとする。左手はいろいろ機器やラインが取れられていて動かしにくいことに気づいて右手をなんとか動かして……。

 私はその右手を両手でそっと握った。

「……リーリラ、の、むすめ、名は?」

「アレクサンドリアです」

 その男性は少し笑ったように見えた。

「むすめに、ねがい、を」

 そして、私のすぐ後ろにいるハヤトを見た。

「ジュ、ジュドー?」

「ジュドー?」

 ハヤトが怪訝そうに聞き返すが、男性は目を閉じた。


読んで下さり、ありがとうございます。

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