39 処分
どうぞよろしくお願いします。
武井先生を押さえていた隊員達が短い悲鳴のような声を上げ、手を離して後退る。
私はハヤトと前に出た。
先生が両腕を広げた。まるで、私が飛び込んでくるのを抱き留めようとするかのように。
「リーリラ!」
武井先生の手が不自然に伸びた。
木の枝のような……、先生が変容していく。
私は奥にいる魔物の枝のような腕を見た。まだ生きてる。
先生を取り込もうとしている!?
「原隊員!! その魔物の腕を破壊して!!」
私の言葉に原隊員と近くにいた隊員達が固定されている枝にナイフを刺した。
ダンジョン戦の対魔物のナイフだ。
木の枝の腕が切り裂かれる。
武井先生は自分が刺されたように絶叫し、のたうち回り……。
「先生!!」
私は無意識に武井先生を治療しようとしていた。
武井先生の中の魔物の部分を消してしまえば!!
武井先生の手から伸びた枝が抜け落ちたようになり、ぼろぼろと劣化していく。
そして、武井先生の身体も萎むというか……。
どんどん小さくなり……。
最後は弱々しい老人の姿に……。
本来の年齢より、はるかに年老いた小さな姿に……。
「先生……」
私はそれでも……。
武井先生はやけにきれいな目で私を見た。
「アレク、治療をやめるな。
そうか、それが君の力なんだね」
消えそうに小さい武井先生の言葉。
私は泣きそうになりながら、頷いた。
せめて、武井先生を人間として送ってあげたい。
「母は人間です。
父の言う『新人類』は、魔物との融合に寄るものではありません……」
私の言葉に武井先生は弱々しく微笑んだ。
「ああ……、そうだったのか」
大きく息をひとつして「私は間違えた」と。
そう言って……。動かなくなった。
人間に戻って……。
ちりちりした感覚は無くなっていた。
私はハヤトを見た。
「武井先生は魔物と融合して……、人間だけに戻っても生きられなかった……。
でも、他に実験として治療された人達なら、まだ助けられる!
魔物の希釈された培養液の治療を受けた人の治療はできる!
追跡してるって言ってたよね!」
ハヤトは武井先生の亡骸と私を見て頷いた。
私は弾かれたように武井先生を押さえていた隊員達の手を見て回る。特に何もない、ほっとした。
あの時、座っている先生に触れていた手が痺れるような変な感じがしたそうだ。
「大丈夫です。魔物の痕跡や混入はない」
その時、部屋の棚や倉庫を探索し始めた隊員が戻ってきて「原液と思われる液体が溜められています」と報告してきた。
「……治療して、消してしまう?」
私の言葉にハヤトが私を見た。
「無理はしないで。顔色が悪い。
少佐!
この魔物は火に弱かった。
燃やしてしましょう」
「あの魔物の腕も一緒に燃やしてしまおう」
少佐は続けて不穏な言葉を口にした。
「どこがダンジョンから持ち出したものなんだ?
話からすると、フランスか?
でも、そこまでは……、わかっていても抗議というか公にできないだろう……」
読んで下さり、ありがとうございます。




