合宿っぽい感じ
デスマーチ終わりました。ご迷惑おかけしました。
すんごく短いですが、今回は取り急ぎ更新を優先しました。
中途半端ですみません。
「たーまやー」
「神楽耶君やりすぎだ!!」
神楽耶ジュリエッタの立体魔法陣から、わりとシャレにならない数の炎弾が射出され、この世の終わりのように空を朱く染め上げる。
ウチのクラスの固定砲台は、ちょっと放置するとえげつない威力の魔法をぶっ放すからマジで怖い。
「ウソでしょぉぉォォ~~~ッ!!
「いやぁぁ~~~~~ッ!!!」
「ふあああぁぁ~~~ッ!!」
「無理なの~~~~ッ!!」
「あっついのすっきゃねぇぇェェ~~~~ンッッ!!」
比佐山、ドリル、小森、虎穴、千田君の5人。フラッグ・オン・フラッグのレギュラーメンバーたちはは、空に弧を描くとんでもない数の炎弾を見上げて絶叫した。
もちろん最後の台詞が千田先輩のものだし、興奮も露わに服を脱いで大の字になっている。
そして、遂に地獄の砲火が自由落下を開始した。
――――ドドドドドドドドドドドッ
「ヒィィッ!!」
「死ぬぅぅぅ!」
「ッチ来ぉ~いッ!!」
大音声と共に炎弾が川を挟んで向こう側に降り注ぐ。地表が抉れ、土砂が舞い上がり、そこらじゅうに火が付いた。地獄絵図以外の何物でもない。
フラッグオンメンバーは千田君を除いた全員が、必死の形相で逃げ惑っていた。
俺としては、遠慮の欠片も無い絨毯爆撃にドン引きの一言だ。
驚きのあまり、なぜかメガネが傾いた東雲が呆然と呟く。
「神楽耶君、これじゃ練習にならない。そもそも反則だ」
俺たちが練習していたのはフラッグ・オン・フラッグだった。
フラッグ・オン・フラッグは、味方陣地に置いてある旗を、相手陣地に突き立てれば勝利という競技だ。
旗を持つ者―――旗手は、敵チームに対する攻撃をすることが出来ず、ただ敵陣地に旗を突き立てる事だけが許されている。
同時に、敵は旗手を攻撃する事ができない。旗手に対して許される妨害行為は、旗を撃ち抜く、又は折る、の二つだけである。
旗を撃ち抜かれたり折られたらまた自陣に戻り、新しい旗を持って行かなくてはならない。
要するに、チームメンバーは、味方旗手が掲げる旗を防衛しつつ、敵旗手の旗を攻撃するというスポーツ色の強い競技である。
「それなのに旗手も含めた無差別爆撃とか、一発アウトだなこれ」
「本気のジュリエッタを見せつけるまで、わたし眠らない」
「色々ヤバいからやめてください」
目下、半泣きで爆撃から逃げ回っている可愛そうな子たちが正式メンバーで、そいつらの練習相手として俺たちがいるわけだが、ジュリエッタさんのおかげで競技どころでは無いというのが今の状況である。
神楽耶がキリッとした顔で言ってのけるが、あれは滅茶苦茶焦ってる時の顔だ。
「ふああぁぁァァ~~~ッ!!」
「ふんぎゃあぁぁぁ~~ッ!!」
「みぎゃあぁぁ~~ッ!!」
「死んじゃうの~~っ!!」
「イっちゃうのほぉォォォ~~~ッ!!」
阿鼻叫喚だった。
千田君がパンツに手をかけたのでいよいよクライマックスらしい。ていうかお前マジで死ぬぞ。
「いやあ、ジュリエッタちゃんの魔法は相変わらずセクシーだね」
セクシーサムライが驚いてるんだか呆れてるんだかわからない感じで髪を掻き上げる。
そうしている間にも、どんどん炎弾は轟音をまき散らし、わりと運動神経のよろしくないカノンさんと小森さんが直撃を受けてノビていた。
「い、いや、どうしようミナト君…… 西郷寺さんたち、すごく怒るんじゃ……」
「尼子屋、後はまかせたぞ。カノンと比佐山だからお前ならいける」
「そ、そんなのズルいよミナト君ッ!!」
尼子屋がクリクリおめめをウルウルさせながら俺たちに抗議するが、俺を含めた佐々木、神楽耶、東雲、の4人は、みんな気まずそうに斜め下を向いている。特にニヒルな笑みを浮かべているジュリエッタさんの汗がハンパない。
激おこムカ着火ファイアー状態であろう西郷寺カノンさんたちに、誰かが謝りに行かなければならないが、このままいけば尼子屋さんの出番になりそうな雰囲気だ。
「し、東雲君は学級委員長だからきっと――――」
「それにしても神楽耶君の魔法は凄まじいね。中級冒険者並みの火力だ」
「東雲の言う通りだ。なんで落校で燻ってんだよ。どこ行っても即戦力じゃねえか」
「さ、佐々木君なら一緒に行ってくれるよね――――」、
「ジュリちゃんはこれで制御が出来ればもっとセクシーなんだけどね~」
「殲滅戦なら100点満点なんだけどなあ……」
「神楽耶さんっ 神楽耶さんは当事者として僕に協力を―――」
「ジュリエッタは再びやらかしやがった……」
「ん? 何をだ……?」
ジュリエッタが斜め下を向いたまま、スッと俺たちの後方を指さす。
俺たちは半泣きで喚く尼子屋をスルーして彼女の差す方を目で追った。
その先には、未だ無数の炎弾が出番はまだかと揺らめいている。とんでもなく嫌な予感がした。
「ね、ねえ、神楽耶さん…… アレ、何……?」
「…………ジュリエッタの魔法」
「みんなすんごい勢いでこっち向いてるケド……?」
「………………やらかした」
数瞬の沈黙。
とてつもない悪寒にメンバーがゴクリと唾を呑みこむ。
ゆっくりと傾斜を上り、頂点に達したジェットコースターのように、
その悪夢の光景は、進路を俺たちに向けて一斉に落ちてきた
「ウソでしょぉぉぉ~~~ッ!!」
―――――――――
「威力だけなら校内一ですね、と、申し上げます」
軽く野戦病院みたいになっているテントの中、眠たそうに「ぬぼ~」っと立っている女子が言う。
小さく尖ったそれぞれのパーツと、眠たそうに半分閉じた切れ長の目。大和撫子と評するのがぴったりな和風美人。
キワモノ揃いの冒険科にさらにキワモノ臨時教師が来たおかげで影が薄いが、この合宿を手伝ってくれている先輩の3年錬金科、浮世斑先輩である。
「先日、私達が開発に成功した『患部に塗るだけ簡単、猛烈スライム君X』はいかがでしょう。火傷には最適。現在、特許出願中と、申し上げます」
欠損回復まで可能な超回復薬―――ポーションとは全く次元が異なるものの、治療行為としての簡易な傷病治療は錬金術の独壇場だ。
彼らの作成する怪しげな薬は、ちょっとした火傷や外傷程度の場合、金さえ積めばたちどころに直してしまう。
しかし、自然法則やらを完全に無視するポーションとは違って、まだ片足をこちら側に残しているせいか往々にして体に無理が生じる。その結果、副作用が認められる場合が多いと言われていた。
「……副作用は?」
「猛烈な下痢と腹痛に襲われる。と、申し上げます」
「塗るか」
訓練用ガーデンである息吹から外に出れば、きれいさっぱり怪我は治るがダンジョンと同じく疲労が蓄積される。
科学的な根拠は明確ではないものの、経験則として1日に何度も出入りを繰り返すことは人体、又は精神に悪影響を及ぼすというのが通説で、ダンジョン管理庁は『推奨されていない行為』として注意喚起を行っている。
したがって息吹を利用する際は、大怪我をしない限り治療しながら利用するのが普通だ。
といっても、高専生レベルで治癒魔導士などほぼいない。いや、もしかしたら皆無かも知れない。
そこで『困った時の虎穴さん』の、ちょっとした回復札が重宝されたり、錬金科の手製薬品がもてはやされたりするワケだが、落校錬金科の場合、副作用の方向性が微妙にアレなのばっかりだ。
彼らも完全に実験する気満々なので、下手にヘンなものを掴まされるとシャレにならない。
「ならばこんなのはどうでしょう。『飲んで納得! マルチビタミソ半分は優しさで出来ているΖ』」
壊滅的なネーミングからしてイヤな匂いがプンプンする。
ビタミソて…… 最初からネタにする気満々やんけ。
「……副作用は」
「三日間、催乳が必要な体になります。と申し上げます」
「飲むか」
牛か。
健全な高校男子がなんでおっぱい絞られなアカンねん。別の方向で発売せえや。
今回、合宿メンバーは皆口を揃えて先輩の薬はほぼ副作用が無くて助かると言っていたが、もしかして俺だけネタにされてたりする?
もちろん有事の際に必要になるかも知れないので一応もらっとくが。
「まあ、こういう時はやっぱり虎穴さんだな。おーい、虎穴さーん」
「はーい! なの!」
今週、あと2本UP予定です




