年下の女の子と本気のセ〇〇〇
和楽器バンドの華火に衝撃を受けて3万回くらいリピートしてる
最初はガチガチに緊張していたお茶の時間だったが、一輝の宣言通り足を崩して形式も取っ払っての談笑に、いつの間にかリラックスしている自分に気付く。
時折、チャラさ全開の一輝が茶を立ててくれるのだが、それが妙に堂に入っていて違和感が半端ない。そして納得できないことに茶が美味しい。
お茶も茶菓子も美味しいと、口の滑りだって良くなるもの。
「ご先祖様は宮本武蔵との決闘に負けて死んだとされているけど、セクシーな事にそれは間違いなんだ」
佐々木は割とガチであの天才剣士、佐々木小次郎の子孫らしい。
そして、元々この集落は佐々木小次郎の故郷でもなんでもなく、歴史の表舞台から身を引いた剣豪たちが寄り添う隠れ里的な集落なのだという。ちなみに近所の岡田さんのご先祖様は以蔵さんらしい。なんなんだこの村は。
ちなみに佐々木家は、門下生に伝えた表向きの剣術とは別に、サムライとしての奥義は一子相伝として、歴代の佐々木家当主に受け継がれてきたという。そして脈々と受け継がれてきたのは何も技術だけではない。
「これが我が家の家宝、『備前長船』さ。セクシーだろう?」
当主だけが抜く事を許された野太刀、いわゆる物干し竿を奥の間から引っ張り出してきた時はマジでビビった。たかが刀なのに、なんというかオーラが半端ない。おそらく抜いたらもっと凄いのだろう。
魔導技術もダンジョン由来の素材も使わずにこの威容である。
物に神が宿り付喪神になるというが、もしかしてそれは本当なのかもしれないと思った。昔の本物の職人さんはマジでヤバい。
「俺はお前の異常な強さを見てるから納得してる。本物のサムライなんだろ。見た目以外はな」
「ははっ そんなに褒めないでくれよ一之瀬」
「さすが兄上。クールにございます」
「何言ってんだお前ら」
見た目が気品に溢れている美少女だけに、まさかそんな事はないだろうと思ったが、遺憾ながらそのまさかだった。どうやら頭が残念なのは遺伝的な原因らしい。
「話の流れからすると、当主ってのがいるんだろ? 今はお前の親父さんだったりするの?」
「いや、師匠―――婆様だよ。ちなみに僕は一本も取ったことが無い。軽くあしらわれて終わりさ」
「マジ!? お前が1本も取れない婆ちゃんとかどんな化け物だよ!」
「婆様はクールを極めた本物の武人。レベルはさほどでもないですが、対人ならばおそらくトップランナーにすら届くかと」
少しだけ背筋が寒くなる。
一輝を軽くあしらい、トップランナーにすら届く本物のエルダー。そんな武人がレベルアップを重ねたら一体どんな化け物になってしまうのか。まあ…… 別にレベルアップは見たくないけども。
「じゃあ今は婆さんが当主で、次期当主が親父さんなのか?」
女性剣士が現当主なのだから、次は母親という線もあるが、さすがにあの主婦さんがどうにかなるわけではないだろうと思い聞いてみる。
「いや、父さんは隣町の普通の公務員だからね。剣技はからっきしなんだ。このままいくと、次の当主は僕だよ」
「なんかすげえなお前んち。偉大な剣豪誕生から数百年を経て、当主がチャラ男ってのもまたすげえ」
「そう、次期当主は兄上。そして当主が選んだ主君に全てを捧げるのが我ら一族の絶対にして不変のしきたり。我らに流れる血が、本能が、主君を求めている。兄上、鈴蘭は……」
先ほどから一度も姿勢を崩さなかった一輝の妹―――鈴蘭が更に背を正し、指先を腿の間に添えて兄を見上げた。
そして、一輝はそんな妹を静かに見下ろし、スウッと目を細める。
え、なに? 何が始まる感じかしら?
戸惑う俺を他所に、佐々木妹の目にギラリと凶暴な光が灯った。
「鈴蘭は一之瀬様のお力を拝見したく―――」
「鈴蘭、僕はお前に一つ言っておかなければならないようだ」
兄妹間で睨み合いにも似た視線の交錯。カコンと鳴った鹿威しがやけに俺の肌をザワつかせる。
突然、8畳ほどの茶室に危険な空気が満ちる。
いきなりのシリアスに俺は阿呆みたいにポカンと口を開けた。
「え、何この空気」
さっきまで和やかにお茶を飲んでいたのに何が起きた……
こんな時は気のきいたレベルアップジョークでも披露したいところだが、空気が凍る予感しかしないので自重せざるをえない。
「彼のセクシーさは……お前にはまだわからない」
背筋に悪寒が奔った。
カミングアウト的発言が理由ではない。唐突に漏れ出した、一輝の冷たすぎる剣気にだ。
クラス内選抜試合でも思ったが、本気の一輝のプレッシャーは半端ではない。気を抜くと膝が笑ってしまいそうになるほどだ。
なのに、佐々木妹は動じる気配すらない。むしろ一輝の剣気を正面から受け流して薄ら笑いすら浮かべている。
「それは……、暗に一之瀬様が『弱い』と仰せで……?」
「そうは言っていない。彼のセクシーさは別種のものだ。ただ強いだけの者ならば最前線に行けば吐いて捨てるほどいる」
「わたくしはただ知りたいのです。わたくし達サムライが全身全霊を以って忠義を尽くすに値する御仁なのかを…… 弱者に仕えるなどわたくしは――――」
「―――鈴蘭」
一輝が呟く。
静かな、それでいて凄まじい圧力が込められた一言に、初めて妹が気圧されるように息を呑む。
そしてさらに1オクターブ低く、穏やかな声音で言った。
「分を弁えろ」
一輝は―――微笑んでいる。
しかし、緩い弧を描いた目元からは身も凍るような無機質な瞳がチロリと覗き、ただただ静かに危険な光を放っている。とてもじゃないが血の繋がった妹に向けるものではない。
サッと顔を青ざめさせた鈴蘭がカタカタと震えだす。まるで蛇に睨まれたカエルだ。
俺は完全に置いてけぼり食らってるし、ていうかむしろ空気になっている。
兄妹の事情もよくわからないのに口出すのはどうかと思うが、流石に妹さんが可哀想になってきた。
なんか俺の扱いが原因っぽいし、ここは一発空気を変えなければ。
こんな時に髪を掻き上げつつ、小粋なレベルアップジョークの出番なのだが、遺憾ながら何も思い浮かばない。こんなんだからいつまでたっても彼女が出来ないのだろうか。
無駄に凹みつつ、場の雰囲気を変えたい一心で、努めて明るい声で言った。
「い、いやぁー サムライガールと手合わせしてみたいなー なんなら別の部分を合わせちゃっても――――」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「――――なんでこうなった」
縁側から一望出来る庭園の一角。テニスコートくらいは余裕で作れそうな広さの芝の上。
俺は今、1尺ほどの木刀片手に途方に暮れていた。
ナントカ樹脂製の銃把を握って何となくトリガーを引く。銃口から無駄に勢い良く赤い水が噴出した。
死んだ魚のような目を正面に向ける。
「いざ、尋常に」
物干し竿のような木刀を下段に構えた少女がいた。
今更解説するまでもなく、一輝の妹―――鈴蘭だ。
「ホントに手合わせする事になるとは……」
しかも小っちゃい木刀と無駄に高性能な水鉄砲。
ダンジョンの外なので殺傷武器が使えないのは当たり前だが、水鉄砲て……
火傷しそうなほど熱を持った日光が容赦なく照り付けて頬がヒリヒリする。立っているだけで汗が噴き出す気温と、庭園を流れる清水の音色がやけにアンバランスだ。空調の利いた屋内に帰りたい。
「一之瀬様、手加減はなどされませんよう」
「と言われてもなあ……」
ダンジョンにも潜った事のない年下の女の子相手に木刀で殴りつけるとか正直無理。
エルダーといっても低レベルならば身体強度は一般人と変わらない。だから木刀といっても当たり所が悪ければかすり傷じゃ済まないだろう。
取りあえず鈴蘭に向かってトリガーを引く。鈴蘭は焦るわけでもなくサッと避ける。
「まあ避けるわなそりゃ」
じりじりと近づいてくる鈴蘭を見て、俺は大仰に肩を竦めた。まだまだ木刀の届く距離じゃない。
マジでやんのかよと、半分抗議のつもりで一気に目を向けると、ボタン全開のセクシーサムライがにこやかに言った。
「悪いことは言わない。一之瀬、本気出さないと――――」
視界の隅で、鈴蘭が屈みこむよう腰を落とす。
頭の中でけたたましく警報が鳴る。ゾワリと全身の肌が泡立った。
「―――死ぬよ?」
ヤバいッ!!
理由はない。強いて言うならば勘だ。姿を視認する前から回避行動を開始。
視線を戻した時には、視界いっぱいに鈴蘭の姿があった。
「岩流『水月』」
「~~ッ!!」
―――ゾンッ
紙一重で頭上を通り抜けた暴力的な風切り音。
冷や汗が噴き出た。
意地とか見栄とか、そんな余裕が一瞬で消え去る。
なんだ今のは! くそっ 忘れてた! こいつらは対人特化の化け物、サムライだったッ!
俺は無様に転がって鈴蘭から距離を取る。
「兄妹そろって化けモンかよ!?」
「今のを回避するなんて、クールでございます」
「お前の兄ちゃんも同じような事言ってたよッ!!」
運も多分にある。踏み込みが見えない、いや、タイミングか!?
スピードは俺の方が早いはずだ。そもそものレベルが違う。
なのに初動と軌道がブレて認識できない。コイツといい一輝といい意識の隙間を突かれていいるように感じる。これが対人を極めたサムライの業だってのか。
「くそっ!」
苦し紛れに移動しながらトリガーを引く。
しかし余裕で躱され、しまいには木刀で水が斬られる。
時折振るわれる物干し竿を本当にギリギリで回避する。こんなの一撃でも食らったら悶絶ものだ。間違いなく装甲なんて余裕で抜かれる。
俺は早くも肩で息をし始めていた。全身が汗でびっしょりだ。
対して涼しい顔で息も乱さない鈴蘭が恨めしい。一体どういう鍛え方をすればレベル1でここまで戦えるのか。秩序破壊なんて使った瞬間殺される。
「本当に、兄上はあなた様を……ッ!?」
「何の話かさっぱりわかんねえよッ!!」
奇跡的に受け止めた大上段で鍔迫り合いをしながら、いかに時間を稼ぐか、そんな事ばかりが頭を廻る。堅実に勝てるイメージが沸かないのだ。
既に鈴蘭の瞳には失望の色が浮かんでいた。
―――くそっ どうしたらいいッ!?
選択肢は少なかった。このままではジリ貧だ。下手すればレベル1の年下の女の子に負けてしまう。
そうして捨て身の特攻に思考が傾きかけた時、その人物は突然現れたのだ。
「アンタたちッ! プリチーなアタシを待たせて良い度胸だねッ!?」
正解:年下の女の子と本気のセントウ




