不安
王妃が立ち去った執務室で、ルークはため息をついた。
「パーティー、ね…」
「そんなに嫌なの?
今までの三年間も、こういったことはあったでしょ?」
「ルークはパーティーが嫌な訳ではないだろう」
「それじゃあ何が?」
「そりゃあ婚約者決めの話もそうだが、今回はお前の御披露目というのが、な」
「私?」
ファリアは首を捻った。
一体なぜ自分が関係してくるのだろうか。
「……そういう、鈍いところが心配なんだよ」
ルークが投げ遣りに答えた。
「それに、パートナーはオズベルトだしね」
「鈍いというのはよくわからないけど、オズベルトがパートナーだと駄目なの?」
「………」
黙りこくるルークに変わって、バルドが苦笑しながら口を開いた。
「三年前、お前はオズベルト殿と踊った後に姿を消したからな。
ルークは心配しているんだ」
「…バルド」
ルークが不満そうに睨んでもどこふく風だ。
「そんな、別にオズベルト様に言われて城を出ていった訳じゃないわ。
本当よ?」
「それは分かっているけど、どうしてもね…」
「いなくなったりしないわ。
そんなことをしたら帰ってきた意味がないもの」
にっこり笑ってフィリアはルークとバルドの手を握った。
「ずっと三人でいたかったから、三年間頑張ったんだもの」
「そうだな」
「うん…」
真っ直ぐなフィリアの言葉に、二人の目元が和んだ。
しかしルークは直ぐに厳しい顔を作り、フィリアの手を握り返した。
目を瞬かせる彼女に、真剣な声音で告げる。
「オズベルトがパートナーなのは仕方がないから我慢するけど、フィリアはあくまで俺の専任魔術師だからね?」
「…?そうね?」
「俺を守るなら、そばにいなきゃいけないんだよ」
「え、ええ…」
ルークはグッと顔を近づけ、目線を同じくした。
「だから、誰かと踊る暇なんてないんだけど、いいよね?」
「分かったわ」
「ならいいんだ。
ごめんね、君に退屈な思いをさせて。
でも、主役が一曲も踊らないのは問題があるし、その辺りは俺がどうにかするから」
どうにか?と思いながらも頷いたフィリアを確認して、ルークはやっと厳しい表情をほどいた。
バルドからの冷ややかな目線が背中に刺さるが、全く気にしない。
ともかく最悪の事態―フィリアがたくさんの男達から誘われるという事―は回避できそうだ。
それだけで今回は我慢するとしよう。
(――それにパートナーは駄目と言われたけど、踊ってはいけないとは言われていないし、ね)
ルークはニヤリとほくそ笑んだ。




