眠りに
「美味しかった」
食事を終え、幸せそうな顔をするフィリアをルークは嬉しそうな顔で見つめた。
「…?
なに見ているの?」
「いいや、何でもないよ。
昼食も食べたし、これからどうしようか?」
「私は特にすることがないわ。
前回も数日しかここにいられなかったし」
苦笑するフィリアを見て、ルークはあることを閃いた。
「それじゃあ、三年前と同じ様に王都の西大通りに行かないかい?
今夜の酒場もその近くにあるしね」
「行きたいわ!」
フィリアが目を輝かせた。
「それじゃあ、はい」
ルークが自らの膝を示した。
それを不思議そうに見るフィリアに、にっこり笑う。
「もう少し寝ないと駄目だよ。
幸い朝の毛布もあるし、俺の膝を枕にどうぞ」
「…王都に行くんじゃないの?」
「休んでからね。
酒場の集合は夜だし、今から行ったら疲れてしまうよ?
だから、はい」
「だったら自分の部屋で…」
「それは駄目」
ルークは強引にフィリアの肩を引き、彼女をソファーに寝させる。
下を向くとすぐに目に入るフィリアを満足そうに見つめ、その体に毛布をかけた。
「ルーク重いわよ」
「平気だよ。
ほら、ちゃんと夕方頃になったら起こすから、寝ないと」
「だから別に寝なくても…」
「なら」
いい募るフィリアに、ルークは奥の手をだした。
「俺から専任魔術師への命令だよ」
「………分かったわ」
納得しきれていないようだが、どうにかフィリアはルークの膝におさまった。
眠れるようにと髪を撫でていると、余程疲れていたのだろう、すぐさま寝息が聞こえはじめる。
「よっぽど無理させちゃったんだね」
フィリアがしっかりと眠っていることを確認して、顔を覗き込む。
こんな風に彼女の顔を見つめるのは久しぶりだ。
旅の間にもそんな暇は殆どなかったし、数回ほどだろうか。
昨晩も暗さがあり、抱き締めて眠るに留めたのみだし、朝は慌ただしく、ゆっくり顔を見るなどということは出来なかった。
彼女の見た目は三年という月日がたっても全く変わっていない。
恐らく化粧などもしていないだろう。
ただひとつ、変わったところがあるならばそれは内面だ。
以前よりも表情豊かになり、三年の間学んだことが彼女の自信となって表れているのだろう。
三年前も今も、ルークの中の特別を占める少女。
自分は、彼女にどう映っているのだろうか?
(――少しは、成長しているといいんだけど)
例えば、彼女の記憶の中の彼のように。
(――そういえば)
ふと、思う。
彼女の記憶は、あれからどうなったのだろうか。
全くなにも思い出せないのか、あの時よりも少しは思い出せたのか、それとも――
もう、全てを思い出したのだろうか。




