秘された姿
六日目も、前日と同じように何事も起こらずに過ぎた。
そして今日は、約束の七日目。
今日という日が過ぎ、明日の朝謁見の間でルークがウィズの登用を拒否すれば、ウィズは城を出ていかなければならない。
「恐らく、仕掛けて来るのなら今日だろうな」
メイドの用意する紅茶での休憩をすませ暫くたって、いつものようにウィズを扉の前から追い出してから、バルドは重々しく呟いた。
「そうだね。
今夜辺り、また襲撃が来る」
「俺はお前の寝室の隣に待機していよう。
誰かが侵入したら、すぐに行く」
「わかった。
衛兵には人数が多いと気付かれるかもしれないし、言わない方が良いだろうね」
「……そうだな。
もしもに備えて、サージェントには伝えておくか?」
ルークは少し考えて頷いた。
それを確認してバルドが立ち上がる。
「それなら、ウィズが戻ってくる前に行ってくる。
一人で大丈夫だな?」
ルークは思わずふきだした。
「そんなに心配しなくても、今はまだ夕方だし襲撃もないよ。
結構心配してくれてるんだね」
「まあな。
それじゃ、気を付けろよ」
未だ笑っているルークを残し、バルドは執務室を出た。
「…この時間だと、サージェントは鍛練所か」
恐らく、剣の訓練をしているはず。
そう思い、バルドは足を進めた。
「サージェントはいるか?」
鍛練所の隅で素振りをしていた若い兵に尋ねる。
彼は突然のバルドの訪問に驚き慌てた。
「サージェント様ですか?
確か先程陛下に呼ばれたとかで、陛下の執務室へと向かわれましたが」
「…当てが外れたか。
すまんな、それじゃあ執務室に向かってみよう」
(まずい、思ったより時間がかかりそうだ)
このままではルークの執務が終わってしまう。
バルドが急いで身を翻そうとした、その時。
「うわあぁぁぁ!」
叫び声が、鍛練所に響いた。
「なんだ!?」
バルドと若い兵も、驚いて声のした方向を見た。
そこには、やはり若い一人の兵。
彼は地に倒れ、大量の血を流していた。
「どういうことだ!?
ここには訓練用の刃を潰した剣しかないはずだ!!」
「わ、わかりません!!
とにかく、アイツを…」
急いで彼に駆け寄る。
しかし、誰よりも早く。
――リンッ
鈴の音が響き、ウィズが兵士のそばに降り立った。
驚いて立ち止まるバルドに気づいているのかいないのか。
ウィズが何事かを小さく呟くと、兵士の周囲にいくつもの魔方陣が出現した。
それが強く輝き、ぐるりと回る。
パンッと何かを弾いたような音と共に、魔方陣は粉々に砕け散り、兵士の傷は地面に染み込んだ血液が嘘のように完璧に塞がっていた。
近くにいた他の兵達が歓声を上げる。
けれどウィズはそれに構わずフラフラとどこかへと立ち去った。
バルドは暫く呆けたようにそれを眺め――次いで、急いでウィズを追った。
鍛練所を抜け、城の本宮へ続く道。
その脇の植え込みから、白いローブがはみ出ている。
バルドは迷わずそれに近づいた。
ウィズはぐったりと壁にもたれ、息を荒げている。
バルドはその目の前に片膝をつくと、ウィズのフードを取り去る。
隠す気がないのか、それともそんなことも出来ないほど弱っているのか。
ハラリと前髪がかかる。
しかし、そこには肌ではなく、硬質に輝く銀の仮面があった。
意を決して、バルドはその仮面をとった。
目を見開く。
「お前は―――」
その瞬間、バルドの意識は闇に閉ざされた。
バルドがやられてしまいました。
ルーク君が一人に。
あぶなーい




