襲撃者
そんなことを何度か続ければ、ルークも良心が痛み、四日目にはウィズを執務室に入れるようになっていた。
その日もウィズは執務室のルークの背後に立っていた。
それしかすることがないのだ。
その合間にもルークは政務をこなし、バルドはその手伝いに慌ただしく動き回っていた。
―コンコンコン
「失礼します。
ルーク様、バルド様、ウィズ様
飲み物をお持ち致しました」
一人のメイドが入ってきた。
ルークはその声に手を止め、彼女をみやる。
「ありがとう。
…あれ?いつもの人と違うね」
「はい、家庭の事情により里帰りしているようで、しばらくは私が代わりを務めさせて頂きます」
ルークの言葉に答えながらもメイドは手際よくテーブルにカップを置いていく。
カップからは紅茶のいい香りがわきたっている。
それにルークもバルドも顔をほころばせた。
パチン
「…?」
「ルーク、どうかしたか?」
「今、何か聞こえなかった?」
キョロキョロと辺りを窺う。
「そうか?
俺は何も聞こえなかったが」
「空耳かな。
さ、休もう」
「そうだな。
ウィズも休むといい」
「はい」
三人で休憩用のソファーに座る。
揃って紅茶を飲む姿を、メイドは微笑ましそうに見守った。
「うん、美味しいね」
「ああ、いい休憩になる」
「…それならば良かったです。
それでは私はこれで」
メイドはにっこり笑うと執務室を出ていった。
「さて、また始めるか」
「そうだね。
……どうかしたのかい?」
何時までも立とうとしないウィズを、ルークは訝しげに見つめた。
「…いえ、何でもありません」
「疲れたなら、暫く座っていてもいいよ」
「問題ありません。
お気遣いありがとうございます」
「別に、気遣った訳じゃ…
何見てるんだい、バルド?」
ニヤニヤ笑っているバルドを、ルークが睨み付ける。
「いいや?
何でもないさ。
始めるんだろう、さっさとやるぞルーク
ウィズも、疲れたら言えよ」
その日の、夜。
「ルーク様、起きてください!!
賊です!!」
「……っ!?」
大声に驚き、ルークは勢いよくベッドから起き上がった。
途端に、誰かが抱きついてくる。
そして、その人物の肩越しに見えたのは。
「……ウィズ!?」
小ぶりの刃を振り上げ、今にもこちらに降り下ろして来そうなウィズの姿。
ウィズはルークの声にピタリと動きを止め、大きく跳躍して後ろへ下がった。
ルークは即座に枕元の剣をとり、自らに抱きつく――恐らく、ルークを庇うためだろうと判断した――人物を背後にまわす。
「バルド!
来てくれ!!」
大声でバルドを呼ぶと、彼は直ぐ様駆けつけてきた。
廊下の明かりが部屋に入り、辺りが明るくなる。
先程までは気がつかなかったが、部屋には幾人かの倒れている人影があった。
「ルーク、どうした!?……ウィズ!?」
「――チッ」
バルドの登場に、前後を挟まれたウィズは舌打ちすると、またも鈴の音と共に魔方陣を展開し、姿を消した。
おそらく転移の術だろう。
もうこの場に危険はないと判断し、ルークとバルドは剣を納めた。
「…大丈夫かい?」
ルークの背後で震える人物に声をかける。
その時初めて、それが昼に紅茶を運んできてくれたメイドだということに気がついた。
「君は、あの時の…」
「ルーク様…
ご無事でよかった、私達、廊下で怪しい人影をみて、それで……」
「ありがとう、君のお陰で助かったよ
バルド、倒れている人達は?」
震える彼女を落ち着かせつつ、倒れている人々の生死を確認するバルドに鋭く尋ねた。
「…大丈夫、皆息はあるようだ」
「そうか、よかった…
父上達にこの事を報告しないと。
――君も、来てくれるかい?」
「は、はい…」
なんだかルークがツンデレに(笑)
このままでは仲良くなってしまうので、襲撃してもらいました




