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緑の柱  作者: 美羽
再会
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ウィズ



一週間、という猶予を取りつけたルークはもう話すこともないと謁見の間を出ていった。

その後にはバルドと、白の術師がついていく。

ルークもバルドもその事に気がついてはいたが、なにも言わずに歩みを進めた。


しかしルークのための執務室の前にたどり着くと、さすがに我慢ができなくなってルークは振り返った。



「どこまでついてくるつもりなんだい?」


「貴方様の行く場所へならどこへでも」



初めて聞いた声は、男とも女ともつかない澄んだ中性的なものだった。

しかしそれにすら気分を逆撫でするように感じられ、ルークは眉をしかめた。



「いらないと言っただろう。

さっさと立ち去ってくれ」


「そう言うなルーク。

すまんな、白の術師殿」


「――ウィズ、と」


「む?」


「ウィズとお呼びください、バルド様。

敬称も必要ございません」



白の術師――ウィズは感情を見せない声でそう言った。



「……名前なんてどうだっていいよ。

この部屋には入らないでくれ」



ルークはにべもなく告げると、バルドを伴って執務室へと入っていった。






「おいルーク。

いくらなんでもあの対応は無いだろう」



さすがにバルドも顔をしかめた。

ウィズはなにも知らずここへやって来たのだ。

それをあそこまで邪険にすることは良心が痛む。



「……わかっているよ」



ルークにも自覚はあるのか、目をそらす。



「でも、あれだけ辛く当たれば諦めてくれるかもしれないだろう?

変に希望を持たせるよりずっといいと思うんだ」


「それはそうかもしれんが…」


「さ、そんなことはいいから、さっさと仕事を片付けよう。

このままじゃいつまで経っても寝られないからね」


「……そうだな」



渋々バルドもウィズのことは一端忘れ、仕事にとりかかった。










「…やっと終わったね」



政務が無事に終わり、ルークは凝った肩を解すように伸びをした。

時計を見ると、もう既にあれから数刻経っており、日付が変わろうとしていた。



「それじゃあ俺はこれを王に渡してくるから、お前は先に戻ってろ。

今日は色々あったしな」


「いいの?」



頷くバルドに礼を言い、書類の束を渡す。

取り残しがないことを確認すると、部屋を出た。



「……!?」



廊下に出たとたん、ルークは驚きのあまり立ち止まった。



「どうしたルーク?

…ウィズ!?」



扉の脇、邪魔にならない位置にウィズは立っていた。



「まさか、あれからずっと立っていたのか!?」



王都は年中温暖な気候を保っているが、夜はさすがに冷える。

そんな中で長時間廊下に立っているなど、かなりの寒さだったはずだ。



「部屋には入るなとのお言葉でしたので」


「だからといって…」


「そちらの書類は、国王陛下に?」


「あ、ああそうだが…」



突然の質問にバルドはついつい素直に答えてしまった。

ふむ、とウィズは頷くと、片腕を差し出す。


――リンッ


鈴を鳴らしたような澄んだ音が響くと、書類の上に白く輝く魔方陣が出現し、一瞬でそれを消した。



「なっ…」


「陛下の元へ転移して置きました。

バルド様もお疲れでしょう。

お休みください」


「す、すまんな……」



驚きつつも礼をいうバルドに、礼には及びませんとだけ返し、ウィズは後ろへ下がった。



「…俺はもう休むから、君も休んだらどうだい」


「ありがとうございます」



ルークの平坦な声にも動じない。

しかも、歩き出すとついてきた。



「……どこまでついてくる気だ」


「私はバルド様と同じくルーク様の宮に部屋を頂いております。

従って宮までご一緒することとなります」


「なんだって!?」


「国王陛下と王妃殿下のご命令ですので」



それ以上話す気は無いようだ。

さすがに二人の命令と言われればルークにも拒否できない。

仕方なくルークは三人で王太子の宮へと向かった。



(――一週間の、我慢だ)



そう心で何度も繰り返して。







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