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緑の柱  作者: 美羽
Castle
74/182

Opening



晩餐会当日、その日は城の使用人達が朝から慌ただしく動き回っていた。



「…皆、大変そうね」


「何しろ晩餐会は今夜だからね。

今から準備を始めないと間に合わないんだ」


「全く、そこまで大がかりにすることもなかろうに」



今日の主役であるフィリア、ルーク、バルドは朝から一つの部屋に拘束されていた。

なんでも、逃走防止らしい。



「にしても、この扱いはひどいな。

別に今晩は逃げるつもりはないのに」


「お前の日頃の行いが悪いせいだろう。

お陰で俺たちまでとばっちりだ」


「……そんなに抜け出していたの?」


「パーティーはあんまり好きじゃないんだ」



ルークは苦笑した。



「どうして?」


「格式ばったことが面倒、と言うのもあるけど、一番は貴族の令嬢がね…」



ルークの言葉にバルドも覚えがあるのか確かにな、と同意する。



「令嬢?」


「今までルークはパーティーにパートナー同伴で参加したことが無いからな。

次期王妃の座を狙って、彼女達はまるで獲物を狙うような目でルークを見ていたものだ」


「あれは最早トラウマだよ…」



思い出すだけで嫌なのか、ルークの顔は心なしかげっそりしている。

フィリアは面白そうに笑った。



「ルーク、もてるのね」


「冗談じゃないよ。

僕は彼女達のことなんかどうでもいいし、だから今回フィリアがパートナーになってくれてとても助かっているんだ」


「あら、お役に立てたのなら光栄だわ」



おどけるフィリアに、しかしバルドは厳しい顔をしていた。



「だが、その分お前は令嬢達に恨まれるぞ」



ルークもその言葉にハッとする。

確かに、ルークの妃の座を狙っている彼女達はフィリアを目の敵にするだろう。

彼女が危険にさらされるかもしれない。



「そんな顔しなくても、大丈夫よ二人とも。

そのことならもうルーシア様から聞いているわ。

対策もばっちり」



フィリアはそう言って片目を瞑って見せた。

でも、と反論しようとしたルークの言葉を、ノックの音が遮る。



「失礼します。

フィリア様、お支度がありますので、そろそろ…」


「今行きます」



フィリアが立ち上がる。



「フィリア…」


「ルークもバルドも、後で会いましょ」



にっこり笑うと、彼女は迎えのメイドと共に部屋を立ち去った。



「…大丈夫なのかな」


「まあ、ルーシア様のことだ。

心配はいらんだろう。

だが、もしものことがあればお前がちゃんと助けてやれよ。

俺もなるべく気を付けるが、ずっと一緒にいるのは無理だろうしな。

お前はパートナーなんだ。

フィリアから離れるな」


「勿論」



残された男達はフィリアを守るためその後も色々と話し合った。

まあ、それは全くの無駄になるのだが、今の彼等はそれを知らない。











「さあ、完成です」



マーサの言葉と共に、フィリアは閉じていた瞳を開く。

鏡には何時もと違う自分が驚いた顔をして写りこんでいた。



「ふふっ、素晴らしい出来だわ。

ルーク達の驚く顔が楽しみね」



背後で待ち構えていたルーシアが満足げに笑った。



「…本当に凄いです」



フィリアは半ば呆然として鏡の中の自分を見つめた。

そんな彼女を手をとって立たせると、ルーシアは時計を見た。

既に夕刻、晩餐会の開始までもうすぐだ。

招待した貴族達も、殆どが会場である本宮の大広間に集まっていることだろう。

ルークとバルドも、先に入れるように手配させたため、もう会場入りしているはずだ。




「さ、行きましょうフィリアさん。

準備はいいかしら?

これから気を抜いては駄目よ?」



こくりと頷いたフィリアを勇気づけるように、ルーシアは手をギュッと握った。



「私も陛下も、バルドも――何よりルークが、貴女の味方だわ。

だから自信をもって、いつでも顔をあげていてね」


「はい、必ず」



二人は笑いあって、会場へと向かった。





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