Rest
その後、フィリアとバルドは必死に固辞したのだがルークと王、王妃の勢いに負け、共に夕食を摂った。
そして疲れているだろうから、と休むことを勧められた時、問題が発生した。
「フィリアを王妃の宮で休ませる!?」
「ええ、そうしようと思うの」
フィリアを客室へと案内しようとしたルークは、母である王妃ルーシアにそれを止められ、彼女の考えを聞かされたとたん渋面を示した。
「なんでまたそんなことを…」
「ルーク、王妃の宮って?」
頭を抱えるルークにフィリアが尋ねると、彼は困ったような顔をした。
「王妃の宮っていうのはその名の通り王妃が住む建物だよ。
この城は今朝結界を張った中庭を四角の形で囲っているけど、それは来客への対応や城での仕事をする場所で、本宮と呼ばれているんだ。
城に住み込みで働いている者が寝起きする場所はその左右に用意されてる。
その中でも王族は城の後部にそれぞれ自分の建物を持っていてね。
それを王の宮、王妃の宮、王太子の宮と呼んでいるんだ」
「それでね、フィリアさん。
貴女には私のところで生活してもらおうかと思っているの」
「ルーシア様の宮で、ですか…?」
戸惑うフィリアに代わって、ルークはルーシアを軽く睨んだ。
「だから、別に王妃の宮じゃなくても」
「あら、けれど客室はこちらの建物にあるから、私達が休む場所から離れていて心配じゃない」
「それは、そうだけど…」
確かに、来客用の部屋は本宮にありこの中の全員の生活の場とは距離がある。
何かあってもすぐに駆けつけることは出来ないだろう。
「ルークだってフィリアさんが目の届くところにいてくれた方が安心でしょう?」
「だったら別に王妃の宮じゃなくても」
「あら、王の宮は論外だし、使用人達と一緒にすることはできないわ。
けれど王太子の宮になんて連れて行ったら王都中に噂が出回ってしまうわよ?
王太子が遂に婚約者を見つけたのか、ってね」
ルーシアに論破され、ルークが言葉に詰まる。
続いてルーシアはフィリアに向き直る。
「ね、フィリアさん、いいでしょう?
私の宮には使用人も少なくて、今ここにいるマーサと、残りは三人程なの。
人が少ない方が貴女も気兼ねなく休めると思うわ」
「でも……」
意志が揺らいでいるフィリアに、もう一息、とルーシアは言葉に力を込めた。
「それにね、私女の子が欲しかったのよ。
でも産まれたのは可愛くない男の子だし…
私に少しの間だけ娘をもつ母親の気分を味あわせてくれないかしら?」
うるうると潤んだ目で見つめられ、フィリアはなんだか自分が悪いことをしているような罪悪感にみまわれた。
「……それじゃあ、お世話になります」
「嬉しい!ありがとうフィリアさん!!
一緒にレッスン頑張りましょうね」
「「レッスン…?」」
フィリアとルークの声が重なる。
バルドは謁見の間での王と王妃の会話で予想がついていたのか、同情したような目でフィリアを見ていた。
「あら、フィリアさんは晩餐会初めてでしょう?
礼儀作法やダンスのレッスンをしなくちゃ」
なにがおかしいの?とでも言うように小首を傾げたルーシアに、二人は絶句した。
「それに、マナーが出来ていないことで誹謗中傷を受けるのはフィリアさんだもの。
そんな悲しい思いはしたくないでしょう?
大丈夫、フィリアさんにもルークにも恥をかかせることがないように、三日で私が完璧に叩き込んで見せるわ」
フィリアはその言葉にハッとした。
そうだ、フィリアの失敗はパートナーであるルークをも巻き込んでしまう。
王太子である彼をそのような目にあわせる訳にはいかないだろう。
「…お願いします、ルーシア様」
「フィリア!?」
驚いたように声を上げたルークに、フィリアは決意に満ちた目で宣言した。
「ルーク、私頑張るわ!」
「それでこそ私が見込んだ方ね。
私もますます頑張らなくちゃ」
闘志を燃やす女性陣に、男たちは生ぬるい目を向けたのだった。
最近バルドが空気(笑)
どうにかして彼を活躍させてあげたいものです




