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緑の柱  作者: 美羽
Castle
69/182

Audience



無事に中庭に転移が成功し、二人は安堵の息を漏らした。

それにお互いが気付き、苦笑し合う



「戻ってきたはいいけど、これからどうしようか…」


「でもルークは王子様だし、王様達と会わないといけないんじゃない?」


「うーん、そうなんだけどね…」


「フィリア様の言う通りですよ、ルーク様」



突然背後から声が聞こえ、ルークとフィリアは勢いよく振り返った。



「マーサ!」



ルークが驚く。

女性――マーサは頷いて頭を下げた。



「お久しぶりでございます、ルーク様。

フィリア様は初めましてになりますね」


「あの、何で私の名前を…?」



フィリアの疑問には、ルークが答えた。



「マーサはバルドの母親なんだ」


「バルドの!?」



まじまじと彼女を見る。

確かに、バルドと同じ黒髪黒目なのだが。



「似てないわ…」


「よく言われますわ。

さて、お二人とも。

謁見の間まで来ていただきますよ」



マーサはそう言うと、二人が反論する間もなく連行していく。

謁見の間ということは、王に会うということだろうか。



「大丈夫、とって食われたりはしないよ」



余程フィリアが不安そうな顔をしていたのか、ルークが声をかける。

それにマーサも同意した。



「ええ。

国王陛下も妃殿下も、お優しい方ですから」



フィリアは曖昧に頷いた。






謁見の間の扉はその名に相応しく、国の力を見せつけるかのように品よく装飾がなされていた。

床に敷かれた赤い絨毯は転んでしまいそうなほどに毛足が長い。

恐らく部屋のなかにまでこれは続いているのだろう。



(――転ばないといいのだけど)



フィリアの心配をよそに、ルークとマーサの合図で扉が開かれる。

ともかく礼儀正しくしなければ、と思うと、体がいつかのように勝手に動き始めた。


王と目線を合わせず、けれど下を向くことなく進む。

ある程度まで進んだところで止まり、最高礼で膝を落とした状態のまま王の言葉を待つ。


それら全ての動作を、違和感を覚えることなくフィリアはやり遂げた。

何故、と疑問は尽きることがないが、今は考えている場合ではないと思考を頭の隅におく。



「許す」



渋味のある声――おそらく王のものだろう――が響く。

フィリアは姿勢をただし、くっと顔を上げた。



(―ルークと似てる)



それが、まずはじめに思ったことだった。

王族の血統なのか、彼と同じ青い瞳。

髪は黒だ。

隣にいる王妃は、瞳は茶だが髪が金なので、ルークの髪はそちらを継いだのだろう。

ぼんやりと見つめていると、王妃がフィリアを見て目元を弛めた。



「そんなに堅くならなくていいのよ?

貴女はこの国を救ってくれた存在の一人なのだから」



声をかけられ返答に戸惑うフィリアに変わって、ルークは呆れた声を出した。



「二人が謁見の間で会おうと言うからこうなるんだよ。

一国の王と王妃に会うとなったら誰だって緊張するじゃないか」



もっともである。

王の後ろで護衛として控えるバルドも苦笑していた。



「いや、お前が気に入ったという娘を見てみたくてな。

しかし森育ちとは思えんな」


「陛下、伝えましたようにフィリアには記憶が無いので…」


「わかっておるよ」



バルドの進言に手をあげて答えると、王は立ち上がってフィリアに近づいた。


予想外の事態にフィリアは慌てるが、ここで下がるのも無礼だろう。

対応に困っているうちに、王はすぐそばまで来てしまっていた。

取り敢えず、見つめておく。



「……」


「……ふむ、ルーク、お前中々の面食いだな」



しげしげとフィリアを間近で見つめてから王がいい放った言葉に、皆が呆気にとられた。



「…?」


「べ、別にそういう訳じゃ…!!」


「我が息子ながら、血は争えんな」



自らの妃を愛おしそうに見つめる。

ルークは諦めたように肩を落とした。



「ふふっ、でも本当に可愛らしい方ね?

フィリアさん、と呼んでもいいかしら?」


「あっ、はい。

ご自由にお呼びください、妃殿下」


「あらやだ、そんな堅苦しい呼び方をしないで?

ルーシア、と名前で呼んで欲しいわ」


「いえ、そういう訳には…」



慌ててフィリアは断ろうとするが。

にこにこ、にこにこ



「……それでは、ルーシア様、と呼ばせて頂きます」



笑顔のルーシアに強くは出られなかった。


取り敢えずは顔合わせをすませ、ホッとする。

そこで、玉座へと戻った王は再び口を開いた。



「さて、お前たち三人に伝えたいことがある」



ハッとルーク、フィリア、バルドが顔を上げる。



「これから三日後、無事結界を張り直したことを祝う晩餐会を行う。

王都の貴族連中が集まる会だ。

三人とも、参加するように」


「晩餐会、ですか」


「そんな必要ないんじゃ…」



それぞれ反応を返すルークとバルドだが、フィリアは晩餐会がどう言ったものか分からず沈黙を保ったままだ。

それを見て、ルーシアが補足する。



「晩餐会というのは、皆で集まって夕食を食べる場よ。

今回は参加者も多いし、立食形式になると思うけれど。

でもそれだけではなくて、ダンスを踊ったり、他の参加者と会話したりと、色々な楽しみがあるわ」



なるほど、とフィリアが頷く。

何故そんなことをしなければならないのかと思うが、貴族社会とはそんなものなのだろう。



「立食形式、ね。

よけい悪いよ」



ルークがうんざりしたように呟く。

それにルーシアは悪戯っぽく笑った。



「あら、それは貴方がいつもパートナーを連れていかないからでしょう?

でも今回はフィリアさんがいるじゃない」


「…フィリアと?

いいの?」


「フィリアさんが了承してくれるなら、私達としては反対しないわ。

ね、陛下?」


「そうだな。

その代わり、晩餐会までお前には色々とやってもらうことがある」


「……わかったよ」



ルークがため息をついてフィリアに向き直る。



「フィリア、晩餐会では僕のパートナーになってくれないかな?」


「パートナー?」


「一緒に会にでる相手だよ」


「それなら、私も知っている人の方がいいし、こちらからもお願いするわ」


「ありがとう」



そんな二人の様子を眺めて、ルーシアは嬉しそうに笑った。



「初々しいわぁー。

あ、そうだ。

良いことを思い付いたわ。

陛下、ルークがやることがあるということは、フィリアさんは暇になってしまうということよね?」


「む?…ああ、そうだな」



王の返事に彼女はますます楽しそうな様子を見せる。



「それじゃあ陛下、三日後まで、フィリアさんを私に貸してくださらない?」


「お前にか…?

まあ、構わんのではないか?

彼女も馴れない城では息もつまるだろうしな」


「ありがとうございます、陛下。

うふふっ、腕がなるわぁー」



そんな会話を繰り広げる二人に、バルドはまた王妃の悪い癖が…と頭を悩ませるのだった。





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