その身は唯、刃と化し
『フィリア、無事か!?』
「私を誰だと思ってるの?
心配する暇があったら、目の前の敵に集中しなさい!」
目の前の敵を、自らの刀で、魔力で、力で蹂躙する。
しかし斬っても斬っても、敵が減らない。
『――こちらとは逆の方向からも、敵が向かってきているみたいだ。
俺はそっちに向かう。
ここは、任せる』
「ちょ、何言ってるの!?
危険よ、私も行くわ!!」
目の前の敵を切り捨て、彼に近づく。
だが、それは他ならぬ彼によって制された。
『だめだ、それだとここが耐えられない。
……そんな顔するな。
俺は大丈夫だ。
せっかく産まれた可愛い子供と愛する奥さんを、置いていく訳には行かないからな』
「当然でしょ、そんなことしたら他ならぬ私が貴方を許さないわよ」
『おーこわ。
……だから頼む。
お前はここで、あいつらを守ってくれ』
こちらを見つめる真剣な目に、何より彼の願いに、私が逆らえる訳がなかった。
「…こいつらを皆殺しにして、すぐに私も行くわ。
それまで、死んだら許さないわよ」
『もちろん。
待ってるぜ、俺の戦女神サマ』
「ふざけてないで、行くならさっさと行きなさいよ」
『はいはい、じゃ、また後でな』
彼が身を翻す。
その背を、敵が襲うが―――
「行かせないわよ」
素早く切り捨て、彼の退路を確保する。
――いくら彼にあの剣があると言っても、この敵の数に耐えられるはずなどない。
彼は脆い、人間なのだ。
脳裏をよぎった最悪の結末を、勢いよく頭をふって追い出す。
大丈夫だ、彼に危険が迫ったとして、私が護ればいい。
あの日、誓ったではないか。
彼に襲い掛かる敵も、不幸も、私が払うと。
その為には、こいつらは邪魔だ。
―――ザワリ
空気が変わる。
今までは、彼を巻き込まないために力を抑えていた。
けれど今は、その必要はない。
敵が、怯えたように下がる。
「どけ」
その言葉と共に、魔力が弾ける。
右手の刃を振るい、敵を殲滅せんと突き進む。
返り血をどれだけ浴びようが、腕がもげようが、体を斬られようが、なにも気にならないし、気にする必要もなかった。
数十分後には、その場に立つ生き物は私しかいなかった。
服は赤を通り越して黒く染まり、異臭を放っている。
地面も同様だ。
私の体は左腕がおかしな方向に曲がり、右脇腹には腕ほどの太さの針が刺さり血が未だ止まっていないが、動けないほどではないだろう。
ひとまず、左腕を正しい位置へと戻し、腹の針を抜く。
地面に転がる生き物だった残骸を冷たく見下ろして、体から流れる血もそのままに私は彼のもとに急いだ。




