表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
緑の柱  作者: 美羽
Sapphire
62/182

Choice



少し休み、息も整ったルークは先へ進んだ。

今度の通路は特にそれといった罠もなく静かなものだったが、逆にそれが不気味に思える。



「この先はどうなっているんだか…」



また先程のように敵がいるのか、それともまた違った罠があるのか。


通路の終わりが見えてきた。

ルークは意を決して次の部屋へと踏みいった。




「……え?」



部屋に入った瞬間、ルークは拍子抜けした。

目の前には青く輝く湖が広がっている。

間違いなくオパールの夢見でみた景色だ。



「……こんなに簡単なものなのか?」



疑問を口にしながらも、ルークは湖へ近づいた。



(―確か、夢だとこの湖の中央に)



「…あった」



間違いなくサファイアが沈んでいる。

あれを取って帰ればすべてが終わる。

喜び勇んでルークは湖に入ろうと足を浸けた。

湖は浅いため、ルークの脹ら脛の真ん中程までしか濡れることはない。

水の冷たさに少し眉をしかめ、けれど更に進もうとしたとき。



「…足が」



ルークの足はその意に反して、全く動く様子を見せなかった。

それと同時に湖の水が不自然に盛り上がり、水柱が立った。

それが段々と集まり、人の姿を形作る。



「罠か…!!」



足が動かないとなると、どうにもできない。

焦るルークに、人型のなにか――恐らくこれも魔術の産物だ――が声を発した。



――汝、青の秘宝を求めるか?



頭に直接響くような声。

青の秘宝とはサファイアのことだろう。



「あぁ。僕にはサファイアが必要なんだ」



――何のために



「闇の者に襲われる人々を守るために」



人型は黙りこんだ。

もしや、このまま渡してくれるのだろうか。

ルークの心に希望が灯る。



――ならば



けれどそれは、最悪の形で砕かれた。



――選択せよ、王の末裔



人形の左右に、またも水の柱が立った。

水が全て元の通りに湖へと戻った後、そこには。



「フィリアに、バルド…!?」



なぜ、二人が。

確かに二人ともにルークを笑顔で送り出したというのに。

けれどそれを裏切るかのように、二人はルークの目の前にいた。

硝子のような、透明な四角い箱に一人ずつ詰められて。


さらに、二人は意識が無いようだった。

ぐったりと内部に寄りかかったまま、その体はピクリとも動かない。



――汝が真に青の秘宝を求めるならば、二人のうちどちらかをこの湖に捧げねばならぬ


「…どういうことだ」


――一方を、生け贄としてよこせ

さすればもう一方と青の秘宝は汝のものとなろう


「僕に、どちらかを犠牲にしろって言うのか」


――左様


「……そんなこと」


――できぬと申すか

ならば、無理矢理にでも選ばせるまで



その言葉と共に、二人の入っている箱にどこからか水が流れ込む。



「なにを…!?」


――汝が選ばぬと言うでな

さあ、早くしなければ二人とも犠牲にすることになるぞ



水は恐ろしい速さで溜まっていった。

先程まで空だったと言うのに、今ではもう座り込むフィリアの膝をおおっている。

このままでは二人が溺れるのも時間の問題だ。

特に、フィリアはバルドよりも身長が低いためそれが早そうだ。



(そんな、どちらかを選ぶなんてできるはずがない)


二人とも、一緒に旅をしてきた大切な仲間だ。


(どちらかが目を覚ましてくれれば)



――仲間が目をさますことを期待しているのか?

だが、こやつらは魔術で眠らせている

魔術を解かぬ限り、こやつらが目覚めることはない



ルークは唇をかんだ。


自分を支え、もはや第二の父と言っても過言ではないバルド。


旅の途中で出逢い、今では頭から離れない大切な少女であるフィリア。


二人の顔をじっと見つめ、ルークはひとつの決心をした。



――決まったようだな



声と共に、流れる水が止まった。

水は今ではバルドの胸、フィリアの首にそれぞれ到達しようとしていた。



――汝はどちらを選ぶ?


「…僕は」



人型を睨み付ける。



「僕はどちらも選ばない」


――ほう、二人とも見捨てるか



くつくつと笑い出す。



「違う」



人型はピタリと笑いを止めた。



――ならばどうすると


「僕はどちらも犠牲になんてしない。

二人とも、助けてみせる!!」


――汝の足は動かぬ

それでどうやって救うと?



ルークは腰の剣を抜いた。



「動かないのは今水に浸かっている部分だけだろう。

…いざとなったらこの足首を切り落としてでもお前を倒す」


――王というのは多くを救うために小さな犠牲なら払わなければならぬ。

それを知らぬか?



人型の問いにもルークは揺らがなかった。



「残念だけど、僕は欲深いからね。

なにかを捨てるなんてことはしない。

全て手にいれてみせる」


――ふむ、何も捨てぬ王になるというか

よかろう

汝を認めよう


「………え?」



人型の言葉に、ルークは呆気にとられた。

人型は自らの言葉の通りルークを解放する。


再び自由を取り戻した足を確認して、ルークは彼――声が男のようなので彼でいいだろう――を見る。

本当にもう危害を加える気は無いようだ。



「早く二人を解放してくれ」


――これは幻

実体ではない



硝子が砕ける。

しかしその途端に二人はただの水へと姿を変えた。



安心して、思わず座り込む。

その姿勢のまま、ルークは人型を睨み付けた。



「何でこんな真似をしたんだ」


――愚王となるものに、秘宝はやれぬ

汝がどちらかを選んだ、又はどちらも見捨てた瞬間に、汝を殺すつもりであった



ルークは絶句した。

なんと乱暴な。

その気配を感じたのか、人型は少し小さくなる。

これは、反省しているのだろうか。



――しかし、見事に汝は試練に打ち勝った

以前ここに来た男、アルザスと言ったか

あやつも汝と同じ答えを出したものだ



人型が懐かしそうに語る。



「アルザス王と…」


――さあ、青の秘宝を受けとるとよい



湖の水が盛り上がり、ルークの目前まで運んでくる。

それを受け取り、剣に嵌め込んだ。



「…やっと、全て集まった」


――外まで運ぼう

転移するぞ



言葉と共にルークの足元に転移の陣が光る。

至れり尽くせりだ。

彼なりに、悪いと思っているのかもしれない。



「…ありがとう」



ふっと、笑う気配がした。



――我も久々のヒトとの会話、愉快であった

機会があればまた会おう、王の末裔よ



陣が輝く。

眩しさに思わずルークは目をつぶり、次にそれを開いたときには試しの洞窟の入り口に立っていた。

時間がかなり経っているようで、来たときには朝だったというのに今は黄昏時だ。



「あっ、ルーク様が帰ってきた!」


「ほんとだ!

みんなー、帰ってきたよー!!」



双子の声が聞こえ、ルークはそちらに向かった。



「ルーク、大丈夫?

怪我はないの?」


「無事か!?」



フィリアとバルド、二人が真っ先に駆け寄ってくる。

ルークはたまらなくなり、二人に抱きついた。



「え?

ルーク、どうしたの?」


「な、なんだ?」



二人は戸惑っていたようだが、ルークは離れようとしない。

フィリアとバルドはお互いに顔を見合わせて、彼をギュッと抱き締め返すとその耳元でおかえり、と呟いた。





ルーク君、初めての一人でダンジョン攻略(笑)

彼は今回のことで改めてフィリアちゃんとバルドさんの存在の重みを再確認しました。

最後抱きついたのは、幻だって分かったけどやっぱり本物見たら安心しちゃってつい、です。

大口叩きつつ不安だったんですよ、彼も。

抱きつかれた二人はよくわかんないけどなんかあったんだろうな、と察しました。

できた仲間たちです(笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ