Training
一方その頃、アル、エルと共にフィリアは家の地下室に足を運んでいた。
「ここが…?」
「そう、僕達がいつも修行をしている場所だよ」
「なんというか、色々なものがあるのね……」
「これはみんな師匠のなんだ」
へえ、とフィリアは部屋を見回す。
恐らく魔術について書かれているだろう本や、怪しげな品々が所狭しと並んでいる様子は、なかなか壮観だった。
「こっちだよフィリア」
エルの声に慌てて二人の後を追う。
彼らは一冊の本をフィリアに差し出した。
「これは?」
「誰でもできる初級魔術~これであなたも魔術師デビュー編~だよ!」
「……そう」
そのネーミングセンスはいかがなものか。
喉まで出かかった言葉を、必死でフィリアは抑え込んだ。
「バカっぽいタイトルだよねー」
「全くだよ。
これで中身がよくなきゃ絶対売れてないよ」
(――あ、やっぱり変なのね)
双子達の言葉にそっとフィリアは胸をなでおろしたのだった。
「さ、それじゃあまずはこのページ」
「光の玉をだす、からやってみよー」
「光の玉?」
本を覗き込む。
なるほど、確かにページにはそのような絵が描かれていた。
「これは暗闇でも視界が明るくなるから便利なんだよー」
「僕らもよくイタズラに使ってるんだ」
「この光が明かりの代わりにになるのね?
でも、魔術ってどう使えばいいの?」
フィリアは魔術を使った経験がないため、全く想像がつかない。
それにこの本自体、絵とこの魔法でこんなことが出来るかということしか記されていないのだ。
「簡単だよ、想像すればいいんだ」
「想像?」
「そう。
魔術はただ魔力があれば誰だってできるんだよ?」
「呪文とかはいらないの?
それに、魔術を使っているときには魔方陣が現れたりしているけど」
「呪文はいらないよ。
まあでも、僕達も頭の中のイメージをもっと確かなものにするために大掛かりな魔術を使うときには、言葉で発動させることもあるけどね」
「この場合だとこんな感じかな。
―――光よ」
アルの言葉と共に、彼の掌に陣が展開され、そこから球体の光が浮かび上がる。
それを即座に消すと、彼は続けて他の言葉でそれを繰り返した。
「ね?特別な言葉は必要ないんだ」
「あと、魔方陣は魔術を使うと勝手に現れるものだから、そっちも問題ないよ」
なるほど、と頷いだフィリアを確認して、それじゃあと双子達は彼女に迫った。
「はい、やってみて」
「え、えぇ……」
「光を出すときには、掌に意識を集中させるといいよ。
前に魔力を測った時みたいに。
そうすれば掌から光が生まれるから」
「他の場所から出したいときには同じようにそこに意識を傾けてね。
それは自分の体以外でもできるから」
エルが見本のように、フィリアの足元から光を出して見せる。
「やってみるわ」
フィリアは頭の中に丸い光の玉を思い浮かべた。
自分の掌にちょうど乗るようなサイズの光。
それが掌からふわりと生まれる様を想像する。
「うわあ、やったねフィリア!」
「一発でできるなんてすごいよ!」
その声にフィリアが目を開くと、その掌には彼女が想像した通りの光の玉がふよふよと浮かんでいた。
「……できた、のね」
「うん、無事成功だよ。
ちなみに光を消すときは頭の中で消えろ、って考えればその通りになるよ」
言われたとおりにすると、光が霧散した。
「あと、自分が作ったものは思いのままに操れるんだ」
アルが再び光を作り出すと、宙に浮かべる。
しばらくは大人しくその場で静止していたが、彼がエルの方向を指さすとそちらに向かって飛んで行った。
そのままエルの周りをくるくると回る。
「これも想像するだけで大丈夫だよ」
「……すごい。
でも、思っていたよりも簡単なのね。
少し安心したわ」
「僕達もそうだったよ」
「しかも魔術は全部想像することでできるようになるから、一つできるようになれば後はよっぽど大掛かりなものじゃない限りなんでもできるよ」
「まあ、魔力が多くないと連続ではなかなか使えないけど、フィリアぐらいあれば全然大丈夫」
「それじゃあフィリア、また別の術を紹介するよ」
「えぇ、お手柔らかにお願いね……?」
「任せて!」
結局その日、フィリアは双子達が知る全ての魔術を覚えさせられたのだった。




