Folklore
前半がまさかの無意識イチャイチャタイムに(笑)
まだそんな関係じゃないのにね。
朝日が射し込み、ふっと意識が浮かび上がる。
目を開けて真っ先に視界に入ったのは、愛しい少女の眠たげな顔だった。
「……ルーク?
目が覚めたのね?」
「…おはよう、フィリア」
「……ルーク?
なんだか、悲しそうな顔をしてるわ。
サファイアが見つからなかった…?」
そっと頬に触れた手に手を重ねて、ルークは微笑む。
「いや、ちゃんと見つかったから、心配しないで。
フィリア、眠いんだろう?
僕はもう起きてみんなに報告をしてくるから、眠っていいよ」
「ううん、私も……」
「駄目だよ。
すごく眠そうな顔をしてる。
さ、どうぞ?」
ベッドから降り、フィリアを寝かせる。
瞼の上に手をおいて強制的に目を閉じさせると、よほど眠かったのかすぐに寝息が聞こえ始めた。
そっと手を外して、邪魔になるであろう前髪を撫で付ける。
「……ごめんね、フィリア。
君の大切な記憶を、覗き見たりして」
(君に想いを伝えて、君が記憶を取り戻した時―――)
彼女の心は、どこに向かうのだろうか。
ぎゅっと、彼女がずっと握っていてくれた手を握りしめて、ルークは皆のもとに向かった。
「ルーク! 目が覚めたのか」
一階へ降りると、すぐさまバルドが声をかけてくる。
テーブルにはバルドとヘルミナしかいない。
双子たちは寝ているようだ。
「うん、代わりにフィリアが今は眠ってるけどね」
「なにしろ一晩中だからな。
無理もない。
それで、サファイアの場所はわかったのか?」
「それなんだけど…」
言いながら、ルークは席につく。
じっと話を聞いていたヘルミナを見つめた。
「この辺りに、岩に囲まれている青く光る湖はないかな?」
「湖、ですか…」
顎に手をあて、考える。
「それは、試しの洞窟かもしれません」
「試しの洞窟…?」
見ると、バルドも知らないようで訝しげな顔を見せている。
「試しの洞窟とは、元々サファイアが置かれていた場所です」
「…どう言うことだ?」
「元々その剣に嵌められている宝石たちは、初代国王と女神がこの国の至るところから探しだした、女神の力を受けることができる特別なものです。
ただの宝石では、結界を張るために込める女神の力に耐えられず、砕け散ってしまいますから」
ヘルミナの説明に、ルークもバルドもなるほど、と頷いた。
それを確認して、彼女は続ける。
「…初代は、元々なんの力も持たない無色の民の子供として生まれました」
無色の民とは、赤や青、黄、白、緑などの五色族以外の人間の総称である。
彼等は五色族とは異なり、なんの能力も持たない。
そのため過去には五色族から下に見られることもあった。
「しかし彼は闇の者に襲われる人々の姿に心を痛め、女神が棲むと言う祈りの森を訪れた。
そこで出会った女神を説得し、力を貸すことを了承させたと言います」
「そんなことが…」
「その後お二方は各地を廻り、その当時の族長達に協力を願いました。
族長達はそれぞれの方法で彼の決意を試し、それに打ち勝った彼に全幅の信頼を寄せ、従ったそうです」
他には伝えられていない、真実。
「そして最後の族長が、この青の族長。
彼女は後の王妃となりますが、それは別の機会にでも。
…さて、青の族長は初代達をとある場所に案内しました。
そこには当時、青の民が代々奉る宝が置かれていました。
それを、取ってくることができれば認めると。
ただし、女神の助力は認めない。
真実、一人だけで取ってくること。
それが、条件でした」
「…初代は、それを取ってくることができたのかい?」
ルークが身を乗り出す。
「えぇ、もちろんです。
そうでなければこの国は今存在しませんから。
初代は無事に、宝を取ってくることに成功しました。
それを迎えた女神はその宝を見て、これを器にする、と言ったそうです」
「…器?」
バルドが繰り返す。
「結界のために力を込めるものを、そう呼んだそうです」
「と言うことは、その宝は…」
「はい。サファイアです。
それ以来、初代と女神は再び各地を廻り、各地からサファイアのように器となりうる宝石を集め、それを力の器とし、結界を張りました」
「…そんな歴史があったんだね」
ルークが息をつく。
しかし、とバルドは口を開いた。
「結局、今サファイアはどこにあるんだ?」
「あっ、」
「ふふっ、その初代を試した場所が、試しの洞窟と呼ばれるところなのです。
伝承にもルーク様が先程言ったように湖があったと書かれています」
「初代を試した場所か……
一体どんなところなんだ?」
ルークの問いに、ヘルミナは困ったように眉を寄せた。
「それが、分からないのです」
「わからない?」
「試しの洞窟はその初代が入った以来、青の民のなかでも入ることが禁じられていて…
それに、魔術で守られている神聖な場所ですから、水晶でも覗き見ることができないのです。
ですから、中がどうなっているかは…」
申し訳なさそうなヘルミナに、仕方ないよとルークは苦笑した。
「しかし、中が分からないとなると厳しいな…
準備ができん」
「…もうひとつ、大切なことが」
言いにくそうなヘルミナに、二人は首を傾げる。
「試しの洞窟には、ルーク様お一人で入っていただかなければなりません」
「どう言うことだ?」
「あの場所は神聖な場所です。
一人しか入れないよう、魔術がかけられているのです。
それを解除しようにも、古の術を使っているため私達では歯が立たず…」
「それなら仕方ないね。
試しの洞窟には僕一人でいくよ」
下を向いたヘルミナに、ルークはあっけらかんと返す。
その様子にバルドは目を剥いた。
「おい、ルーク!!」
「仕方ないだろ?
魔術でそうなってるんだし…
それに、僕も次期国王だよ。
女神の助力なしに初代に出来たのなら、僕に出来ないというわけにはいかないよ」
ルークの言葉に、バルドは納得出来ないとでも言うように唸る。
しかし、ルークの目に迷いがないと悟ったのか、仕方なさそうにため息をついた。
「反対してもやるんだろうな、お前は」
「さすがバルド。
わかってるね、僕のこと」
「ただし、フィリアにはお前から言えよ?
自分で説得しろ」
「……うん、わかってる」
おや?とバルドは眉を寄せた。
ルークの顔が目に見えて曇ったのだ。
いつもなら、フィリアの話でこのような顔はしない。
(――なにかあったな)
後で話を聞くか、と思いつつ、バルドは試しの洞窟に行くための手筈を整える話を進めていった。




