Night
「はい、ルーク。
横になって?」
ベッドを横目に、フィリアは無邪気な笑顔を浮かべた。
「あ、うん……」
しかし肝心のルークはまごついて、なかなかベッドに入ろうとしない。
次第にフィリアはしびれを切らし始めた。
「もう、早く!」
「わっ、ちょとフィリア…!!」
少々強引に、ルークを押し倒す。
仕方なしに布団にくるまったルークにフィリアはにっこり笑って、枕元に用意されていた椅子に腰かけた。
「ほらルーク、手を」
「えーっと、まだ眠く無いんだけど…」
「でもいつ眠くなるか分からないもの。
ね……だめ?」
至近距離で潤んだ瞳に見つめられる。
寄せられた眉に、自分がとんでもなく悪いことをしているような罪悪感を感じて、ルークは慌てて手を差し出した。
「わ、わかったよ。
じゃあフィリア、頼むね」
「ええ、まかせて」
オパールを握りしめたルークの右手を両手で包み込む。
「でも本当にまだ眠くないから、それまで話をしよう?」
「いいわよ。
でも眠くなったらすぐに言ってね?」
「……なんだか嫌にやる気だね」
そうかしら、と首を傾げてから、フィリアは何かを思いついた顔をした。
「たぶん、嬉しいんだと思うの」
「嬉しい?」
「こうやって、ルークの役に立てることが」
「……フィリアにはいつも助けられているけど」
「じゃあお互い様かしら?」
フィリアが笑みを漏らす。
「それに、これが最後の宝石でしょ?
これが終わったら、三人で王都に行けるから、私楽しみなのよ」
「そうだね。
それに、王都を案内する約束もあるし」
「でしょう?
……でも、少し寂しくもあるわ」
「寂しい?」
予想していなかった事に、ルークは目を瞬かせた。
「この宝石を探す旅が、私達を出逢わせてくれたから。
その繋がりが無くなってしまうみたいで」
「…そんなことはないよ」
ルークは握っていた拳を開くと、オパールごとフィリアの手をからめとった。
しっかりと、指と指を絡ませる。
お互いの手と手の間で、オパールが煌めく。
「旅が終わっても、僕達の絆は消えない。
だから、寂しがる必要なんてないよ」
「ルーク……」
「それに、僕は旅が終わって…王都も、城も、案内し終わって、しまっても……君に、……」
――ずっと、そばに
そう言いたくて、けれど急激に襲いかかってくる眠気に抗えずに意識が沈んでいく。
最後に、フィリアの優しい緑の瞳が瞼の裏に残った。
ルークは、何を言いかけたのだろうか。
すでに夢の世界へと旅立った彼を見守りつつ、フィリアは一人考える。
王都に行った後。
どうするかなんて、考えたこともなかった。
自分は、森に帰るのだろうか。
それとも、どこか別の―――?
物思いに耽りかけていると、キュッと繋いだ手に力が入った。
自分の事を考えろ、と言わんばかりに。
そう、なんにしろ今はルークの事を考えていなければ。
時間はたっぷりあるのだ。
それをいっぱいに使って、結論を出せばいい。
フィリアはルークの寝顔を見守り、知らずふわりと微笑んだ。
ルークの告白未遂事件(笑)




