Twins
「…もうすぐ、のようですね。
誰か、迎えを遣わします。
行ってくれる者はいますか?」
女の声が響く。
遣いにと名乗り出た者を見て、女はため息を吐きながらも了承の意を示した。
霧が濃くなってきている。
青の民が住む、大陸の北側、針の山脈と呼ばれる険しい山々へと近づくにつれ、フィリアたちの視界は遮られてきていた。
「すごい霧ね…」
フィリアが些か辟易したように呟く。
「これも、青の一族の街である夢幻の都が近い証拠だ」
「どういうこと?」
「この霧は青の一族の魔力によるものなんだ。
彼らの体から漏れ出した魔力や、魔術を使った時の魔力の残滓から形成されるものなんだよ」
「魔力、ね…」
あの豊穣の街で出会った魔女のせいで、魔術にいい思い出はない。
そんな気持ちが顔に出ていたのか、ルークが苦笑した。
「まあ、そんな顔しないで。
城にも青の民の魔術師がいるけど、彼らの力を借りるととても便利なんだよ」
「例えば?」
「うーん……届けたいところに一瞬でものを届けてくれたりとか、大怪我を治してくれたりとか」
「それに、城の防御にも彼らの魔術は役立っているぞ」
バルドが付け加える。
「そうだね。
この剣が張ることのできる結界とは別に、城自体を守る術を張ってくれているんだ。
いつ攻められても問題ないように、ね」
「ふうん。悪いことばかりではないのね」
「まあ、使う者の心がけ次第だろうな。
同じ魔術でも、あの魔女の首飾りの様なものは、作れば罰せられる」
「そう言えば、あの首飾り持ってきたみたいだけれどどうするの?」
フィリアがルークを心配そうに見つめる。
今、あれは彼が所持しているのだ。
「ああ、魔術のかかったものは簡単には壊すことが出来ないからね。
青の民の元へ持って行って、処分してもらうつもりだよ」
「それが妥当だろうな」
「なるほど。
というか、一体いつになったら着くのよ」
「「それは僕たちがお答えしましょう!」」
突如として霧の中に響いた声に、即座に三人は身を寄せ合った。
互いに背を向けあい、死角を潰す。
いつでも攻撃に対処できるよう、身構えたのだが―――
「きゃっ!?」
「なんだ?どうした!!」
「フィリア!?だいじょう……」
フィリアの悲鳴にそちらを向いたルークとバルドはそのまま固まった。
尻餅をつき、地面に座り込んだフィリアに、二人の少年が抱き着いている。
彼等は驚くほどにそっくりだ。
「君達は……」
「確か、アルとエル、だったか……?」
「え?誰?」
そろってあきれた視線を投げかけるルークとバルドに、フィリアは混乱するばかり。
そんな彼女にアルとエルと呼ばれた少年達は、やはりそっくりな笑顔を浮かべた。
「さっすがルーク様とバルド様!」
「僕らのことを覚えていてくれるなんて感激だな!」
「でも、このお姉さんは初めましてだよね?」
「僕等は見ての通りの双子のアルと」
「エル! 次期青の族長だよ!」
「お姉さんの」
「お名前は?」
息もつかせぬコンビネーションである。
フィリアは互い違いに発言するアルとエルを見て、目を白黒させた。
「「お名前は?」」
「あ、私はフィリアよ」
「フィリアかー」
「いい名前だね」
「見たところ貴族でもなさそうだけど」
「ルーク様たちとはどんな関係?」
二度聞かれてやっとの思いで問いに答えたフィリアだったが、更に質問が重ねられる。
「えーっと、単なる旅の同行者、とでもいうのかしら?
貴族とかではなくて、平民よ、たぶん」
「じゃあフィリアって呼ぶね?まあもう呼んでるけど」
「僕達のこともアルとエルって呼んで?」
「わかったわ」
「で、いつまでそうしてるつもりだい? 二人とも」
漸くそこまで会話が進んだところで、ルークが二人をフィリアから引き剥がした。
少し頬がひきつっている。
双子にこたえた様子は全く見られないが。
「ひどいなールーク様」
「せっかく僕らが迎えに来てあげたのに」
「迎え?」
「そうだよ」
「夢幻の都までは魔術師が術を使わないと入れないようになってるんだ」
「ルーク様達が前に視察に来たときは元々魔術師も同行してたから」
「気づかなかったかもしれないけどね」
永遠にたどり着けず、針の山脈を歩き回ることを想像して三人はゾッとした。
長くなりそうだったので微妙な位置ですが切りました。
それにしても双子たちよく喋るな…




