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緑の柱  作者: 美羽
Topaz
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Massacre

残酷描写があります。

お気を付け下さい。

ズキンズキンと、痛みが激しくなっていく。

もう意識を保つのがやっとだ。



「……自分の剣で殺されるなんて、彼も…」



(――殺す?)



誰を?



朦朧とする意識をどうにか魔女に向け、フィリアはそちらを見た。

今にもルークに向かって刃が降り下ろされようとしている。



(ルークを、殺す?)



頭の痛みが増していく。



彼を?



――ズキン



あの剣で?




―ズキン



女神の加護の証たる剣で王位継承者を殺すと言うのか。


それを、()は黙って見ている?





ズキンッ





“そのようなことが、赦されるはずもない”











――バリンッ



「なにっ!?」



今にもルークに剣が届く瞬間、凄まじい衝撃が魔女を襲った。

咄嗟に剣を止め、衝撃の出所を見る。



―あの少女を囲っていた魔法壁が壊れている?



そんなはずはない。

あれにはかなりの魔力を込めたはずだ。


しかし、事実魔法壁は粉々に砕かれ、破片となって地面に散らばっている。

蹲っていたフィリアが、ゆらりと緩慢な動作で立ち上がった。


二対の瞳が、視線が、交錯する。




ゾクリと、した。

魔女は、圧倒的有利な状況でさえ、フィリアに恐怖したのだ。


(私が、こんな小娘に―!?)


その恐怖の中身すらも理解できぬまま、魔女はそれを振りきるようにフィリアを攻撃した。



紫電が、フィリアに向かう。

それを彼女はただ見ている。


雷撃が、直撃した。



(そうよ、この私が恐怖なんて―)



あれは何かの気の迷いだ。

魔法壁が壊れたことで、動揺していたのかもしれない。


そう、思い直したが。



「な、どういうこと!?」



フィリアは何も変わらずその場に立っていた。

その髪一筋さえも、傷つくことなく。



「…?

避ける必要の無いものを、そのままにしていただけよ?」



――そう、避ける必要などない。

彼女程度の術師が、自分を傷つけることはどうやったって不可能なのだ。


ゆっくりと、フィリアが魔女に近づく。



「なに…何なの?

……っ、この男がどうなってもいいの!?」



ルークに向かって再度剣を握る。

その様子に、フィリアは眉をしかめた。



「ふふっ、ほら、こいつを殺されたくなければ」


「汚い手で、それに触れるな」



ピシャリと、フィリアが言葉を放った瞬間に、



ジュッ



「っあ、なに!?」



剣の柄が熱くなり、たまらず魔女は剣を離した。

剣を握っていた掌の皮膚が熔けている。



「ひっ……」



フィリアが近づいただけ、魔女が下がる。



「…」



フィリアの周囲に、数え切れないほどの緑に輝く魔方陣が浮かび上がった。



「あ、貴女、魔術を…」



それらはルークやバルド、ユナの倒れる地面にも表れ、次の瞬間には三人は一纏めになってフィリアの後方、魔女が手出しできない位置に移動した。



再度、魔方陣が輝く。



気がつくと、魔女の目前にフィリアは立っていた。



「あ…」



魔女は動けない。

彼女の足元にも巨大な魔方陣が浮かび上がり、動きを縛る。



トスリと、あまりにも簡単に魔女の体に刃が刺さった。



「あ、ぐぁ…」



そのまま、横に薙いで斬る。

あまりの衝撃に、魔女は仰向けに地に倒れた。



その中心から脇腹に向かって裂かれた腹を、フィリアの華奢な足が踏みつける。


一切を無表情で行うフィリアに、魔女はガタガタと震えた。



「あ……、許して…」



無言で、右二の腕に刀を突き立てる。



「あぁあぁぁぁぁあぁ!!」



耳障りな悲鳴が響いた。

血が噴き出し、フィリアの体や服を汚す。



「確か、剣を触ったのはこちらの手よね?」



そのまま、掌まで腕を切り裂いた。



「痛いいたいイタイいだいぃいぃいい!!」


「煩いわよ、貴女」



次いで、喉を切り裂く。



ビクンビクンッと魔女は痙攣して、動かなくなった。


フィリアは小首を傾げた。



「死んでいいと、言ったかしら?」



その言葉と共に、魔女は息をふきかえす。

裂かれた手も、首も腹も、何事もなかったかのように元に戻っていた。



「ひぃっ……

な、なんで、なんで…」


確かに自分は死んだはずだ。

混乱する魔女に、フィリアは再び口を開く。


「トパーズはどこ?」


「あ、あぁ……」



歯をカチカチ鳴らして答えそうもない魔女の右腕を、フィリアは切り飛ばした。

倒れる魔女の少し離れた右側に、彼女の腕が落ちる。



「ぎゃあぁぁああぁあぁ!!」


「どこにやったの?」



フィリアがパチリと瞬きすれば、魔女の腕はもとの通りに生えている。

勿論、右側には斬られた腕が転がったまま。


魔女が答えるまで、それは続けられる。



「と、とぱーずは、わたし、のんでからだ、ある」



何度腕を飛ばしただろうか。

聞き取りにくい言葉で、魔女は呟いた。

もう正常な思考は持たないのだろう。


フィリアは少し考える仕草をした。



「どこにあるのか分からないし、全てバラバラにすれば出てくるわよね?」



そう言って刀を持ち直すフィリアに、魔女は自らが決して戦ってはいけないものに刃を向けてしまったのだと、やっと気がついたのだった。



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