Legwork
バルド達と別れたルークとフィリアは、一先ず露天を回って情報を集めることにした。
「それじゃあ行こうか。
はい、フィリア」
差し出された手に自然に自らの手を重ねる。
「そうね。
…どこから行けばいいのかしら」
「うーん、食べ物とかの店は朝食をとったばかりだし、装飾品が売っている店に行ってみようか」
「それじゃあ…
あ、あそことかどうかしら?」
そう言って指差した先は色々なものが売っている雑貨屋のようだ。
二人はそこに向かった。
「いらっしゃい」
「こんにちは」
「今日は何をお求めで?」
「彼女に似合うアクセサリーを探してるんだけど、何かいいものないかな?」
「そうですな…
それでしたらこちらにある物などどうでしょう?
小振りですが、いい品を使っていますよ」
そう言って店主が取り出したのは可愛らしい耳飾りだった。
ルークはそのうちの1つを手にとってフィリアの耳にあてる。
「うん、似合うよフィリア」
「そ、そう…?」
「とてもお似合いですよ。
お嬢さんは瞳が綺麗だから、こちらなんかもどうです?」
「それもよさそうだね。
…そう言えば、僕達はこの街に来たばかりで詳しくは知らないけど、この街である事件が起こってるって本当かい?」
ルークの言葉に店主は顔をしかめた。
「いやあお客さん、耳が早いね。
そうなんですよ。
今まではこんなことはなかったのに、突然街の者が襲われてね」
「最近のことなの?」
「ああ、そうだな、丁度1ヶ月前ぐらいから始まったことですかね。
お客さん達も気を付けた方がいい。
特に、お嬢ちゃんは」
「私?」
店主は深く頷く。
「何故かは分からないですが、若くて綺麗な女ばかり襲われているんですよ。
それも、決まって体を切り刻まれてね。
襲われた場所には女の血が海のように流れているそうですよ」
「血が?」
「えぇ、恐ろしいことです」
「なるほどね、気を付けるよ。
それじゃあ、これを貰おうかな」
「え、ルーク!?」
「毎度、銀貨二枚になります」
フィリアが驚いているうちにルークは会計を済ませてしまった。
手を引かれ、慌ててついていく。
「ルーク、別に買わなくても…」
「いいんだよ。
はい、フィリア。
受け取ってくれないかな?
それとも、ロイからのブレスレットは受け取れて、僕からのは駄目?」
「そんなことないけど…
わかったわ、ありがとうルーク」
受け取って、早速フィリアは耳飾りをつけてみた。
耳元で銀の鎖にさがった緑の石――恐らくエメラルドだろう――がチリリと揺れる。
「似合ってるよ。
さ、他のところでも聞いてみよう」
二人は更なる情報を求め、店を回った。
「…結局、女の人が夜に襲われるってことぐらいしか分からなかったわね」
「そうだね…
バルド達が他の情報を手に入れてくるかもしれないし、僕達はこれくらいにして二人を待とう」
「そうね。
それにしても…もうすぐお昼だからかしら?
人が多くなってきたわね」
噴水の縁に座り、フィリアはキョロキョロと辺りを見回した。
その様子にルークが笑う。
「この豊穣の街でそんなこと言ってたら大変だね。
王都にはもっと人がいるよ?」
「ここよりも?」
「もちろん。
王都はこの国で最も大きな街だからね。
なんと言っても城があるし。
色々な地から、たくさんの人や者が集まってくるんだ。
宝石を全て集め終わったら、一緒に王都に行こう。
僕が城や街を案内するよ」
「本当?
…でも、私なんかがお城に行ってもいいの?」
「当然だよ。
フィリアは僕達の大切な仲間なんだからね。
父上と母上にも紹介したいし」
「ルークのお父さんとお母さんってことは、国王様と王妃様よね?
ふふっ、楽しみにしてるわ」
お互いに笑い合う。
「……なんだか喉が渇いてきたね。
フィリアは大丈夫?」
「そう言われればそうかも」
「何か買ってくるよ」
「私も行くわよ?」
フィリアが腰を上げようとするが、ルークが制する。
「大丈夫だよ。
少し行ってくるから、ここから動かないでね?
迷子になったら大変だしね」
「さすがにこんなところでは迷わないわよ」
頬を膨らませたフィリアに、ルークは行ってくるね、と言って離れていった。
暫く大人しくしていたが、ふとフィリアは視線を感じてそちらを向いた。
見ると怪しげなフードの人物がこちらを見ている。
露天を開いているようだ。
「……?」
あの怪しい占い師かもしれない、と思って近づいてみたが、どうやら別人のようだ。
「お嬢ちゃん、首飾りはいらんかね?
いい商品がいっぱいあるよ」
フィリアは商品をじっと眺めてみる。
「…いいわ。
今日、耳飾りを買ってもらったばかりだし。
知り合いに似ていたからよらせてもらっただけなの」
謝って店から離れ、元の場所に戻った。
ついあの露天に近寄ってしまったが、どうやらルークはまだ戻ってきていないようで、噴水を離れたことを怒られる心配はない。
安心して息をついた。
「お嬢ちゃん、一人かい?」
声をかけられて顔をあげる。
フィリアよりもいくつか年上だろうか、青年が立っていた。
「?」
「お嬢ちゃんはこの街の人?」
「いえ、違いますけど…」
「そうなんだ、俺はこの街に住んでるんだけど、暇なら案内するよ?
俺と一緒に昼飯でもどう?」
「いえ、人を待っているので」
「そんなこと言わずに…」
「すいません。
彼女、僕の連れなので」
言い募る男に、いつの間にか戻ってきたらしいルークがピシャリと言葉を返した。
丁寧な言葉遣いだが、その裏に隠されている威圧感は半端ではない。
男はあぁ、いや、ならいいんだ、などと言いながら逃げるように去っていった。
「遅くなってごめん。
大丈夫だった?」
飲み物を手渡しながらルークが尋ねる。
「ええ。
でも、なんだったのかしらあの人。
お昼ご飯に誘われたんだけど、全然知らない人だし」
「なんだろうね。
でも、ああいう怪しい人にはついて行かない方がいいよ。
何をされるかわからないからね。
こんな風に人が多い所にはあんな人も多くいるから、気を付けて」
「ふーん、じゃああんまり話さなくて正解ね」
「うん、これからもそうするか、声をかけられても無視してね」
ルークの指示にフィリアが頷く。
バルド達がいないのを良いことに、ルークは少し間違った常識をフィリアに植え付けるのだった。
ルークは女の子をさらっと誉めることができます。
なにしろ王子様なので(笑)
社交界とかでそういうのが当たり前なんでしょうね。
他のそういうのに慣れてない平民の子なら真っ赤になるだろうけど、そこはフィリアちゃん。
総スルーです。




