Morning
「フィリア様、もう朝ですわ。
起きてくださいませ。
………ふふふ、可愛らしい寝顔ですわね」
聞こえた言葉に何故だか寒気を覚え、フィリアは飛び起きた。
見ると予想外に近い位置にメイドの顔がある。
「あら、起きてしまいましたの?
残念ですわ」
「…おはよう」
「おはようございます。
もうすぐ朝食の時間ですわ。
お召し替えしましょう?」
「え、いや、今日は街を調べるから普通の服装で…」
嘘ではない。
昨晩ルークと話したときにそう伝えられたのだ。
宝石はこの街のどこかにあるようだが、はっきりとは分からないため実際に街におりて探さなければならない。
「まあ、街にですか?
今街では夜になると何者かが現れて街人の命を奪っていくと聞きます。
あまり遅くならないようにしてくださいませ」
「あら、私達は丁度それを調べにいくの。
だから動きやすい服装じゃないと」
そう、街人を襲っているのは闇の者かもしれない。
もしそうなら、その闇の者の近くにトパーズがあるはずである。
「…動きやすければ、よいのですね?」
「え?」
「お任せください。
フィリア様を動きやすく、可愛らしい服装で仕上げて見せますわ!」
いやそれ方向性ちがう
そんなフィリアの呟きはメイド達の声に掻き消された。
「おはようフィリア。
……今日はいつもの服装ではないのか?」
食堂に着くまでの廊下で出会ったバルドは開口一番に不思議そうな顔をした。
「…着替えさせられたのよ」
「なるほどな。
しかし、スカートはまずいんじゃないか?」
「ああ、これ、実はズボンになっているの」
フィリアが裾を掴むと、なるほどフリルで分からなかったが確かにズボンになっている。
丈もドレスとは異なり膝よりもかなり高い位置にあるため、動きやすそうだ。
大きく露出された足はふくらはぎまでを黒い細身のブーツが覆っている。
「今時の服はそんな風になっているのか」
「ふふっ、バルドなんだか発言がおじさんみたいね」
「ま、確かに俺はお前たちから見たら立派なおじさんだよ」
二人で笑いながら食堂に入る。
そこにはすでにアードルトとメリダ以外の全員が揃っていた。
朝食は必ず全員で食べる、というアードルトなりの信条があるようで、そこにはユナの姿もあった。
「おはようユナ」
空いていた彼女の隣の席に座ると、
ユナは可愛らしく笑い返してくれた。
「おはようフィリア」
「おはよう。
眠そうねルーク」
「君は平気なの?」
「…朝から色々あってね」
自然に会話するフィリアとルークを見て、バルドがおや、と眉をあげた。
フィリアが仲直りしたの、と目で伝える。
よかったな、と彼も目で返した。
「…あの、フィリア。
この方たちが貴女と旅をしている人?」
「あ、ユナは初めて会うのよね。
そうよ、あっちの金髪の方がルークで、黒髪の方がバルド。
二人とも、ユナよ」
紹介されてユナはペコリと頭を下げる。
「よろしく」
「おはよう。
皆、よく眠れたかい?」
一段落ついたところで、アードルト達が入ってきた。
「おはようございます。
ええ、お陰さまでぐっすりと」
「そのわりにはルーク様は眠そうだが?」
「いや、少し話し込んでね」
「まあ、ルーク様。
あの後はすぐにお眠りになると言ってらしたじゃないですか。
だから私我慢しましたのに」
「あぁ、いや…」
早速ルークの隣の席へと座るメリダに、ルークは押されぎみだ。
「ルーク様にも用というものがある。
そのくらいにしておきなさい、メリダ。
フィリア嬢とはやっと一緒に食事ができるね」
「昨晩は折角のお誘いを申し訳ありません」
「いいや、構わないよ。
ユナと友人になってくれたのだろう?
喜ばしいことだ」
アードルトはユナに優しい目線を向けた。
それにユナは恥ずかしそうに俯く。
「さ、食事にしよう」
食事は比較的穏やかに進んだ。
途中途中、メリダからの嫌みがありはしたが。
「それでは、今日は街へ?」
「ああ。
街人が襲われる話について聞きたいと思ってる」
「わかりました。
……ユナ、ルーク様達の案内を頼めるかい?」
「…え?」
「っ、お父様!
案内ならば私にもできますわ!」
アードルトの突然の指示に、ユナは戸惑いメリダは反発した。
「メリダ、これは遊びではないんだ。
馬車で移動するわけではない。
お前が行けば邪魔になるだろう。
その点ユナならば街のことには詳しいし、未だ未発達だが守りの力もある。
ルーク様達の妨げにはならん。
頼めるか、ユナ?」
ユナがしっかりと頷く。
「……」
メリダは忌々しげにその姿を睨み付けた。




