Dialogue
「ところでフィリア、ルークの事なんだが…」
木の根本に座ってフィリアに渡された(実際は自称占い師という青年からもらったものなのだが)果物を食べながら、バルドがポツリと話し始めたので、フィリアは先んじて言葉を発する。
「わかってるわよ。
私が身分を気にして態度が変わるかも、って思ったんでしょう?」
「……あぁ、そうだ。
よくわかったな」
「ふふ、私を甘く見ないことね」
本当は占い師に教えてもらったのだが、そんなことバルドは気づかない。
「理由はどうあれ、お前に嘘をついていたことは事実だ。
黙っていてすまん」
「……じゃあ私、色々と聞きたいことがあるのだけど、聞いてもいいかしら?」
「ああ、もう嘘はつかん。」
「なら遠慮なく聞くわよ?
そうね、ルークが王太子様なら、バルドもお城で働いていたりしたの?」
「ああ、俺は国王様――いわゆるルークの父にあたる方だが、彼の近衛兵だったんだ」
「近衛?
ふつうの兵士とは何が違うの?」
そうだな、とバルドは顎に手をあて夜空を見上げる。
「兵士は国を守るための者だが、近衛は違う。
自分の主だけを守るために剣をふるう者達だ。
俺は国王様に剣を捧げた」
「じゃあ何故ルークと旅に?」
「俺にもわからん」
「…?」
首をかしげたフィリアに、バルドはため息をついた。
「ある日突然、ルークと共に旅に出てほしいと言われてな。
あの方の頼みを俺が断れないことを知っていて、全く困ったものだ」
「旅に出るのは嫌だったの?」
「あぁ、そうだな。
なにしろ城にいたときのルークときたら、悪戯ばかりの悪ガキで、俺が苦労するのは目に見えていた。
……何より、俺はあの方に剣を捧げた身。
あの方のための剣だというのに…」
「貴方のこと、信頼してたのね」
「なに?」
フィリアを少し驚いて見るバルド。
「だって貴方のこと信頼していなければ、自分の息子を預けようなんて思わないもの。
よかったじゃない、王様に頼りにされてて」
「お前は時折、こちらを驚かせるような事を言うな…」
そう言ってバルドは楽しそうに笑いだした。
フィリアが頬を膨らませる。
「なによ、思ったことを言っただけなのに。
そう言えばロイもそんな風に急に笑い始めたのよね。
失礼しちゃうわ」
「そうか、ロイもか…
お前のそういうところを、気に入ったんだろうな」
「ほめてるのよね、それ…?」
もちろんだ、と冗談めかして、けれど心からそう言って、バルドが立ち上がる。
「一旦馬車の近くに戻るぞ。
あいつらにこの果物を分けてやらねばな。
それに、あんなところに馬車があったら盗賊に狙われるかもしれん」
「わかったわ」
バルドの隣に並んで歩きだしたフィリアは、けれど彼に悪戯っぽく微笑んだ。
「そうそう、バルドはちゃんと謝ってくれたから許すけど、私はまだルークのことは許してないわよ?
悪いのは絶対そっちだもの。
ルークが私にきちんと謝って、自分の事を自分の口で教えてくれるまで、ルークとは口を利かないから」
「……お前、実は結構俺たちに対して怒ってるんじゃないか?」
そんなことないわよ、と言って、フィリアは上機嫌で馬車に向かっていく。
その背を見てバルドは苦笑した。
(まあ確かに、ルークにはいい罰になる)
ただ、メリダの存在が問題だ。
彼女がいては、ルークはフィリアに近づくことすら出来なそうだ。
(自業自得だな)
バルドに手伝う気は更々なかった。




