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緑の柱  作者: 美羽
Ruby
23/182

Stroll

「なんで僕はあの時手を繋がなかったんだ……!!」


「まあ、過ぎたことはしかたないだろう。

あの時行動しなかったお前が悪い」


「わかってるよ……。

それに、彼とはここにいる間だけの、関係だしね、夜の散歩くらい、問題ないさ」



どうにか(ギリギリの)余裕をみせるルークに、しかしバルドは爆弾を投下した。



「どうだかな」


「…え?」


「あの様子じゃ、ロイド殿は今頃フィリアを口説いてる最中なんじゃないか?

相当フィリアのことを気に入っていたようだし、フィリアも彼になついている」


「ま、まさか…。

それにフィリアは僕らと旅をしているんだよ?

大丈夫に決まってるさ」



ルークの余裕が崩れていく。



「そこはロイ殿の腕の見せ所だろう。

落ち着いた大人の魅力、ってやつで」


「…バルド、僕をそんなに傷つけて何が楽しいの」



全体的に、と答えてバルドは続ける。



「だが、いいこともあっただろう」


「いいこと?」


「フィリアのあの態度だ。

フィリアがロイ殿に初めて出会った時には、ロイ殿は自分の身分を明かさなかった。

夕食の時のフィリアの驚き様でそれがわかるだろう?

しかしフィリアはそれを知る前も後も、態度は変わらなかった。

普通の女なら、もう少し媚びていただろうがな」


「……確かにそうだね」


「ま、そういう意味でもフィリアのようなやつは地位ある者の、特にそれにしがらみを感じている者にとって得難い存在だということだ」


「…いいことなのか、悪いことなのか」



ルークは疲れたように項垂れた。











館の庭は所々がライトアップされ、南の地でしか咲くことのない花や珍しい木々が植えられていた。



「うわぁ、綺麗ね」


「我が家の自慢の庭なんですよ。

気に入っていただけましたか?」


「すごく!」



それはよかった、とロイは柔らかく微笑んだ。

フィリアは楽しげに辺りを見渡すと、ふよふよと宙に浮いている照明へと目を向けた。



「この明かりはどうなっているの?」


「ああ、珍しいですか?

これは北の地に住んでいる魔術師たちの手で作られたものです。

日中は太陽の光を集めて、その光をこうして夜に放つのです」


「すごいのね。

…さわっても、大丈夫?」


「大丈夫ですよ」



そっと手に取ると、仄かに暖かい。

この光が昼間のあの凶暴な太陽の光によって作られたとは思えず、フィリアは不思議ね、と呟いた。



「他にもこの庭には変わったものが色々あるんです。

案内しましょう」



明かりがあるとは言え足元は暗いから、と差し出された手を取り、繋ぐ。

その道すがらポツポツと森の話をしつつ、フィリアは散歩を楽しんだ。



「フィリア、旅は、楽しいですか?」



ロイが尋ねる。



「ええ。

大変なこともあるけど、初めて経験することばかりでとても楽しいわ」


「……そうですか。

貴女達はこの後、西と北を訪ねるのでしょう?

北に行ったら他にも魔術が使われた不思議な道具があるはずです。

なにか、いいものがあるといいですね」


「そうね。

それじゃあすごいものを見つけたら、それをロイにお土産にして渡すわ」



ロイが目を見開く。



「…迷惑かしら?」


「いいえ、とんでもない。

ありがとうございます。

楽しみに、待っていますよ」



とても幸せそうに、ロイは笑った。





明日は早いから、と渋るフィリアを、ロイは部屋へと案内した。



「まだ全然見終わってないのに」


「ふふっ、では続きは今度この館にいらした時にしましょう。

また、私に案内させて下さい。約束です」


「本当?絶対よ?」


しっかりと約束をとりつけて、おやすみと言って別れる。

用意された部屋に入ると、何故かルークとバルドがいた。



「二人ともどうしたの?

確か、一人部屋だって聞いてたんだけど」


「いや、いつまで庭を見ているのかと思ってな。

楽しめたか?」


「もちろん。

すごいのよ、不思議な明かりがあってね、魔術を使っているんですって」


「ほう、さすがはグレイ殿の館だな」


「でしょう?

私、魔術って初めて見たわ」



フィリアはニコニコと上機嫌だ。

その様子に、ルークの中の不安は増大していった。



「…どうかしたの?

ルーク、すごい顔してるわよ?」



フィリアに不思議そうに問われて、ルークは意を決して口を開いた。



「その……フィリアは、旅を続けるよね?」


「…何言ってるの?

当たり前じゃない」



その答えにホッとする。



「そっか、いや、なんでもないんだ。

もう寝るよ。

行こう、バルド」



あからさまな態度にバルドは必死で笑いをこらえている。



「……変なルーク」



先程までとはうって変わってにこやかに部屋を出て行ったルークに、フィリアは首を傾げるのだった。



ロイは本当は口説こうとしましたが、旅を楽しむフィリアちゃんがあまりにも可愛かったので(←ここ重要)ひとまずはルークに譲ることにしたようです。

でも諦めたわけではなく、次の約束もとりつけて押せ押せ状態です。


番外編、「語られることのない物語」を作成しました。

ルーク達が部屋を出た後の小さな出来事が書かれています。

よろしければご覧ください。

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