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最強女騎士は、あと百二十日で壊れる ~粗探ししかできないハズレスキル《不具合鑑定》の俺だけが、それに気づいた~  作者: 出水克幸
城護盾バスティオン編

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第十四話 時間が来るまで

ヴァルガルドの前脚が床へ沈んだ瞬間、セラは正面から踏み込んだ。


避けるためではない。振り下ろされる脚の角度と、着地の衝撃で床へ走る亀裂、その直後に首がどちらへ振れるかまで見た上で、攻撃が完成するより先に内側へ入り込む。


剣の腹を前脚の関節へ当てた。


止めるつもりはない。


あの巨体を正面から止められるはずがない。


落下する力へほんのわずかな角度だけを与え、本来ならセラを踏み潰していた爪を外側へ落とす。


前脚が床を砕いた。


石片が舞い上がる。


その向こうから大角が迫った。


セラは剣を返さない。代わりに(さや)を角の側面へ滑らせ、首の回転に自分の身体を合わせる。押し返すのではなく、ヴァルガルド自身の力を利用して身体を逃がした。


そこへ雷が走る。


青白い光が床を這うより早く、セラは右足を半歩だけ内側へ入れた。雷は(かかと)のすぐ後ろを焼き、石床へ黒い筋を残す。


それでもヴァルガルドは止まらなかった。


右前脚を引き戻すと同時に左肩を沈め、そのまま巨体ごとセラへ押し込んでくる。


セラは横へ逃げず、剣を寝かせて肩へ当てた。


衝撃を受ける。


両足が床を滑る。


靴底が石を削り、身体が押される。


それでも転ばない。


最後に剣の角度を変え、ヴァルガルドの肩をわずかに横へ流す。その隙間から身体を抜き、巨体の側面へ回り込んだ。


斬れる。


首筋が目の前にある。


刃を立てれば届く。


それでもセラは剣を返さなかった。


柄頭(つかがしら)を首の付け根へ叩き込み、その反動だけで距離を取る。


黄色い瞳が、セラを追った。


「カギ……」


ヴァルガルドの声は、さっきまでより明瞭だった。


「斬ラヌ」


セラは剣を低く構えたまま答える。


「そうだ」


「ナゼ」


「約束した」


ヴァルガルドの瞳がわずかに細くなった。


「約束……」


言葉の意味を探るように繰り返す。


セラはそれ以上説明しなかった。


「お前には関係ない」


次の瞬間、ヴァルガルドが踏み込んだ。



―――



そこから、戦い方が変わった。


ヴァルガルドはセラの剣を避けなくなった。


それまでは首筋へ刃が近づけば角で弾き、前脚を守れば身体を引いていた。だが、今はセラが深く斬らないと理解している。


だから守らない。


むしろ、斬られないことを前提に、自分の身体そのものを武器として押しつけてくる。


大角が横から()いだ。


セラは剣の腹を沿わせて軌道を外へ流す。


その瞬間、ヴァルガルドは首の力を抜いた。


支えを失ったセラの剣が前へ滑る。


身体がわずかに流れた。


そこへ額。


角ではない。


頭そのものが飛んできた。


「――っ」


セラは両腕で剣を横に構えた。


衝突。


身体が浮く。


そのまま石床を滑り、背中から壁へ叩きつけられた。


鈍い音が地下空洞へ響く。


「セラ!」


マレクが叫ぶ。


壁際へ崩れた銀髪が動いた。


セラはすぐに立ったが、左肩の鎧には大きな亀裂が走っていた。


ヴァルガルドは追撃する。


雷を一本。


セラが右へ動く。


二本目。


逃げ道を塞ぐ。


三本目はセラではなく頭上の岩盤へ落ちた。


天井が砕け、大きな石塊が進路へ落ちてくる。


セラは石の下から抜けるため左へ身体を傾けた。


そこには、もう大角が待っていた。


剣の腹で触れる。


流す。


しかし、ヴァルガルドは途中で首を止めた。


押し流すために使っていた力そのものが消え、セラの重心が崩れる。


その空白へ前脚が入る。


セラは身体を捻った。


完全には避けられない。


爪の先が脇腹の鎧を削り、衝撃だけで身体が横へ回った。


肩から床へ落ちる。


剣が手から抜けかけた。


それでも握る。


転がりながら起き上がる。


呼吸を吸った瞬間、セラの表情がわずかに歪んだ。


マレクが低く(つぶや)く。


「肋骨までいったか」


城主が横を見る。


「助けられないのか」


「俺が入れば邪魔になる」


マレクは即答した。


悔しさがないわけではない。


それでも、分かっている。


今の速度へ割り込めば、守るどころかセラの選択肢を減らすだけだ。


その間にもヴァルガルドは前へ出る。


もう剣を恐れていない。


それが、何より厄介だった。



―――



地下深く。


選流環へ流れ込む力は増え続けていた。


《不具合鑑定》の視界では、城外の無数の魔物から伸びる細い流れが束となり、バスティオンへ吸い込まれている。


同時に、古い導管へかかる負荷も上がっている。


「ネネ!」


俺は伝声管へ声を入れた。


『聞こえてる!』


「外は!」


『前の方はかなり止まってる! でも後ろがまだ動いてる!』


「まだ来てるんですか!」


『来てる! 速度は落ちてるけど、全部じゃない!』


まだ止められない。


今ここで徴収を止めれば、後方の群れが残る。


一方で、選流環も無限に耐えられるわけじゃない。


右側第二層の接続部に、明らかな歪みが出ていた。


「右の第二層、持ちません!」


盾守(たてもり)が振り返る。


「どこだ!」


「外側の接続部です。負荷が集中してる!」


ユーリクも円環を見る。


「第三層へ分ける」


「できますか」


「やるしかない」


その右手は、もうほとんど握れない。


ユーリクは古い操作棒へ指を引っかけ、左手を重ねた。


盾守が隣の棒へ手をかける。


「同時に下げるぞ」


「分かった」


俺は流れを見る。


「今です!」


二人が操作棒を落とした。


円環を走っていた光の一部が別経路へ分かれ、張り詰めていた接続部の負荷がわずかに下がる。


「通った!」


だが、ユーリクはすぐに手を離せなかった。


右手の指が操作棒へ絡みついたまま動かない。


左手で一本ずつ外していく。


「ユーリク、その手……」


「今はいい」


「でも」


「トーマ」


ユーリクが俺を見る。


「上を見ろ」


言われるまでもなく。


頭上から伝わってくる振動は、さっきより大きくなっていた。



―――



セラの呼吸が明らかに変わっていた。


肩で息をしている。


右脚の外側には雷で焼かれた跡があり、左肩の鎧はもう半分以上砕けている。


それでもヴァルガルドは止まらない。


前脚が来る。


セラは内側へ入る。


今度は流さない。


(つか)を関節へ当てて、その一瞬だけ動きを鈍らせる。


抜ける。


そこへ大角。


剣の腹で受ける。


角を逸らす。


成功した。


だが、そのままヴァルガルドは角を壁へ叩きつけた。


壁が崩れ、背後へ石が落ちる。


退路が消えた。


前から前脚。


横には雷。


正しい答えは分かっている。


それでも。


その答えを選べる場所がない。


セラは前脚を受けた。


剣が(きし)む。


両足が床を滑る。


背中が崩れた壁へぶつかった。


そこから、さらに体重をかけられる。


「……ぐ」


初めて、セラの口から苦痛の声が漏れた。


右腕が震える。


左肩はもうほとんど使えない。


片足も十分には踏ん張れない。


それでも剣は折れない。


セラも折れない。


ヴァルガルドの目が近づく。


「カギ」


「……何だ」


「斬レ」


「嫌だ」


「斬レバ……逃ゲラレル」


セラの目がわずかに見開いた。


こいつは。


分かっている。


自分を斬れば、この状況から逃げられることまで。


「斬ラナケレバ」


前脚へさらに体重が乗る。


「死ヌ」


セラの顔が歪んだ。


それでも。


口元だけが少し上がった。


「それは困る」


ヴァルガルドが前脚を引く。


その瞬間、セラは身体を横へ倒した。


潰される寸前で抜ける。


立とうとする。


右膝が落ちた。


剣を床へ突き、どうにか身体を支える。


マレクが前へ出ようとした。


「来るな」


セラが言った。


「だが!」


「邪魔だ」


声は弱い。


でも。


命令そのものは変わらない。


マレクが足を止める。


ヴァルガルドが低く唸った。


「ナゼ」


セラは剣を杖代わりにしながら立ち上がる。


「何がだ」


「ナゼ……斬ラヌ」


セラは答えるまでに、一度呼吸を整えた。


「言っただろう」


剣を持ち上げる。


「約束した」


「約束……トーマ?」


セラの目が。


一瞬だけ変わった。


「そうだ」


セラは短く答える。


「だから斬らない」


ヴァルガルドが、初めてわずかに首を傾けた。


理解できない。


そんな仕草だった。


「死ヌ、のに?」


「そうならないように戦ってる」


「非合理」


「知るか」


次の瞬間。


セラが自分から前へ出た。



―――



ここからは、守る戦いですらなかった。


セラは余力を残していない。


身体能力も、判断も、《完全適合》も、今使えるすべてを投入している。


ただし。


斬らない。


その一点だけ。


絶対に変えない。


ヴァルガルドが角を振る。


セラは刃を立てず、剣の平で触れる。


角の勢いを流しながら、自分の身体まで押し出させる。


飛ばされた先へ雷。


空中で鞘を投げる。


鞘へ雷が落ちる。


その一瞬に着地位置をずらす。


前脚。


受けない。


床へ転がる。


起きる。


後脚。


間に合わない。


剣の柄を足首へ叩き込み、完全に止めるのではなく、一瞬だけ踏み込みを遅らせる。


その一瞬で身体を抜く。


正解を出し続ける。


それでも。


追いつかれていく。


ヴァルガルドの出力が高すぎる。


セラが完璧に避けても、雷の余波が皮膚を焼く。


完璧に角を流しても、振り抜かれた風圧だけで姿勢が崩れる。


前脚の落下位置をずらしても、砕けた床そのものが次の足場を奪う。


技術では負けていない。


それでも。


身体が先に限界へ近づいていく。


銀髪は(ほこり)と血で汚れている。


左腕はほとんど上がらない。


右脚も引きずり始めている。


それでも剣だけは。


まだ。


相手の身体へ深く入っていない。


城主が、声を失ったようにその戦いを見ていた。


やがて。


小さく呟く。


「……鬼神」


マレクが横目で見る。


「何だ」


「敵を斬るから、そう呼ばれるのだと思っていた」


目の前では。


セラが一度も決定打を入れていない。


それでも。


災厄を一歩も先へ行かせていない。


「違ったらしい」


マレクは答えなかった。


ただ。


その目だけが。


セラを追っていた。



―――



『まだ!』


伝声管からネネの声が飛ぶ。


俺は思わず口金を強く握った。


「あとどれくらいです!」


『分かんない! でも後ろの群れがまだ動いてる!』


「速度は!」


『かなり落ちてる! でも止めるなら、もう少し!』


もう少し。


その言葉を。


何回聞いた。


上の伝声管から。


マレクの声。


『トーマ!』


「はい!」


『セラがまずい!』


胸が締まる。


「繋いでください!」


『今は無理だ!』


「一言だけでも!」


轟音(ごうおん)


通信が途切れかける。


しばらくして。


雑音の向こうから。


声。


『……トーマ』


「セラ!」


息が。


ひどく荒い。


「大丈夫ですか!」


『大丈夫じゃない』


即答だった。


「あと少しです」


『ネネから聞こえてる』


「もし本当に無理なら――」


言いかけた。


セラが(さえぎ)る。


『言うな』


「でも」


『言うな、トーマ』


声は弱い。


それでも。


その一言だけは。


強かった。


『お前が斬るなと言った』


「……はい」


『なら、私は斬らない』


「死んだら意味ないでしょう!」


『だから死なない』


「そんな無茶な」


『無茶を頼んだのはお前だ』


言葉に詰まった。


その通りだった。


俺が頼んだ。


壊すな。


斬るな。


そうしなければ。


何が起こるか分からないから。


なのに。


今さら。


彼女が危ないからって。


撤回するのか。


「……ごめんなさい」


『謝るな』


「でも」


『その代わり』


一度。


息。


『早くしろ』


通信が切れた。


俺は口金を握ったまま。


しばらく動けなかった。


ユーリクが横から言う。


「信じるのも、仕事だぞ」


「分かってます」


「顔は分かっていない」


「うるさいです」


それでも。


視線を選流環へ戻す。


俺にできるのは。


ここだ。



―――



灰角王(かいかくおう)ヴァルガルドは。


もうセラが限界に近いと理解していた。


呼吸。


脚。


剣の速度。


全部。


見ている。


だから。


最後は。


複雑なことをしなかった。


真正面から。


潰しに来た。


たてがみに雷が集まる。


セラの左右へ二本。


背後へ一本。


退路を焼く。


同時に前脚で床を割る。


残った足場を狭める。


その中央へ。


大角を低く構えたまま。


巨体そのものが突っ込んでくる。


セラは。


一目で分かった。


避けられない。


流せない。


受ければ。


今度こそ身体が持たない。


そして。


もう一つ。


分かる。


首筋。


今なら。


斬れる。


ヴァルガルドは防御していない。


セラが斬らないと。


最後まで。


信じ切っている。


剣を立てれば。


届く。


ほんの一振り。


それだけで。


少なくとも。


自分へ来る攻撃を止めることはできる。


セラの手が。


わずかに動いた。


刃が。


ヴァルガルドの首へ向きかける。


そこで。


止まった。


『お前が斬るなと言った』


自分で言った言葉が。


頭に残っている。


トーマの顔が。


ほんの一瞬。


浮かんだ。


セラは。


刃を寝かせた。


「馬鹿だな」


誰に言ったのか。


自分か。


トーマか。


分からない。


でも。


笑った。


「約束したからな」


ヴァルガルドが迫る。


セラは殺すための構えを捨てた。


最後まで。


受ける。


右足をわずかに引く。


使える腕は一本。


左肩は動かない。


剣の腹を角へ向ける。


止めるのは無理。


なら。


最後の瞬間。


ほんの少しだけ。


軌道をずらす。


それしかない。


「来い」


ヴァルガルドが床を蹴った。


雷。


大角。


巨体。


全部が。


セラへ集中する。


あと一歩。


セラが剣を上げる。


その瞬間。


ヴァルガルドの右前脚から。


力が抜けた。


「……?」


巨大な身体が。


前へ沈んだ。


踏み込みが崩れる。


大角がセラの横を通り過ぎ、床へ深く突き刺さった。


雷も。


途中で乱れた。


セラの剣は。


首を斬らない。


最初から。


そのつもりで上げていなかった。


剣の腹が角へ触れ。


力を失った角を。


わずかに横へ押した。


ヴァルガルドの巨体が。


そのまま床へ崩れ落ちる。


黄色い瞳が。


ゆっくり。


セラを見る。


「カ……ギ……」


声が。


また途切れ始めている。


「ナゼ……」


セラは。


息を切らしながら。


剣を下ろした。


「何度聞く」


ヴァルガルドの口が。


わずかに動く。


「約束……」


セラの目が。


ほんの少しだけ見開かれた。


それ以上。


言葉は続かなかった。


たてがみを覆っていた雷が。


一つずつ消えていく。



―――



『トーマ!』


ネネの声が響いた。


「聞こえてます!」


『止まった!』


「何が!」


『群れ! 後ろも! ほとんど動けてない!』


《不具合鑑定》。


城外から伸びていた流れ。


弱くなっている。


群れから。


もう。


まともに走れるだけの力を取れない。


「盾守!」


「分かっている!」


「止めます!」


ユーリクも。


すでに解除機構へ移動していた。


右手はほとんど動かない。


左手で右手を支え。


解除棒へ引っかける。


「主系統は私が落とす!」


盾守が反対側へ走る。


「同時に!」


ユーリクが言う。


「三つ数える!」


俺は。


上へ。


一度だけ視線を向けた。


セラ。


持った。


本当に。


持たせた。


「一!」


城外では。


魔物が次々と膝を折る。


「二!」


上では。


ヴァルガルドの雷が消えていく。


「三!」


二つの機構が。


同時に落ちた。


選流環の光が消える。


城護盾バスティオンの主系統も停止する。


城外を覆っていた障壁が。


ゆっくり薄れていく。


灰角王への供給も。


途切れた。



―――



セラは、しばらく倒れたヴァルガルドを見ていた。


勝った。


そういう顔ではなかった。


マレクが駆け寄る。


「セラ!」


「来るなと言っただろう」


「もう終わった!」


「まだ分からん」


そう答えた直後。


右脚が震えた。


セラの身体が傾く。


マレクが腕を取る。


今度は。


振り払わなかった。


「……重い」


「お前が軽くなりすぎてるんだ」


「そうか」


「そうだ」


セラは剣を床へつきながら、もう一度ヴァルガルドを見る。


城主が近づいてきた。


「勝ったのか」


セラは。


しばらく答えなかった。


それから。


小さく首を振る。


「分からん」


「だが、災厄は倒れた」


「私が倒したんじゃない」


その言葉だけ。


妙に。


はっきりしていた。


セラは。


それ以上説明しなかった。


勝ったんじゃない。


時間が来ただけだ。


その言葉を本当に口にするのは、もっと先でいい。


今はただ。


約束を守った。


それだけだった。



―――



地下深く。


俺は、ようやく息を吐いた。


終わった。


そう思った。


でも。


《不具合鑑定》の視界で。


一つの流れだけが。


逆向きに動いた。


「……え?」


群れからの徴収は止まった。


障壁への供給も止めた。


ヴァルガルドへ流れていた補助系統も閉じ始めている。


なのに。


バスティオン内部へすでに取り込まれていた膨大な力が。


消えていない。


さっきまで。


障壁とヴァルガルド。


二つの出口へ流れていた。


その二つを。


ほぼ同時に閉じた。


行き場がない。


後ろから押されていた力が。


中央へ戻る。


「待って」


盾守が振り返る。


「何だ」


俺は。


中枢へ続く流れを見る。


バスティオン中央。


大量の魔力を一時的に受け止める蓄流環。


そこへ。


行き場を失った力が。


一気に押し戻されている。


「まずい」


古い導管が震えた。


一度。


続いて。


もっと大きく。


《不具合鑑定》の視界で、蓄流環の内部へ細い亀裂が走る。


一本。


二本。


そこから破損経路が広がった。


地下水路へ。


城壁へ。


街の基礎へ。


ラグナ全体へ。


盾守の顔から血の気が引く。


「何が見えている」


俺は答えたくなかった。


でも見えている。


「バスティオンが」


喉が乾く。


「今度は、バスティオンそのものが壊れます」


「壊れたら、どうなる」


蓄流環の亀裂がもう一本増えた。


俺はその先を見る。


「ラグナごと」


足元から。


鈍い振動が響いた。


「吹き飛びます」



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