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第十三話 不快な周波数

かつて晋州の中心と呼ばれていた中央洞。

人で賑わっていた通りは、今では昼間でさえ閑散としていて、古びた看板だけが、過ぎ去った時代のざわめきをつなぎ止めていた。

その中央洞の真ん中。

長いあいだ空いたままだった高層ビルの七階が、今日だけは人と機材、照明と声で埋め尽くされていた。

「照明、もう少し左にお願いします!」

「次のカット、準備します!」

「小道具チーム、机の位置をもう一度確認してください!」

慌ただしい声が、セットの中を行き交っていた。

ジヌは控室の片隅に座り、翌日撮影分の台本をめくっていた。

その日の彼の撮影分は、すでに終わっていた。

ただ、相手役の単独撮影がまだ残っていたため、チーム全体が移動するまでは控室で待っていなければならなかった。

スタッフたちは次のセットを整えていて、廊下の向こうからは照明機材を運ぶ音と、監督の短い指示が時折聞こえてきた。

けれど、台本の文字はうまく目に入ってこなかった。

体調がよくなかった。

正確に言えば、この建物に入った瞬間からそうだった。

目には見えない、低く不快な振動が、身体の内側を引っかいていた。

音と呼ぶにはあまりにもかすかで、感情と呼ぶにはあまりにも鋭い。

まるで古い機械が、壁のどこかでずっと回り続けているようだった。

いや。

人には聞こえない周波数が、骨の内側に触れているようだった。

ジヌは台本を閉じた。

だめだ。

どのみち今は、自分がカメラの前に立つ番ではない。

少し外の空気でも吸えば、ましになるかもしれなかった。

彼は帽子を深くかぶり、マスクを上げた。

マネージャーが別のスタッフと話している隙に、ジヌは静かに控室を出た。

廊下はセットよりも静かだった。

だが、あの不快な周波数は、むしろさらに鮮明だった。

壁の内側から。

天井の上から。

床の下から。

何かが、とても低く鳴っていた。

ジヌは眉をひそめたまま、エレベーターの前に立った。

一基しかないエレベーターは、十階で止まっていた。

数字はしばらく動かなかった。

誰かがボタンを押したままにしているのか。

ジヌは腕時計を一度見た。

頭がだんだん重くなっていく。

そのとき。

チン。

しばらくして、エレベーターが七階に到着した。

扉が開いた。

中には数人の男たちが乗っていた。

一人は書類でいっぱいの紙箱を抱えていて、別の一人はノートパソコンとタブレットが入った黒い箱を持っていた。

もう一人の男は、携帯で誰かと短く話していた。

「はい。今、降ります」

声は低かった。

感情を読み取りにくい声だった。

ジヌは彼らを特に気に留めなかった。

引っ越しでもしているのだろう。

あるいは、空いていた事務所の機材を片づけている最中なのかもしれない。

彼がエレベーターの中へ入ると、箱を持っていた男の一人が、わずかに肩をずらした。

その瞬間。

こめかみの内側を、鋭い痛みが引っかいていった。

ジヌは思わず息を呑んだ。

箱の隙間から、黒い外付けハードディスクがいくつか見えた。

ほんの一瞬だった。

彼はそれを、大したことではないと流した。

そのときは、そうだった。

エレベーターの中の空気は息苦しかった。

数字が一つずつ下がるたびに、頭の中で鳴る周波数も、少しずつ荒くなっていった。

六階。

五階。

四階。

ジヌは指先を強く握った。

今日は本当に調子が悪いな。

薬でも買って飲むべきかもしれない。

一階。

扉が開くやいなや、ジヌはほとんど逃げるように外へ出た。

そして、奇妙なことが起きた。

建物の外へ一歩踏み出した瞬間、頭を押しつぶしていた痛みが、嘘のように薄くなった。

少し息がしやすくなった。

不快な周波数も遠のいた。

ジヌはゆっくりと振り返った。

古びた高層ビルは、何事もなかったかのようにそこに立っていた。

この建物に、何かある。

その考えがよぎった瞬間、ジヌはさっきエレベーターの中にいた男たちを思い出した。

書類箱。

ノートパソコン。

タブレット。

黒い外付けハードディスク。

彼は急いで周囲を見回した。

だが、男たちはすでに姿を消していた。

路地の先にも、道路の向こうにも見当たらない。

ジヌはマスクの下で短く息を吐いた。

この感覚を、誰に説明すればいいのだろう。

マネージャーに?

スタッフに?

警察に?

その瞬間、ナラの顔が浮かんだ。

彼女ならわかるだろうか。

この気味の悪い周波数の正体を。

いや。

ジヌはふと思った。

彼女は一体、どうやって耐えているのだろう。

自分は一つの建物から感じるこの小さな不快感だけで、吐き気がして頭が痛くなっている。

けれどナラは、数えきれない人々の感情と残響を、ずっと受け止めていた。

恐怖。

怒り。

悲しみ。

諦め。

言葉にできなかった痛み。

そのすべてを一度に聞くというのは、どんな気分なのだろう。

彼女は何でもない顔をしていた。

けれど、本当に何でもなかったことが、一度でもあったのだろうか。

ジヌはポケットの中の携帯を指先で触った。

連絡してみようか。

唐突すぎるだろうか。

ジュン刑事にでも連絡を……。

彼が一人でいくつもの想定を巡らせていた、そのときだった。

道の向こうで、二人の女性が建物を見上げていた。

ジヌの目が大きくなった。

ハナとナラだった。

まるで、考えていたことがそのまま現実になったように。

「ナラさん!」

ジヌは思わず大きな声で名前を呼んでいた。

手まで上げて振っていた。

道の向こうのハナとナラが、同時に振り返った。

ナラと目が合った。

ジヌはなぜかさらに嬉しくなって、もう一度大きく手を振った。

長身で肩幅の広い体には似合わず、その姿はどこか浮かれた大型犬のようだった。

ハナが小さく笑った。

「あの人、完全に大型犬だね」

ナラが戸惑ったようにハナを見た。

「ハナ」

「いや、見てよ。しっぽがないだけで、完全に振ってるじゃん」

信号が変わると、ジヌが大股で走ってきた。

マスクを下ろした彼の顔には、隠しきれない嬉しさが浮かんでいた。

「お二人がここに? どうされたんですか?」

ハナが先に答えようとして、ナラのほうを見た。

ナラはまだ、建物から視線を離せずにいた。

「この近くで、妙な残響を感じたんです」

ナラが低く言った。

「最初はそのまま通り過ぎようとしたんですけど……どうしても、こっちに引き寄せられて」

ジヌの表情が固まった。

「残響、ですか?」

ハナが腕を組み、建物を見上げた。

「姉さんが急に、中央洞のほうから気持ち悪い感情が流れてくるって言い出したんです。一人で行かせるのも嫌だったので、ついてきました」

ジヌはゆっくりと振り返った。

古びた高層ビル。

彼がたった今、出てきた建物だった。

「僕も感じました」

ナラの視線がジヌへ向いた。

「ジヌさんも?」

ジヌはうなずいた。

「この建物の中で。正確には、七階の撮影現場にいたときから、ずっと聞こえていました」

彼は少し言葉を切った。

「ただ、妙なのは、エレベーターがずっと十階で止まっていたことです」

ハナの目つきが変わった。

「十階?」

「はい。しばらく、まったく動きませんでした」

ジヌは眉間を寄せた。

「それで、エレベーターが降りてきたとき、中にいた人たちが箱を持っていたんです」

「箱?」

「書類の入った箱でした。ノートパソコン、タブレット……黒い外付けハードディスクのようなものも見えました」

ナラの顔が青ざめた。

彼女はもう一度、建物を見上げた。

十階。

明かりの消えた窓が一つ、ひどく黒く見えた。

昼間だというのに、その内側にだけ闇が押し寄せているようだった。

ナラは自分の腕を抱いた。

「音みたいでもあり……感情みたいでもある」

彼女の声が、わずかに震えた。

「でも、人から出ているものじゃない」

ジヌが低く言った。

「建物そのものが鳴っているようでした」

短い沈黙が流れた。

その瞬間、二人は互いが同じものを感じているのだと気づいた。

完全に同じではなかった。

ナラは感情の残響を読んでいた。

ジヌは空間の亀裂と、危険な波動を感じ取っていた。

それでも今、二人が見つめている方向は同じだった。

中央洞の古びた高層ビル。

そして、その建物の十階。

ハナは鋭い目で建物を見つめた。

「あそこを調べよう」

今にも建物の中へ入っていきそうな勢いだった。

だがナラが素早くハナの腕をつかんだ。

「だめ」

「なんで?」

「軽率に動かないで」

ナラの声はきっぱりとしていた。

「ジュン刑事さんが何て言ったか、もう忘れたの?」

ハナは口を閉じた。

ナラが続けた。

「何かあったら、まず報告してから動くように言われたでしょ」

ハナは少し唇を尖らせた。

それでも結局、携帯を取り出した。

「わかった。連絡する」

ジヌはそんなハナとナラを見つめてから、静かに建物へと視線を戻した。

七階には撮影現場がある。

けれど、その上。

十階の窓が一つだけ、異様に暗かった。

空いている階のはずなのに、その内側にだけ違う温度の闇が溜まっているようだった。

しばらくして。

ジュンとの通話を終えたハナが、携帯を下ろした。

彼女の表情は、さっきよりもずっと固くなっていた。

それを見たジヌが尋ねた。

「何かあったんですか?」

ハナは低く言った。

「いい知らせと悪い知らせがあります」

ジヌは迷わず答えた。

「いい知らせからお願いします」

「キム・ドヒョンさんが口を開いたそうです」

ナラの瞳が揺れた。

「ドヒョンさんが……?」

ハナはうなずいた。

「ジュン刑事さんに、重要な手がかりを話したって」

ナラの表情が少し複雑になった。

昨日、面会室で涙を流していたキム・ドヒョンの顔が浮かんだ。

彼が最後まで閉ざしていた扉を、ほんの少し開いたという事実が、なぜか胸を痛ませた。

ジヌが慎重に尋ねた。

「では、悪い知らせは?」

ハナの視線が、再び建物の上へ向いた。

「ジュン刑事さんの話では……今この建物で感じている妙な反応が、ドヒョンさんの話した手がかりとつながっているかもしれないそうです」

ジヌの顔が固まった。

「つながっているかもしれない……」

「まだ確かなことじゃないそうです」

ハナは携帯を握ったまま、建物の十階を見上げた。

「だから、私たちには絶対に先に入るなって。自分が直接来て確認するって言っていました」

短い静寂が流れた。

ナラとジヌは、同時に十階の窓を見上げた。

明かりの消えたガラスの向こうには、何も見えなかった。

けれど奇妙なことに、その闇の奥から誰かがこちらを見下ろしているように感じられた。

ジヌは少し前にエレベーターの中で見た男たちを思い出した。

書類箱。

ノートパソコン。

タブレット。

黒い外付けハードディスク。

そして、長いあいだ十階で止まっていたエレベーター。

そのすべてが、遅れて一本の線でつながっていく。

ハナが低く呟いた。

「偶然じゃないね」

ナラが小さく答えた。

「うん」

ジヌの耳の奥で、低く不快な周波数が再び鳴った。

先ほどより、さらに鮮明だった。

まるで警告のように。

まるで誰かが、わざと残していった痕跡のように。

しばらくして。

遠くからサイレンの音が近づいてきた。

ジュンだった。

ハナは携帯を握る手に力を込めた。

「これからは、一人で動かないようにしよう」

ナラが静かに答えた。

「うん」

ジヌはそれでも、建物から目を離せなかった。

古びた高層ビルは、何事もなかったかのようにそこに立っていた。

けれどジヌは確信した。

あの十階には、まだ何かが残っている。

晋州で起きたことは、まだ終わっていなかった。



著:ジンファ・ジンギョン

(姉妹による共著)


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