神さま、諭される。
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執筆の糧になります。
誤字報告も、いつもありがとうございます!
至らぬ作者で申し訳ないです(;°ロ°)
この程度の弱い付与なら、渡しても良いだろう。
そうカノンと判断した装備品をトシキにあげた。
俺が付与の練習をした失敗作は、靴や服も含めて結構な数が四次元ポシェットに眠っている。
予備として持って来た物だが、俺もカノンも、今の実力で作れる最高のものを装備している。
なので基本的に使わないし、宝……と言うほどの物ではないが、持ち腐れてしまうのは勿体ない。
ならば有効活用してくれる人に渡した方が、道具も喜ぶというものだ。
それ以上にカノンに手渡されたトシキが、小躍りでもし出すんじゃないかと思うくらいに喜んでいたが。
薄着でも暖かそうにしている彼を見て、他の四人が「良いな」「ズルい」と盛り上がっていた。
羨むのは分かるが、姑息な手段を取って俺達から奪ったワケでもないのに、ズルいとはどういう事だ?
‘’狡い‘’という言葉は、俺が知らない別の意味を持つようになったのだろうか。
まぁ、そういう事もあるだろう。
なにせココは、異世界なのだから。
カノンの案内でオッサン五人組と合流したら、青年五人組はオッサン達からこっぴどく叱られた。
今日のような天気に湿度、また魔物の痕跡によっては湖の上で狩りをするのは非常に危険だと、常日頃から口頭で注意をしていたのに、人の忠告も聞かずに飛び出した事。
自分達で対処せずに赤の他人を巻き込んだ事。
更にはそんな手酷い目に遭いながら、一匹も魔物を仕留めずにボウズでスゴスゴと帰って来た事。
何もかもがオッサン達には許せないようだ。
単に転んで痛い目を見ただけで、何の成果も獲られないのはダメって、厳しいな。
命あっての物種とは思わないのか。
オッサン達は大口を叩くだけあって、小型ながら海牛鰭を仕留め、既に解体をしていた。
あまり陸地には上がって来ない魔物なのだが、今日みたいな暖かい日には、地表の氷が薄くなった部分をその強靭なアゴで砕いて、コケや植物を食べる姿が目撃される。
ヒレは団扇のように丸みを帯びた形をしていて、食べる部分は殆ど無く、皮と骨ばかりだが、そのヒレの骨の特性を船に付与する事で、推進力が上がるそうだ。
ソレを知らないオッサン達は、ヒレを全部棄てていた。
勿体ない。
皮は弾力性があり非常に頑丈なため、様々な物に加工して使えるからか、とても丁寧に剥いでいる。
保温性にも優れているから、優秀な狩人の長靴は優先的に海牛鰭の皮を使わせて貰えるのだと、ハジメが説明してくれた。
もちろん仕留めたチームの人間が望めば、使用権利はそのチームのものになる。
とは言え、海牛鰭は幼体でも三m近くある巨体だ。
その皮となれば、相当な量になる。
五人でも使い切る事は早々無い。
また海牛鰭は普段水深の深い所にいる事が多いため、水圧に耐えられるようにだろう。
骨が分厚く硬い。
ダイキとタカノリの槍や、他の三人が持っている弓の鏃にも、使われているそうだ。
トシキの弓は一式、全て湖底に沈んでしまったが。
武器も四次元ポシェットの中に幾つも入っているが、流石にヘタこいたヤツに施しを与え過ぎたら、それこそ不公平でズルい状況と言える。
命と尊厳に関わる服ならともかく、武器に関しては無くても生きていける物だし、後から自力で調達しても遅くない。
村まで戻る道中に魔物と遭遇しても、他のメンバーに守って貰えるし、何なら俺達が幾らでも対処する。
甘やかし過ぎてはトシキのためにならないし、武器の提供はしないでおこう。
まぁ、村に判断を委ねて、幾つか村長に渡すくらいならするけれど。
オプスクリス開拓村にも、「スキル」で創った物を含めれば相当な数の日用雑貨から武器防具まで置いてきたし。
ラクサリス村にも同等の道具は置いていくつもりだ。
今回トシキに譲った装備品は含まない。
アレはただ俺のマントを返して欲しかったってだけだし。
その返却をされる前に、交代交代でマントの試着をした青年達が付与に興味を持ってくれた。
時間が捻出出来れば教えてやるつもりだし、その時にお手本として多めに提供するのは、やぶさかではない。
もちろんいつも通り、精霊術や基礎学力向上のための教科書も配布するよ。
オッサン達は青年達にも手伝わせて、急いで魔物の解体をしていた。
しかし切った先から凍ってしまうため、結局途中でナイフの刃が通らなくなってしまった。
幼体の海牛鰭だったので、その分血液の量も少ないし、皮や脂肪も薄い。
冷気によって深部まですぐに冷えてしまったのだ。
仕方が無いことではあるが、青年達の興味がただの好奇心に留まらず、学ぶ意欲を向上させるために、付与したアイテムの有用性を示しておくのも良いだろう。
トシキは裸マントで嫌でも身に染みただろうけれど。
やはり着ると寒くない、程度の快適さだけではなく、生活に密接した狩りの現場で体験して貰う方が、より付与の魅力を伝えられると思うんだ。
「ハジメ、お前に渡したナイフはどこにやった?」
「ナイフ……?
あ!あれか。
返すの忘れてました、すみません」
言ってナイフホルスターから、布で包んだ小さなナイフを取り出した。
刺突に優れた使い勝手の良い、俺がよく「スキル」で使うものだ。
棒手裏剣とナイフの間のような形状をしている。
ナイフと言われてもピンと来なかったのも仕方がない。
どちらかと言うと、平べったい釘みたいに見えるから、大きい釘って言った方が通じたかも。
「オッサン、その魔物、もう要らないなら試したい事があるんだけど」
「別にいいが……」
「んじゃ青年達、付与の説明をするからおいで」
手招きをすれば、指名した青年だけではなく、オッサン達も集まってきた。
オッサンは剥ぎ取った素材と肉の荷造りしろよ。
カノンは俺が過不足なく説明出来るかを監視するつもりなのだろう。
真面目な視線で見詰められてしまった。
ガラにもなく緊張するから辞めれ。
「そんな熱い眼差しで見ないでよ」とかシナを作って言ったら、苦虫を噛み潰したような顔をして一歩離れた。
コレで良し。
「付与っていうのは簡単に言うと、魔物の性質を道具に移植する事だと考えて貰えば良い。
泳ぎが得意な海牛鰭なら、そのヒレに宿っている力を船や船を漕ぐオール……櫂って言った方が通りが良いか?
まぁ、水を渡る道具に付与をすると、沈まないとか、進むのが早くなるとか、そういう特性が付与をした道具に継承される。
道具や武器の素材、魔物によって相性の善し悪しや性能にが出るから、ソレは要研究とされている」
今欲しいのは、ナイフの切れ味向上だ。
熱を通して良いものなら、氷を溶かす事が出来るのでソレも欲しい所だが、複数の付与をするとなると、時間が掛かるので今回は無しだ。
妖蟷螂の鎌と魔爪鷹の爪が、切れ味向上の効果を持つ。
オッサン達が凍えるといけないので、片方はカノンに手伝わせて付与して貰う。
妖蟷螂と魔爪鷹では、後者の方が魔物としては強い。
なので鋭さも魔爪鷹の方が増すはずだ。
効能を素材から移植する際に込める霊力量で、多少誤差は生じる。
だけど込める霊力は必要最低限でとクギを刺されているので、俺が付与した 妖蟷螂は切れ味が五から一〇に上がった程度で留まっているハズだ。
カノンの方は、二五くらいまで跳ね上がっているだろう。
元の切れ味も確かめて貰った上で、それぞれの力を付与したナイフの性能がどれだけ上がったのかを体感して貰った。
すると歓声が上がる、上がる。
オッサンなんかは笑いながら凍った肉を切っている。
ちょっと絵面が怖い。
俺もカノンに付与を教えて貰った時、心の中でスタンディングオベーションしまくってたから、青年達の気持ちがよく分かる。
物としては変わらないのに、訳の分からん技術によって性能が増すとか、意味不明だよね。
科学的に証明出来ない事が山程あるこの世界の謎に触れる時って、滅茶苦茶テンション上がるんだよな。
知識欲が満たされるせいなのかな?
知らない事を知った時って、脳汁がドバドバ出る感じがする。
恐らく、ラクサリス村の面々も同じなのだろう。
オプリタス大陸の人々は、精霊術が使えない。
なのでどちらかと言うと地球人の科学知識に頼り、日々の生活の中で得た知恵によって生きて来た。
そのため精霊に馴染みが全く無い。
だからこの世界に来てすぐの俺と、同じようなリアクションをしてくれる。
あ、カノンってあの時こんな感じで俺の事見てたんだ〜と追体験が出来るのだ。
初めて見るオモチャを与えられた幼子を見るような、ちょっと微笑ましい気持ち。
無知な人に教えて素直な感想を貰えるのって楽しいね!
「ねっ!!?」
「否定はしないが……
お前、俺に教える時は、そんな純粋に楽しんでいないよな?」
ソレはカノンに勝てる項目が少ないからだよ。
たまに稀にある、カノンを言い負かせられる機会が訪れると、ついニヨリとほくそ笑みたくなる。
ソレを必死に堪えているのが表面に漏れ出てしまっているせいだと思うよ。
施設のマザーコンピューターにアクセス出来る「知識」とか、皆から奪ったものを含めた「スキル」の数々って、純粋な俺の実力によって身に付けたものじゃないから、あまり自慢する類のものじゃないじゃない。
人からの借りものだったり、強奪したものだもの。
せっかくあるものだから、有効活用はするよ。
そしてそういうジャンルのものは、奪われた人達の手向けのためにも、惜しみなく他人のために使わせて貰う。
そのために奪ったものだし。
数ある「スキル」が特にそうだが、俺が自分の生まれ持った能力の範囲内で、俺が努力した結果によって得た知識や技能では無い。
だから他人のために使うのは、当然の事だ。
もしそうなら、胸を張って威張りも出来るのだけどね。
その数少ない俺の手持ちのカードで、カノンに勝てる事なんて殆ど無いんだもの。
たまに勝てた時に、つい口角が上がってしまうのは、仕方が無いことじゃない?
「そういう風に、無理矢理区別をしなくてもいいと思うがな。
つまりお前は今、精霊様方の前世とのいざこざにおいて得た能力を、自分のものではないとしているのだろう?
お前が努力して得た技術は、もちろん尊いものだ。
だがそれ以外の力に関しては、心に傷を負ったり、友人を亡くしたりした結果手にしたものだろう?
何かを得るためには、労力や金銭、時間や人間関係……様々なものを失わねばならない。
その真理は分かっているだろう?
力を得るための代償は、既に払っている。
ならば区別を付ける必要は、無いと思うのだが?
せっかく才能があり、努力もし、時間を費やし、行動を起こすために必要な手段を手に入れたのだ。
使うことに躊躇う必要はない。
しょせんスキルも精霊術も、何か行動を起こすための手段のひとつに過ぎない。
使う人間の匙加減一つで、善用も悪用も出来る。
そしてお前は、悪用をするような奴ではない。
何より精霊様方は皆、お前を憎んだり嫌ったりしていない。
恨んでもいないだろう。
なら、何の問題もあるまい。
あとはお前の心次第だ」
「自分が見下されるのが嫌だから、何か適当にソレっぽい事言ってない?」
「俺は確かに負けず嫌いではあるが……無意味な行為はしない。
お前と比較して、自分を卑下したり、お前に憤ったりするような、時間も心も無駄にするような事はせん。
……お前は、そうやって茶化して本心を隠そうとする癖を、まず辞めろ」
う”。
煙に巻こうとしたのがバレた。
なんだよぅ、突然賢者様っぽい事言いやがって。
説法を始めるなら、錫杖めいた杖を出して、転法輪院のポーズを取れよぅ。
だけどカノンの言う才能って部分すら作られたものだし、努力と言われてもやらなきゃ折檻が待ってたから否応なしにしなければならなかっただけの話なんだよね。
時間は確かに相応に費やしたけれど、「知識」という外付けハードディスクのお陰で記憶力の底上げがされたからどうにかなっていた部分が大きいところもある。
皆が気にするなって言っているのだから、気にしなくて良いのだろうと、思いもするのだけれど……
まだ、踏ん切りは完全には付かないなぁ。
何度か「今度こそ割り切るぞ!」と決意はしたが、その度に固まりきらず、こうやって思い出したようにウジウジしてしまう。
浅葱や 紅曜なんかは、直接今の環境に感謝をしていると言われているから、ある程度開き直れた部分もあるのだけれど。
他の皆は、俺がガキで大人に逆らえない状況にあった被害者だから、歳上として気遣ってくれているだけなんじゃないかと考えてしまうんだよね。
嘘は吐けずとも、ボカして本心を隠す事は出来るのだし。
……なんか、精神状態が安定しないな。
この大陸に上陸してから、太陽光に当たっていないせいだろうか。
こんなネガティブな思考はいかんな。
両頬を叩いても気分は晴れないままだが、励ましてくれたカノンに、お礼だけは言っておいた。




