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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを無双する。  作者: 可燃物


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神さま、相談する。


氷の精霊(スティーリア)はよく寝る精霊だなぁ、なんて思ってしまうが、人間も成長過程における睡眠は重要な役割を持つ。


だから精霊となってまだ日が経っていない彼女が沢山寝るのは、ある意味当然の事なのかもしれない。


精霊の赤ん坊だもんね。



イヤ、大人になって以降も、睡眠はとても大切だ。


心と身体両方の健康に密接しているのだから。



特に脳の健康を維持するのに、睡眠程大切なものはないと言っても過言ではない。



脳脊髄液が脳の老廃物を洗い流すのに最も適している時間が、寝ている時間になる。


アルツハイマー型認知症の原因と言われている物質を除去してくれるのも、この時間だ。



記憶の定着や整理をする時間も、眠っている時になる。


不眠症の人は老化が早いそうだし、代謝にも関わっているのだろう。



やはり睡眠は偉大だ。

そして生きるにあたって最も重要な項目だ。



もちろん、適度な運動も大切だ。


筋肉が衰え寝たきりになろうものなら、生活の質は一気に下がる。


その上様々な病気のリスクを下げてくれるのだから。


うん、運動も大事だな。



食事も肉体を構成する栄養素を補う行為として、また幸福を感じる手っ取り早い方法として重要だ。


ソレはこの世界に来て、様々な料理を食べて痛感している。


食って生きる意味になるよね。



……結局は全体のバランスが良いのが一番って事か。






「次に向かうラクサリス村って、あとどのくらいかかるんだ?」


「オプスクリスから半日程北に進んだ、氷湖の近くと聞いている。

 だがそれは地下を通っての時間だからな。

 今晩は野宿になる」


神依で飛び続ける事が出来たのなら、あっという間に着いただろうに。



そう文句を言いたくなるが、神依は会得するのに修練と相応の時間が必要になる。



最初よりは全然マシになっているが、それでもまだまだ長時間安定して合体は出来ないようだ。


風が強いから流されないように飛ぶとなると、かなりの集中力を要するだろうし、仕方がないか。



しかし野宿となると、どの辺が良いか迷うな。



冒険者の支援も兼ねて、また文化の発展のため人の往来を増やしたいからと、今まで野宿をする時は、余程人里離れた場所や森の中でする時以外は、街道沿いに小屋を設置してきていた。



しかしオプリタス大陸は、年中気温が氷点下で一面永久凍土に覆われているため、街道がない。



イヤ、この寒さに適応した植物が生えている活動層も一応、あるにはある。


なのでヒトが歩いてさえいれば、もしくは魔物が地上で生活していれば、獣道くらいは形成されただろう。



だが瑞基達は地下道を掘って、村と村を繋いでいた。


そして魔物の大半は、海中の方が暖かいため一日の大半を水の中で過ごしている。



地上を行き来するヒトは、何年かに一度程度、冒険者のような別大陸から訪れた、外部の者となる。



そういう人達は我が道を行くので、街道が敷いていなければ好きなように移動する。


魔物を追ってとか、なんとなく気分でとか。



そのためデザイア・パスのように、多数のヒトが通行する事により侵食され、自然に形成されていく歩道すら存在しない。



ヒトもモノも、地上を通って行き来しないのだから、当然、街道なんて整備されるはずもない。



せめて魔物が出やすい所に避難所的な役割で作るとか、この土地特有の薬草が多数生息している場所の近くに作るとかすれば、建て損にはなりにくいだろう。



なる可能性も、否定は出来ない。

もしそうなったら、ちょっと悲しい。



だからと言って、吹雪の中外で野宿なんてしたくないから、建てるけどね。






この土地に適した作りにしようとすれば、どうしても一般的な家の形からは遠ざかる。



イグルーのような圧雪を使った家なら、他の土地でも似たような物が見られるだろうし、通りすがりの冒険者にも家と判断して貰えるだろう。


カマクラや雪洞は、雪が深い地域でなら、多少の差はあれど世界中で作られていたくらいだし。



だがアレは一時的に使用するシェルターみたいなもの。


年単位で保たせるには、強度が足りない。



だからと言って、新オプスクリス開拓村の地上部に創ったトレーラーハウスみたいにしたら、「なんだ?このデッカイ箱??」とスルーされそうだ。



永久凍土を溶かしてしまうと、地盤沈下を起こして上に建てた家が傾いてしまう恐れがある。


寒い思いをしてやっと見つけた休憩所で、暖炉を使うななんて言えないからね。



高床式にするのは当然として、断熱材増し増しで窓を小さくすれば良いかな。



……あぁ、以前訪れたオンドル町の建物を参考にすれば良いのか。

あそこも雪深い場所だった。



大きな暖炉の熱を、配管を通して床下に巡らせて、床暖房みたいにしていたんだよな。


しかしレンガや木材だと氷食や凍害の恐れがあるから、金属の壁材は必須だよな。



「湖の近くに建てるのか?」


「イヤ、湖から海に向けて、川も流れていた形跡があるだろ?

 砂州(さす)が凍っているだけの地面だと家を設置するための杭が打てないから、少し距離があった方がいいかな」



この土地がどれだけの期間凍っているのか、湖や川が凍り付いてどれだけの時間が経過しているかは知らないが、ツンドラ気候の北極圏内に位置したアラスカ最北端の都市ウトキアグヴィクでは、沿岸流によって運ばれた砂が堆積して、砂嘴や砂州が形成されていた。


ヒトが歩くくらいなら問題ない強度はあるが、砂や礫の堆積地形だからな。


その上に家を建てるなんて、とんでもない。



砂浜の上に家を建てる例が無いワケではないが、暴風雪吹き荒れるような土地ではオススメ出来ない。


定期的に訪れてメンテナンスをするのも面倒だし。



とにかく風が吹いているため、雪がべらぼう積もる事は無い。

……と言いたい所だが、ソレはオプリタス大陸のお隣が、颯茉(そうま)が守護するニンブス大陸だから、その影響を受けているだけだ。



氷の精霊(スティーリア)の楔を打ったので、今後は風の精霊(ウェントス)達の力よりも、氷の精霊(スティーリア)の影響が強く出る可能性がある。


それが雪という形になるのか、更に寒くなるのか……どんな形で影響が出るかが判断がつかない。



そのため今の気候がいつ、どんな風に変化するのかは全くの未知数だ。


なのでアレコレ考えても仕方がない。



屋根は一応傾斜を鋭くして、雪の重みで家が潰れないようにしておくか。


高気密・高断熱仕様で、窓は二重サッシだから冷気の侵入も最小限で済む。



最低限、寒さ対策だけシッカリしておけばどうにかなるだろう。

多分。






「相変わらず、見事なものだな」


暖炉の紋様具に霊力を込めると、すぐに暖気が部屋中を温めてくれる。



いくら装備品で寒くなりにくいようにしていても、長時間吹雪の視界不良の中歩き続けたので、気が張っていたのだろう。


炎の揺らめきに安堵したカノンが、珍しく素直な褒め言葉を零した。



ふふん、そうだろ、そうだろ。

もっと褒め讃えてくれても良いのだぞ。



「風呂はどうする?

 普通の冒険者にこの土地でお湯張れ、シャワー出せって言ってもムリ、だよな」


「水と火、相反する二つの属性の術を使える奴は、そうそういないな」


「更にソコに風の精霊(ウェントス)の力も使えないと、湯冷めして風邪ひいて肺炎になってお陀仏コースまっしぐらだもんね。

 んじゃトイレに排水口だけ創って、あとは台所かな」



紋様具は霊力を注げば使える便利な道具だが、全く適正のない属性の紋様具を使おうとすると、霊力の消費量がハンパない。


俺やカノン並の霊力の持ち主はそうそういないし、カノンが言ったように、相反する属性の両方に適性がある人は少ない。



今まで街道に設置して来た小屋には、風呂なりシャワーなりの設備を付けていたけれど、ココで火の精霊(イグニス)の適性が全く無いヒトに水風呂や冷水シャワーを浴びさせたら、死人が出かねない。



紋様具を使わなくても、瑞基から教わった氷を濾過して飲料水にする機構を蛇口に組み込んである。


屋外に氷や雪を貯蔵するタンクも設置したので水、自体は霊力を通さなくても蛇口を捻れば出るのだ。


必要なら各自でお湯を沸かして使ってくれれば良いと思う。



角骸鯨(ポーコゥル)の毛皮を四次元ポシェットから取り出して、カノンに渡す。

身体を休ませたいだろうからね。


雑魚寝スペースに敷いて貰えば、お布団を敷かなくても地面に尻を冷やさずに座れる。



座布団は盗られるし、ソファは居着かれる可能性があるので設置をしない事にした。


お布団は持ち歩けるような物じゃないから、一応何組か創って置いておく。



カノンは布団は寝るための物、と考えているので、寝る直前まで敷きたがらないんだよね。



まぁ、ご飯を布団に零したら悲惨だから、確かに今敷くのは時期尚早というものだ。



ただ燼霊(じんれい)を相手に戦って、瑞基と別れて氷の精霊(スティーリア)の楔を打って、その足で歩いて今に至る。


今日一日でこなした作業が多過ぎる。


疲れてて当然だ。



敷いてもご飯の時にまた退かせば良いのだし、敷いてくれても一向に構わないのだが。



「寝て待つならソレでも良いぞ」


「いや、道中採集した苔や薬草の成分を調べて待つ」



ホント薬草作りが趣味な人だね。


呆れてしまうが、世のためヒトのためになる趣味だ。



咎める理由もないし、俺は琥珀(こはく)と夕飯作りだね。






熱い鍋をつつきながら話をするのも良いが、カノンに聞かれたくない話題かもしれないし、今のうちに聞いてしまおう。



「瑞基と何を話したかって、聞いても大丈夫?」


『――ああ、あの時は気を遣ってくれて、ありがとう。

 ……大半は、君の話だよ』


「せっかく水入らずの時間を作ったのに、何してんの??」



王都(ディルクルム)から四次元ポシェットに入れて持って来た白菜の根元を、存外大きな音を立てて切り落としてしまった。


そのせいでカノンからケガはないか確認されてしまった。

モーマンタイです。



『――ハクサイは葉と茎に分けてV字に切ってね。

 火の通り方が違うから。

 葉は食べやすい大きさにザク切りで。

 茎は包丁を寝かせて削ぎ切りにすると、スープの旨味が染み込みやすくなるよ』



丁寧に教えてくれるのは良いけれど、話を逸らそうとしているのがバレバレである。


まぁ、話したくないなら良いけどね。



有意義な時間を過ごせたのは、二人の表情で分かり切ってるし。


ただ……



「親子の会話って、した事がないからさ。

 参考にさせて貰いたかっただけだよ」


『――光の精霊(ルーメン)にお願いしたら?』


稜霓(ろうげつ)かぁ……

 母親とする話と父親とする話って、ジャンルが違うもんなんじゃないの???」


『――それは……そうだね』



叩いてミンチにした妖鶏(シュケイ)の肉でツミレを作りながら、琥珀(こはく)が肯定をした。


だよね。



それこそ、瑞基が氷の精霊(スティーリア)と俺の話をしようもんなら、再び燼霊(じんれい)化しそうじゃない。


「旦那だけじゃ飽き足らず、娘まで誑かしおって!」と氷漬けにされそうで怖い。



そうじゃなくても、男親と女親では、子供が求める役割が違うと言われている。



女性の方が共感性に優れているから、母親に対しては悩みや愚痴に近い心の相談事をされる傾向にある。


父親は心に寄り添うことが不得手なため、客観的にどうすれば問題が解決出来るのか、その糸口を見つけるための具体案を提示して欲しい時に悩みを相談される。



もちろん人によって、親子関係によって違うし、何より信頼されてるか否かで対話の内容は変わるだろう。


しかし子どもがそれぞれの親に求める役割は、全く別方向に向く傾向にあるらしい。



いまいち、ピンと来ないけどね。


俺が二人と親子として接した時間なんて、皆無なんだもの。



しかしコレから向かうのは、闇の精霊(テネブラエ)がいるギンヌンガの裂け目である。



道中まだ幾つかの村に立ち寄るつもりだし、その時が来るのは随分先の話だろう。



しかし話題を何か見繕っておかなければ、いざ何か話そうとしても、全く何も喋らずに終わるか、罵るかしか出来ない気がするんだよな。



もしくは向こうが「大見得切って暴走したクセに地球滅ぼしてやんの、ザマァ」とか言って語尾に草生やして来たら、また殺し合いになるかもしれない。


お互いやるべき事があるのに、ソレはダメだろう。



『――私は闇の精霊(テネブラエ)とはあまり面識が無いけれど、元帥殿とは何度か言葉を交わしている。

 その上で言うのなら……君が地球であの御方にされた事を赦す必要はないけれど……あの人は、哀れな方だから。

 全くの初対面の人と接するつもりでいたほうが、多分、混乱しなくて済む』


「どゆこと?????」


『――先入観は捨てるべきってこと。

 さ、つみれに火が通ったから、茎入れて』



結局琥珀(こはく)が何を言いたいのか、よく分からないまま夕飯になり、明日も早く行動すべきだからと、早々に布団に入る事となった。



モヤモヤは残っているが、疲れていたのもあり、布団が自分の体温で温まる前に、眠りに落ちた。


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