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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを無双する。  作者: 可燃物


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神さま、凍える。


俺の話を真面目に聞こうとしない、やる気のない氷の精霊(スティーリア)から俺を取り上げた琥珀(こはく)が、彼女に向き合い釘をさした。



『――よろしくね』


『――はぁい、頑張りますぅ』


語尾にハートが乱舞している気がする。



琥珀(こはく)に声を掛けられた氷の精霊(スティーリア)は、破顔一笑という言葉に相応しい微笑みを浮かべた。



すぐに一定の距離を取った上、向けられたのは貼り付けたような笑顔なのに、顔を合わせられるだけでそんなにも嬉しいのか。


俺に対する態度と余りにも違い過ぎる。



イヤ、ゴキブリの如く毛嫌いされていたから、同じような態度を取られたら、ソレはソレで気持ち悪いけれど。






「どうする?

 核を作って楔を打ち込むだけでも、結構負担が来るらしいけど……名付けも済ましちゃう?

 力が増せば、その分早く好きに色々出来るようになるよ」


『――なぁにを企んでるのぉ?』


別に企んでなんかいない。


単に精霊が眠りについたり、神格が上がったりすると、その周辺の霊力のバランスが乱れて天変地異が起こりやすくなると聞いているから、その不安を取り除きたいだけだ。



オプスクリス開拓村が撤退した今なら、何も無いこの土地にヒトが訪れる心配をしなくて良い。


氷が割れようと氷山が出来ようと、ダイヤモンドダストが吹き荒れる摂氏マイナス二七三.一五度の絶対零度の世界になっても誰も困らない。



それだけだ。



『――ふぅん……

 ま、どぉせアンタが琥珀(こはく)様を連れてっちゃうんだしぃ、それでいいわよぉ』



琥珀(こはく)にバックハグで抱きかかえられている俺をベリッと奪い取った氷の精霊(スティーリア)は、俺に向かって半透明の右手を差し出す。


「盗られる心配したくないから、手のひらは下に向けろ」



チッとひとつ舌打ちをして、渋々差し出した手をクルリと半回転させ、下に向けた。


マジで盗もうとしていたのか、コイツ?

油断も隙もないな。



この期に及んで盗みを働こうと言うのなら、核として設定し終えるその時まで、気を許してはいけない。



甲を向けて差し出された手に触れるように、俺は自分の手のひらの上にノートを乗せ、差し出す。

そして近付いて来た氷の精霊(スティーリア)の手を、逆の手でガッチリホールドして、ノートの上に押し付けた。



『――あとちょっとだったのにぃ!』


やっぱりまだ盗む気満々だったのか!?


コレ以外核に出来そうな物は無いと言うのに!!


精霊としての自覚がマジで欠如してんな、コイツ!!!



琥珀(こはく)

 核や楔って俺主体でも指定して打ち込めるのか!!?」


この期に及んでバタバタと抵抗する氷の精霊(スティーリア)を無理矢理押さえ込みながら問えば、ヤレヤレと溜息を吐きながら、補助をしてくれた。



それでも琥珀(こはく)は徹底して氷の精霊(スティーリア)の身体には触れない。


お前等が夫婦だったとか、何の冗談だよと言ってやりたい。



霊力を込めると、淡い紺色の光が手の甲に浮かび上がる。


縦に棒が一本。

氷を意味するルーン文字イスだろう。


すぐにノートはスッと氷の精霊(スティーリア)の体内に溶けるように吸い込まれ、俺の手の甲の文字が消える。

そして今度は、淡い紺色の光が彼女の身体を包んだ。



なんか浅葱(あさぎ) 紅曜(こうよう)の時と違って、順番が滅茶苦茶な気もするけれど、コレで核の指定も出来たし、楔も打ち込めたのだろう。


無事に終わって良かった。


ドッと疲れたよ。






『――氷の精霊(スティーリア)、この子の手を煩わせないで』


『――……はぁい……』



ホント、琥珀(こはく)相手だと殊勝な態度を取りやがる。


分かり易過ぎて、こりゃもう琥珀(こはく)を通して命令するしかなくなってしまうな。



クククと内心ほくそ笑んだのも束の間。



無事に氷の精霊(スティーリア)の核を決定し、楔を打ち込めたのだし、さぁ、では名付けようとした途端、氷の精霊(スティーリア)を包み込むように、氷の華が咲き乱れた!



わぁ、キレイ。


……なんて見とれているヒマなんて無かった。



氷の精霊(スティーリア)から少し距離のあったカノンが、いち早く彼女の様子の変化に気付き、対応してくれた。



精霊術の究極系とも言える、精霊そのものと一体化する‘’神依‘’を颯茉(そうま)と行い、氷に呑まれそうになった俺を瞬時に掻っ攫ってくれたのだ。



ボディーブローを決められたみたいに、肺から一気に空気が抜けて潰れたカエルみたいな声が漏れ出た。


我ながら無様である。



琥珀(こはく)は瞬時に肉体をOFFの状態にしたんだな。


難を逃れ精霊の姿になって、カノンの横を飛んでいる。



「グぇ……ありがとう」


「咄嗟のことだったから、加減ができなかった。

 済まん」


「イヤ、あのまま氷像になるより万倍マシ。

 ……何、アレ?」



氷で出来た華は、その花弁を散らし氷の礫となって周囲に飛び散る。

そこからまた茎が伸び華が咲き、花粉のように氷の粒が舞って、周囲をみるみるうちに凍てつかせていく。



あっという間に半径一〇m程が、氷で出来た花籠みたいになっている。



遠くで見る分にはキレイだけど、あの花びらや花粉に触れた途端、雪すら飲み込んで氷結させていくんだもの。


近付いたら一瞬で内臓まで凍りそうだ。

絶対近付きたくない。



水の精霊(アクア)様や火の精霊(イグニス)様の時は……無かったのか。

 楔を打つ時に、霊力が不安定になると言っただろう?

 父と母が行った時も、天変地異が起きて大変だったと聞いている」



話は聞いていたけれど、こんな急速に被害が拡大するとか聞いてない。



何?


浅葱(あさぎ)の時とか、何十mの津波が周囲を襲ったの??

紅曜(こうよう)の時なんかは、世界中の火山が爆発したとか???



このままセリアと会った森を飲み込むのは確定だが、勢いが衰えなかった場合、最悪、瑞基達がいる村まで届いてしまうんじゃなかろうか。


人々を幸せにするのが天命の精霊様が、出来たてホヤホヤの明るい未来を夢見る集落を滅ぼしてどうするのだ!?






『――君の憂いを晴らしたいのだけれど、力を貰っても?』


「どんだけでも持ってって」



了承の言葉と共に、覚悟していた以上の大量の霊力が一気に持っていかれて、思わず脱力しそうになる。


……ガチで遠慮なく持っていかれた。


クラッと貧血のような目眩を覚えたぞ。



つまりそれだけの霊力を使用しないと、アレの対処は出来ないのか。



琥珀(こはく)が手をかざすと、氷河による侵食でも起こったかのように、氷の精霊(スティーリア)がいた場所がU字に沈んでいく。


それと同時にその周囲の土地がせり上がり、森が分断され、あっという間に立派な渓谷が誕生した。



羊背岩のように凹凸の激しい岩が連なっている様子が散見されるし、長年繰り返された氷食により形成されたように見える。


まさかコレがヒトの手によるものとは、誰も思うまい。



イヤ、精霊がやったのだから、自然現象とみなせば良いのか?



『――谷底から氷が這い上がって来たら、更に深く落とすか、山を険しくするかするね。

 あとは手当り次第なんでも凍らせてしまうみたいだから、力を分散させるために、木も追加で生やしておこうか』



植樹した森の様子を早送り再生しているみたいに、瞬きをする余裕すら与えず、あっという間に木々が成長し、立派な森が形成されてしまった。


空からでは、地面が一切見えなくなってる。



おぉう、地精霊神様ってスゴ〜い。



燼霊(じんれい)である氷の精霊(スティーリア)は、魔力の扱いにも長けている。


そのため精霊でも対処の難しい変異 粉媒楢(クォルクス)の処理を任せようと丸投げしたのだが、今成長させた木々には、琥珀(こはく)の霊力が多分に含まれている。


コレなら氷の精霊(スティーリア)一人に負担をかけずに済むそうだ。



おぉ、なんか琥珀(こはく)がやけに氷の精霊(スティーリア)に優しいぞ。



……アレか。


彼にとっての黒歴史である閻魔帳(愚痴ノート)を処分した功績を評価しての行動か。


彼女の核にした事で氷の精霊(スティーリア)の体内に吸収されてしまったため、読めなくなってしまったからな。



一応氷の精霊(スティーリア)の霊力の暴走が収まれば、核を本体として、行動する分体と切り離す事が可能になる。


本体を人目につかない所に隠しておけば、分体が消滅してしまったとしても、復活出来るからね。

基本的に本体は切り離す。



そのタイミングで読ませて貰う事も出来たのだろうけれど……

もう、無理だな。



見事に土砂で埋められてしまったので、何処にあるのか検討も付かない。


地形もだいぶ変わってしまったし、探すとなるとかなりの手間になるだろう。



そして氷の精霊(スティーリア)からしてみれば、琥珀(こはく)が手ずから本体を隠してくれた状況だ。


掘り返そうとしたら、確実に邪魔をして来る。



被害が村に及ばないように、という理由も事実あるのだろうが、メインは愚痴ノートの処分が目的だったか。



ちぇっ、複製しておけば良かった。


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