神さま、推測する。
ご覧いただきありがとうございます。
誤字報告ありがとうございました!
変なミスが最近多すぎですね……
なぜ気付かない??(˙꒳˙ )??
燼霊が村長の肉体を乗っ取ったのは、オプスクリス開拓村に引っ越しをしてから、何年か経過した後だった。
約五〇年程前になるのかな。
破壊衝動の塊のような彼等は、何かを壊さずにはいられない性質がある。
目の前にあるものに留まらず、わざわざ積極的に移動して壊して周るのだから、欲求というよりは、本能に近いのかもしれない。
なのにも関わらず、燼霊がすぐに村を滅ぼさなかった理由が、実はある。
その生理現象に抗う程の理由は、琥珀だ。
イヤ、まぁ、本能に背いた行動を取った、と断言はし難いんだよな。
セリアが言っていた通り、俺も含めて何人もレイプやその未遂、またセクハラの餌食になっているからね。
魂の殺人や尊厳破壊と言われるだけあって、性的な被害に遭った人達の心や精神を壊す事で欲求を満たし、燼霊たる自我を保っていたのだろう。
被害者は心に闇を抱える事になるし、村の内部瘴気の濃度も上がる。
燼霊にとっては一石二鳥というワケだ。
傍迷惑にも程がある。
物理的な方法じゃなくても、何かしらを侵害し壊す事で燼霊としてこの世界に留まっていられると言うのなら、なかなかに厳しい事実が判明した事になる。
もしかしたら俺達が認識していないだけで、ヒトの社会に溶け込んでいる燼霊が、まだ他にもいるのかもしれないからだ。
実際村長は権力を笠に着て偉ぶっているイケ好かないヤツ、程度の認識しかされていなかったのだし。
記憶まで取り込んだからとは言え、あの燼霊は村長のフリを長年続けていたのだ。
演技派な燼霊がいるのだと、覚悟をしておいた方が良い。
そんな燼霊の目的が琥珀だったワケなのだが……
いやぁ、モテる人って大変ね。
「琥珀さぁ、ミランダって覚えてる?」
『――……アンのこと?』
「そう、ソレ。
村長の中身」
少しの逡巡の後に、俺が思い浮かべて欲しかった人物の名前が出て来た。
思い出したくない名前だったのだろう。
若干ながら、琥珀の眉間にシワが寄っている。
ミランダ――美蘭田杏は、琥珀の前世である基の部下だった人物だ。
基と同様「地のスキル」の持ち主で、特に樹木との相性が良く、接ぎ木によるキメラ育成を得意としていた。
俺も面識がある。
当時まだ番がいなかった基に、滅茶苦茶アピールしまくって、その度に適当にあしらわれていた。
その漫才のような掛け合いは、「地のスキル」チームの、ある種の名物になっていた。
基も他の同僚も、同系統で彼よりも劣る「スキル」持ちの彼女では、基の番には指名されないと分かっていたからだろう。
誰も本気にしていなかった。
ミランダだけは、本気だったようだけれど。
基は博愛主義というか、誰にでも優しくしていたから、文字通り性別も年齢も問わず老若男女から好意を寄せられていた。
食堂の料理番もしていたから、胃袋を掴まれていたのもあると思う。
「この人の子種だったら番に選ばれなくても欲しい!」と一晩の過ちを求めて来る女性で一年のスケジュールが埋まっていた、なんてウワサがあったくらいにはモテていた。
まぁ、ウワサでしかないけれど。
事実無根だと、当時既に基本人から否定されている。
全員丁寧にお断りをしても、直属の部下となれば接する時間がどうしても出て来る。
定期的に告白されては断る日常を繰り返していた。
もしかしたら、基だけは、彼女が本気だと気付いていたかもね。
それもまぁ、基の番が決定した事で終止符が打たれたのだが。
好き好き連日言ってたミランダは、基の番開示日以降、パッタリと姿を見せなくなった。
どう足掻いても覆せない失恋によって、異動願いでも出したのだろうと、同僚の間では囁かれていた。
すれ違いすらしない理由を気に止める人は、誰もいなかった。
薄情とは言うなかれ。
施設は、ソレが当たり前な場所だったのだ。
実際は、基の番となった人物からの告発によって処分されたのだが。
まぁ、ソコは今は関係無いから置いておこう。
問題は‘’地球再生計画‘’よりも随分前の段階で亡くなっている彼女が、何故この世界で燼霊となっていたのか、である。
しかも乗っ取った人物が瑞基の血縁だと分かるや否や、琥珀を誘き出すために、愛娘である瑞基の近くで罠を張っていた。
どうやって琥珀の前世が基だと知ったのだろう。
実は燼霊の社会では、精霊達の前世って必修事項だとでもいうのだろうか。
ミランダは瑞基を盾にして、琥珀を殺して自分のモノにしようとしていたらしい。
瑞基に俺が「スキル」で創った薬を飲ませておいて良かった。
琥珀があの時瞬殺しなければ、そして 粉媒楢の因子の除去作業が完全に済んでいなければ、瑞基は恐らく、タダでは済まなかっただろう。
しかし元々女性だったのだったら尚の事、性暴力の辛さを知っているだろうに、自ら被害者を増やすだなんて……
……女性だからこそ、破壊力を知っているから敢えてしていたのかもしれないのか。
なにせ破壊行為こそが生きる意味である燼霊だし。
村長の性癖の可能性も否定出来ないが。
どっちにしても、タチが悪い。
今言いたい事は、ミランダの恋の行方は恋愛対象に物理的に殺される事で終焉を迎えました、という事実では無い。
「燼霊は全て、元地球人である、と言いたいのか」
「いえす。
しかも、地球で死んでいるって所がポイントだな。
暁も俺が殺した事になっているんだろ?
俺の死後、誰が殺したのかは不明なままだけど、少なくとも、この世界に施設が転移するまでの間、アイツの目撃者はいないって事だ。
監視カメラまみれの施設内で、何年も誰にも目撃されずに生活する事は不可能と言える。
なら暁も、転移する前、地球で死んだとみなして良いだろう」
俺が今まで遭った燼霊は、暁、瑞基の母であり基の番である華利雅、俺の複製体である試験体一号 、美蘭田になる。
全員、地球で亡くなっている。
なんなら、 紅曜も燼霊になりかけた事があった。
彼の前世もまた、地球で俺が殺しているので条件に合う。
分母が少ないとは言え、全員に条件が当てはまっているのだ。
偶然とは言えないだろう。
更に言うなら、暁はどうか判断出来ないが、他のメンツは、どうしようもないくらいに憎む対象がいた。
華利雅と試験体一号 は俺。
ミランダは華利雅。
紅曜は自分自身。
暁は……どうなんだろうな。
やっぱり、俺に対してなのかな。
施設の精神教育という名の洗脳はなかなかのもので、何かを恨むような思考を、なかなか持てるように育てられていない。
理不尽も怒りも、そういうものだと諦めて受け入れる思考に、大抵は誘導される。
余程の事が無い限り、怨み骨髄に入るような心理には至らない。
燼霊の数が精霊よりも少ないのは、条件付けが厳しいからなのだろう。
もしそうなら、まだ幾つか条件付けがあっても良さそうとは思うけれど。
やはり観察対象が少ないと、断言出来るような条件を見付けるのは難しいな。
「地球で死んでいて、何か恨みの対象がいて、あとの条件はお前と接触している人物、ということか」
「へ?
なんで俺??」
「どの燼霊も、お前は面識があるのだろう?
違ったか?」
「イヤ……そんな事は、無いけれど……」
え、本当にそんな条件があるなら、俺がその人達に何をしたと言うのだ???
もしそうなら、誰を恨むという話ではなく、他でもない俺を恨んでいる、というのが条件になったりするのだろうか。
華利雅はぶっちゃけ逆恨みだ。
基の心が手に入らなかったのは、俺のせいじゃねぇもん。
それでも、俺さえいなければ、と妬ましく感じた事があっただろう。
そう考えると、ミランダも、同じように感じていたかもしれない。
試験体一号は創り出すだけ創っておきながら、廃棄となった事による怒りだろうな。
俺が廃棄を決定したのではないけれど、そもそも俺が生み出さなければ、辛い思いをする必要の無かった命だ。
恨まれて当然である。
えぇ……もし燼霊化の条件に俺への恨みがあるのなら、ガチでこれ以上燼霊に会いたくないんだけど。
それだけ沢山のヒトから恨みを買うような人生だったって事じゃん。
一生懸命生きていただけなのに、酷いわぁ。
まぁ、誰からも恨まれないヒトなんて、早々いないだろうけどさ。




