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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを無双する。  作者: 可燃物


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神さま、紐解く。


親子としての別れの時間は、十分に取れたようだ。



瑞基は目元こそ赤くしていたが、その表情は晴れやかで、スッキリとしている。


琥珀(こはく)も、後ろめたさを含んだ寂しそうな笑みではなく、穏やかな優しい微笑みを携えている。



余計なお世話にならなくて良かったと、俺も安堵した。



さて、憂いも晴れた所で、真面目なお話の時間だな。






「念のための確認なんだけど、村長って瑞基の血縁っだってホント?」


「はい……そうです。

 誰かから伺ったのですか?」



「アレ?話したっけ?」と疑問に思ったようで首を捻ったが、思い当たらなかったようで質問を返された。



あ、ガチでそうなんだ。


外見に瑞基の要素が微塵も無いから、気付かなかったよ。



「イヤ、俺と、カノンも使えるんだけど、鑑定眼って能力があるんだ。

 眼に霊力を込めると、対象の情報を読み取る事が出来る。


 ソコに書かれていたのと、闇の精霊(テネブラエ)の能力で村長……ってか、あの燼霊(じんれい)の過去を覗き見た時に視えた」



鑑定眼の説明をすると、拍手をされた。


賞賛されるべきはこの能力の持ち主である闇の精霊(テネブラエ)な気がするのだが……癪だから黙っていよう。



「地球でもそうでしたが……ますます人間離れしていらっしゃいますね」


うるせぇ。

しみじみと言うな。



さすが神!なんて毎度持ち上げてくるが、いちいち反応をしていたら話が進まないのでスルーする。



孫か曾孫か何だっかな?なんて瑞基は言うけれど、礽孫のセリアにすら曾孫と言ってのけた彼女だ。


何親等かはこの際関係無いし、ソコもツッコまない。



ソレと瑞基に確認をしたのは、瑞基の伴侶が地球人(エルフ)である事。


また村長の両親が共に地球人(エルフ)の血を引いていた事の二つだ。



どちらも、肯定をされた。



やはり他の村民達と違って、村長の潜在能力って、かなり高かったんだな。






オプスクリス開拓村の住民――イヤ、オプリタス大陸全域の開拓村は、瑞基を含めた地球人(エルフ)に生活を支えて貰う事が当たり前になっていた。


その事もあり、精霊術を使おうとすら思わなかった人ばかりだったに違いない。



その上、他の大陸の集落と違い、精霊信仰がほぼ皆無だ。



そのため、霊力を溜めておく器が大きく、精霊術を使えるポテンシャルが生まれながらに高い地球人(エルフ)の血縁者であるにも関わらず、一切精霊術が使えなかった。



だからこそ長年、燼霊(じんれい)に目を付けられずに居られたのだろう。



しかし村長――燼霊(じんれい)に肉体を乗っ取られる前の、タダの人間だった頃の村長が、瑞基からノートを奪った事で、その存在を燼霊(じんれい)に捕捉されてしまった。



今回の騒動において、死者は村長一人だ。



琥珀(こはく)が早々に燼霊(じんれい)を倒してくれたお陰で、燃やされかけたり水没しかけていた 粉媒楢(クォルクス)も、全て遠隔操作で地下に転移させられたからね。


後でヒトの姿に戻してやれるだろう。


……伸びたツタや枝となって襲って来た部位が、欠損してないと良いな、の願うばかりだ。



正直、犠牲者が村長一人で済みそうで良かった、という感想しか出て来ない。



俺を襲った仕返しが出来たからではない。


なにせ村長の場合、自業自得という他無いからね。





人望が厚く人当たりも良い。

そんな何十年何百年経っても美しいままの御先祖様(瑞基)に、彼は嫉妬した。


俺の先祖はスゲェなぁと、思うだけに留めておけば良かったのに。



男という性別で、次期村長という立場だったからなのだろうか。


村長は、そうやって軽く流す事が出来なかった。



憧れが妬みに変わったキッカケなんて、他人からしてみれば失笑してしまう程に些細なものだ。


いわゆる、初恋の君の憧れた対象が瑞基だった。

ソレだけだ。



たったソレだけの事だが、本人からしてみれば絶望的だったのだろう。

どう足掻いても太刀打ち出来ない、敵いっこない相手だと認めていたからこそ、辛く、悔しかったようだ。



そんな仄暗い感情を抱えたまま成長し、大人になればなるほど自分の力量不足に嘆く機会が増え、そのうち瑞基へ抱く感情は、憎悪に変わっていった。



瑞基のせいではない。


自分の身の丈に合った目標を定める事が出来ないまま、そして達成感を得る機会を自分で奪ったまま、歳だけ重ねた村長の性格のせいだ。



まぁ、あとは育った環境だな。


そんなに嫌なら、瑞基から離れれば良かったのだから。



なんだかんだ身内だからと、他よりも甘やかしてくれる瑞基の傍が、居心地良かった部分もあって、離れられなかったんだろうな。



つまり甘い汁だけ啜って、苦渋は嫌だと駄々をこねる子供のまま成長してしまったのだ。


どうにもならない。



村長が瑞基への嫌がらせに奪って隠したノートの中に書かれていたのは、(モトイ)が生前「スキル」によって農作物の成長を促進させたり、収穫量を上げるたりする方法の研究資料だ。



他にもあったけれど、完全にプライベートな俺や嫁に対する感情をぶちまけたノートは、英語で綴られていたから、早々に読むのを諦めたのだろう。


恥が外部流出しなくて良かったね。



村長の地頭が良かった事と、(モトイ)の研究ノートは日本語で書かれていたために、この世界で一般化されている言語の形と書かれた文字に似通った部分があった事から、ある程度解読が出来てしまった。



だが「スキル」の存在を知らなかった村長は、自分達には使えずとも、この世界で一般的な精霊術で行った研究なのだと、アタリをつけた。


そして、若干ながらも再現が出来た。



ノートの解読も含めて、優秀は優秀だったのだ。


ホント、高望みせず自分に相応しい範囲で幸せを見付けようとしていれば良かったのに。



成果を独占し、瑞基を見返すためだけに、精霊術と(モトイ)の技術を使おうとした村長は、瑞基達地球人(エルフ)から受け継いだ、内に秘めた膨大な霊力を使うには、思考がマイナスに振り切っていた。


そうして、燼霊(じんれい)に目を付けられてしまったのだ。






燼霊(じんれい)はニブルヘイムからコチラの世界に顕現するためには、肉体が必要だ。



ヤツ等にとって霊力は毒で、霊力に満ちたこの世界に留まるためには、肉の防護服がなければ被ダメが大き過ぎて、すぐに力尽きてしまう。


しかしその防護服も、サイズが合わなければ、そして強度が高くなければ意味を成さない。



過去に顕現した燼霊(じんれい)は、沢山のヒトを犠牲にしてかき集めた霊玉と、優秀な精霊術師の肉体をギュッと一纏めにして、ソレを器にしていた。



複数の村が全滅し、何百人と犠牲になった。


しかしそれでも、燼霊(じんれい)が顕現していた時間は、一時間も無かった。


器に対して、燼霊(じんれい)の力が強過ぎて崩壊してしまったためだ。



地球から神に転移させられた地球人(エルフ)自身には、霊力はない。


しかしその血を継ぐ人達は、この世界に適応するためなのだろう。

元々の住民達と同様、霊玉を持って生まれてくる。



「スキル」を使用する際の生命エネルギーは、霊力に変換すると何十倍にも膨れ上がる。



施設で生かされていた人達は、優秀な人ばかりだったため、その子や子孫も、純血じゃなくてもかなり生命エネルギーが豊富だっただろう。


つまり霊力が相応に多い事になるので、ソレを受け止めるだけの霊玉も、相応に大きく質の良いものになる。



燼霊(じんれい)が宿るのに、うってつけというワケだ。



しかし地球人(エルフ)は施設でかなり理不尽な扱いに慣れてしまっているが故に、非常にガマン強くちょっとやそっとの事じゃイジイジしない。



ウジウジとするような負のオーラ出しまくりの人間は、周囲に悪影響を及ぼすと言って生存権剥奪の対象になるからね。


ホント、非人道的な制度だよ。



先の燼霊(じんれい)と精霊との戦いにおいて、地球人(エルフ)の肉体が乗っ取られなかったのは、霊玉が無かった事と、強靭な我慢強さによって瘴気に侵される事がなかったからだろう。



また地球人(エルフ)の血を引いている人達に限らずだが、精霊術を使うキッカケとして一番多いのは、子供の頃の癇癪だ。



感情の暴走によって、霊力が暴れ回り周囲に被害を与え、精霊教会によって保護されるのが一般的な流れだ。


そうして術師として育てられる。



因みに精霊教会は、内側から燼霊(じんれい)に利用されて何人も犠牲者を出して燼霊(じんれい)を顕現させている。


一応、大元を叩いて被害の拡大は防いだけどね。



地球人(エルフ)は争いを起こす遺伝子が徹底的に排除されていたためなのだろうが、子供達も大人しい子が多かったのかな。


精霊術を使えるのに、使い方が分からないまま成長してしまい、使わないまま生涯を終えるヒトばかりだったようだね。



お陰で燼霊(じんれい)に認知されずに穏やかな一生を過ごせたのだから、羨ましい限りである。






しかし村長は、自分の手で精霊術が使えるようになってしまった。


更に地球人(エルフ)の血が濃く、純血の地球人(エルフ)並に器が大きいのにも関わらず、嫉妬から生まれる瘴気を持て余していた。



そうして、燼霊(じんれい)に認識されてしまった。






村長を捕捉した燼霊(じんれい)は、器として優秀だと分かってはいたけれど、すぐに肉体を乗っ取る事は出来なかった。


コチラの世界にすぐに来られる程弱くは無かったようだね。



燼霊(じんれい)は強ければ強い程、持っている魔力が大きくて、ニブルヘイムからシャンバラへ通り抜けるための、次元の裂け目が大きくないと通れないのだ。



そのため、自分の眷属である 粉媒楢(クォルクス)の性質をイジって、オプスクリス開拓村にばら撒いた。



通常の 粉媒楢(クォルクス)は肉体を徐々に蝕み最終的に 粉媒楢(クォルクス)そのものになる。


樹化病(ダプネー)自体は、比較的一般的な病のようだが、改変された 粉媒楢(クォルクス)は、人間の魂も意識もそのままの状態で、表面だけ 粉媒楢(クォルクス)となる。



閉じ込め症候群と似ているが、アチラは人の姿を保っている分、人扱いされるだろう。


外部からの刺激で目を覚ます例もあるし、声掛けをされたり、手を握られたり、そういう交流が持たれる。



しかし外見がただの木となれば、そういった触れ合いはほぼ無い。



ヒトとしての意識はあるのに、動く事も食べる事も、喋る事も触れ合う事も一切ない。


そんな絶望の中にいれば、当然のように瘴気が溢れる。



そして瘴気に満ちれば、 粉媒楢(クォルクス)の感染は更に加速し、瘴気の濃度が爆増して次元の穴が開きやすくなる。



そうやって瘴気によって少しずつ開かれた穴から、村長の肉体を乗っ取るための手筈を整えていったのだ。



燼霊(じんれい)って手当り次第目に付くもの全て壊すぜ!ヒャッハー!!なヤツばかりだと思っていたのだけれど、急がば回れが出来る、意外と理性的に行動出来るヤツもいるんだね。



燼霊(じんれい)は村長の心の中にある瑞基に対する憎しみを増大させ、自分を認めない村人達へ敵意を募らせ、ヒト特有の理性的な思考や他者に対する思い遣りのような正の感情を排除した。



最終的に燼霊(じんれい)の都合の良い人形になってしまった村長は、最終的に自我を喪い、肉体の権限を燼霊(じんれい)に渡してしまったのだ。


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