神さま、仕上げる。
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電波塔も中継局も無いので、携帯電話のような仕組みの通信機器は創れなかった。
そりゃそうだと言う他無いのだが、代わりに風の精霊の力を借りた一方通行の通信機器はカノンに持たせてある。
吹き込んだ声を届ける手紙では、風の精霊の移動時間が必要なため、タイムラグが生じてしまうからね。
なので微精霊からニコイチで進化させた風の精霊を使って、受信者と発信者、それぞれリアルタイムで言葉のやり取りを出来るようにした。
ニコイチAの風の精霊が言葉を預かり、ニコイチBにその旨を伝え、Bが持ち主に伝言を伝える。
この動作をワンセットにしているので、電話のようにAとB、同時に言葉を発する事は出来ない。
なので電話と言うよりも、トランシーバーみたいなものかな。
地の精霊の力が強い場所では、恐らく通信が阻害されてうまくやり取りが出来なくなるだろう。
改善点は幾らでもあるけれど、間に合わせ程度なら十分だ。
そう思っていたのだが……
防犯ブザーを鳴らしたのなら、その通信機を使って状況説明をしてくれれば良いのに。
いくら待っても、カノンからは連絡が入らない。
通信機を起動させる事すら出来ない程に追い詰められた状況、なんて事が、カノンに限ってあるのだろうか。
なにせ‘’賢者‘’様で、‘’世界最強‘’だぞ?
燼霊と何度も戦って生き延びているし、村長の化けの皮が剥がれたとしても、そんな危機的状況に陥るとは思えない。
あぁ……だけど彼は、情に深い所がある。
瑞基やセリアを人質に取られていたら、何も手出しが出来なくなるか。
だからポチッとボタンを押すだけの防犯ブザーを使って、外野の俺に助けを求めた、なんてパターンならありそうだ。
避難先兼新居は粗方創れたし、さすがに村民全員を人質に取るなんて事は不可能だろう。
逃げられる人だけでも、転移させれば良いのに。
……あぁ、そのための方陣を、俺がまだ設置していないのか。
そのせいで避難させたくても、向こうの入口が作動出来ないって事はありそうだ。
そうなる可能性があるから、サッサと作れと急かしての警告音だったのかもしれない。
だって、俺がカノン達と別れてから、まだそんなに時間が経っていないもの。
体内時計にイマイチ自信が無いけれど、三時間程度しか経っていないんじゃないかな。
村長に俺達の計画がバレるには、早過ぎる。
どんな状況に陥っているのか、現場に行ってみないと判断出来ないけれど、俺がオプスクリス開拓村に戻るワケにはいかない。
もう旅立った設定の俺がホイホイ気軽に戻ってしまったら、何事も無かった時に、言い訳が何も出来なくなるからね。
「誰か……イヤ、颯茉、カノンの所行って様子見てきて。
通信機が故障している可能性もあるし」
『――りょーかい!』
動作確認こそしたけれど、アレは至近距離での事だった。
地下と地上、しかも何十kmも離れた先で使えるのかどうかは試していない。
琥珀がいる事で通信障害が起きている可能性は……無いのね。
ハイ、聞く前に心底心外そうな顔で首を横に振られた。
颯茉がカノン達の様子を見に行ってくれている間に、転移方陣を設置してしまおう。
行き来するタイプではなく、向こうからコチラへの一方通行の方陣になる。
戦闘の最中に村民が避難するとなった場合、誤作動か華族を保護するためか。
理由はどうであれ、戻って来られたら困るからね。
転移方陣は全て基本の形は同じだから、あらかじめ用意しておく事は可能だ。
霊力を充填しなければ起動しないし。
だが今回は村から避難するための入口を複数用意したために、対となる紋様や術式の他に、座標点を指定して書き込まなければならない。
他にも誤作動しないための安全装置も置かなければならないので、設置した後にもしなければならない事がソコソコある。
この後どう動くのか不透明なままだと、早々に「スキル」で村を創っておいて良かったと思わずにはいられない。
避難口を用意する前に、せっかく創った地上の建物と地下の村を繋ぐ、行き来が可能な方陣を用意しなければ。
宝の持ち腐れにすらならない。
ただココにあるだけの、無意味に中身は高性能なのに、出入口の無いために利用出来ない、無価値な箱になってしまう。
なにせ外から入るための玄関は、二重になっている内扉が中からしか開かない仕様になっているんだもの。
地下に設置されている村と行き来する際の転移方陣は、どんな仕掛けにするべきか。
指定の霊玉を設置しなければ起動させられない仕様にでもするか?
……イヤ、それだと設置したまま放置してしまう、ウッカリさんが居たら使える人間を制限する意味が無くなってしまう。
村の人しか使えないようにしておかなければ、魔物を含めた部外者が侵入し放題になってしまうからね。
頑丈に創りはしたけれど、破壊しようと思えば出来るだろうから。
小屋、と言うには余りにも大きい、ツギハギにしたトレーラーハウスのような見た目になってしまった、地上の建築物に転移方陣を設置したら、次は地下の方に同じ物を描く。
村から出て行った人で間違いないか、虹彩による認証装置を付けたいけれど……ソレはさすがにやり過ぎだろうか?
侵入者の防止にはなるだろうが、瑞基に馴染み深過ぎるものだし、身バレ防止のために辞めておこう。
ハイテク過ぎて、逆に不便になってもいけないものね。
次に今のオプスクリス開拓村の人達が避難するための、出口を設置しなくちゃだ。
まだ回復していない、しかし助かる見込みのある闘病中の人達を避難させやすいよう病室に一つ、留守番をしている人達、特に女性が普段よく集まる台所と手仕事をするための作業場に一つずつ、男性が集まりやすい農地に一つ。
それとカノンが任意で設置出来る、極小数の人を転移させられる、紙に描いた小型の方陣が一枚。
合計五つの方陣が全て同じタイミングで起動する事は無いと、信じたい。
なにせ出口を複数個用意する事が、出来ないからだ。
何故かと言うと、少人数ずつ移動させる予定だったために、入口と対になる出口を指定する紋様を、一つしか用意しなかったからだ。
俺が村を後にするギリギリまで村長の様子を伺っていたが、大人しかったために見通しを甘くし過ぎた。
面倒臭がらずに、対となる紋様を考えるべきだった。
出口を小さくし過ぎると、万が一、一気に全ての方陣が起動した際、異次元を通して移動する間に混線してしまって、出口に現れる頃には人間のキメラが出来てしまう。
もしくは、出口に上手く繋がらなくて、異次元で彷徨う事になるか。
可能性としては限りなく低いとはいえ、その確率は〇ではない。
転移方陣は時の精霊の領分なので、一言事前に言っておけば、そういう事故は防げるだろう。
しかし彼と契約をしていない人々は、彼の居住地である異次元に長い間留まる事は許されない。
『混ぜたり迷子にさせなきゃ良いんだろう』とか言って、適当な所に放り出してしまう可能性はある。
その先が魔物の巣だったりしたら大変だ。
十分な広さを確保出来るとなると……最下層になるか。
畑の土作りなんかの細かい事はしていないから、ちょうど良い。
地下に創った村の、直径ギリギリの大きさで転移方陣を描こう。
最上階から飛び降りて、時間短縮をする。
颯茉はいないけれど、そこら辺にいる微精霊に頼めば、地面に着く前に減速してくれる。
そう思っての行動だったのだが、飛び降りた瞬間、颯茉が帰って来た。
『大変だよー!』とさして大変な雰囲気を纏わない、間の抜けたセリフを叫びながら。




