神さま、確認する。
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いつも済みません|ω・`)
昔はそんな人じゃなかった。
そんなセリフをココ最近、よく聞く気がする。
闇の精霊に対してもそうだし、村長に対してもそうだ。
人間、時間の経過と共に、置かれた環境によって人格が再形成されるなんて事はよくある話だろう。
今しか知らない立場からしてみれば、そんな昔の話なんて持ち出されても困る。
腐ったミカン論法では無いけれど、悪影響を及ぼすような反社会的思想を持っている人が集団の中にいれば、少なからず影響は受けるものである。
抑圧されていた思想が、その人をキッカケに爆発したり、露呈したりする事なんかもあるだろう。
だが逆に、それを反面教師にし、自分の学びにする人もいるのだ。
その違いを考えた時、その人の本質いかんで変わるのでは無いかと思う。
性根が悪者でなくても、素直が故に、周囲に染められ易い人も、中にはいるけどね。
闇の精霊や村長がどうかは分からない。
どんな事情があって変わったのか。
それも知らない。
俺は本人じゃないもの。
だが暴行を受けた俺からしてみれば、そんな過去の事なんか関係ない。
どれだけ昔イイ人だったとしても、アイツ等は自分に害をなした、要注意リストに登録されている人物だという事実は変わりないし、揺るがないのだから。
出来れば二度と会いたくない。
可能ならば、同じ空気を吸っていて欲しくないとも思う。
……精霊は空気を吸わないだろうけれど。
その考えに至った時、ふと、違和感を思い出した。
イヤ、その時はパニックになりかけていたし、もしかしたら脳がショックな出来事に対して、突発的に情報を上書きした可能性はある。
だから、確認は取るべきだ。
冤罪だったら、大変な事になるからね。
しかし、村長に会うのは嫌だなぁ……
それに、そんな事、どうやって確認すれば良いのだろうか。
寝ている所に忍び込んで確認するか?
でも夜這いか?とか聞かれたら嫌だしなぁ。
「何を考え込んでいるのだ?」
ノートと睨めっこをしていた顔が、コチラを訝しげに向けられる。
無意識に唸っていたのだろうか。
邪魔をして申し訳ない。
「さっきの事を思い返していたんだけどさ……
俺、あのオッサンに匂い嗅がれたり乳鷲掴みにされたり、色々されたワケなんだけど……
おいおい、ノート!
瑞基に怒られるぞ!!」
俺の発言に今にもノートを握り潰しそうな勢いで、指先に力を込めたカノンに慌てて静止をかけた。
一冊だけだが、せっかく取り戻したのに!
破壊したら、手元に戻って来た喜びとの落差で、瑞基が失意のドン底に堕ちかねない。
友人のお嬢さんが闇堕ちした所なんて、見たくないぞ。
イヤ、そうなったら「スキル」で直すけどさ。
ストップをかけて、やんわりとノートから手を離したものの、カノンの顔には、怒りが分かりやすく書かれている。
自分が襲われたワケでもないのに。
そんなに怒るなよ。
……つい妄想してしまい、絵的にとても気持ち悪いからそうならなくて良かったと、背筋に悪寒を走らせながら、心底思った。
薔薇な展開は要らん。
あの時はとても気色が悪い思いをしたせいで、そちらの感情が優先されてしまっていた。
だが思い返してみれば、押し倒された時からおかしかったんだよな。
この俺が、地面に伏されるまで反応出来なかったんだぞ?
とても自惚れた発言になってしまうが、俺は強い。
‘’世界最強‘’の二つ名を持っているカノンとでも、手合わせなら四割程度の勝率を誇る。
経験値の差がどうやったって埋まらないので、カノンに軍杯が上がる事が多い。
そんな中でも五分の二の勝率ならば、強いと胸を張っても良いと思う。
更にいうと、命の取り合いならば、コンティニューして何戦しようが、俺が勝つ。
俺は「スキル」があるからね。
その上闇の精霊とその眷属を除く、全ての精霊達の力を好き勝手に遠慮なく使える‘’契約の指輪‘’を、精霊を統べる存在である精霊神の皆から貰っている。
手段を選ばないのなら、時の精霊に俺以外の時間を止めて貰って、その間に首をケチョンパしてしまえば、ソレで終わる。
カノンも時の精霊の力を使えるので、その手が使えなかったとしても、稜霓の力を借りた攻撃をすれば、文字通り光の速さで繰り出されるものだ。
避けようがない。
他にも「完全破壊」のスキルを自分の周りに展開させておけば、俺の身体に攻撃が届く前に全てを無効化出来る。
「絶対再生」を常時発動させておけば、頭が吹き飛ばされようと、心臓を抉られようと、ダメージを受けた端から傷が修復される。
あとは万が一肉体そのものを消失しかけてしまった時のためにと、散々自分のクローン体を瞬時に生成する訓練もさせられていた。
何かあれば「万物創造」によって肉体の再構築が出来るので、そもそも死にようがない。
しかも霊力の総量が、カノンの何十倍もあるのだ。
HP無限のMP底無しな敵を倒せなんて、無理ゲーにも程がある。
倒しようが無いという意味でも、俺は負け知らずになる。
油断していたとは言え、そんな俺を、あの村長は押し倒したんだぞ?
おかしくない??
フラッシュバックで肉体が硬直したとか、頭がパニックに陥ったとか。
そういう理由はあれども、抗う術を自ら放棄したのは、押し倒された後、対話による状況打破が出来ないと悟ってからだ。
その前に抑えられた腕を解こうと、足をバタつかせて相手のバランスを崩そうと、ケガをさせない程度の力に加減して抵抗をしたのに、ビクともしなかったのだ。
やはり、おかしい。
あとは、鼻で思い切り息を吸い込めば、空気の流れが多少なりとも生じて、冷気を感じるものだ。
そして呼吸というものは当然、吐いて吸ってがワンセットである。
吸い続けたら、襲われた後の俺のように、過呼吸状態になる。
なので気持ち悪い話ではあるが、生暖かい鼻息を感じなかったのも、変な話なのである。
何より。
俺が「スキル」で作った偽乳を、握り潰すだけの握力ってどんなだよ。
どれだけ集中して鍛えても、握力を七〇kg以上にするのは骨が折れる。
遺伝子の問題も出てくるから、その辺で必ず壁にぶち当たるのだ。
一〇〇kgを超えるのですら、なかなか大変なんだぞ。
ギネス記録こそ無かったが、世界で最も強い握力を持つ男性とされていた人物の握力が一九二kgだ。
しかしその人物は、身長二mで体重一五〇キログラムと、かなり恵まれた体格の持ち主だった。
骨を折るレベルではなく、人体破壊が可能になる握力となると、それ以上の力が必要になる。
村長の体格は、俺よりは大きかったが、そこら辺にいる農夫よりも貧弱だった。
そんな力があるとは思えない。
部屋に転がしてあったボディスーツを手繰り寄せる。
見事に指と手のひらの形でへこんでいる。
無事な乳房を自分でも力を込めてニギニギしてみたけれど、弾力がシッカリとあるので、ちゃんと元のふっくらとしたお椀型に戻った。
コレが普通だよな。
壊れてしまっててもう使えないし、身体強化でどれ程の力を込めたら同じようになるか、試してみるか?
……視線を感じてそちらを見れば、カノンに、滅茶苦茶シラケた目で見られた。
チベットスナギツネやマウンテンビスカチャのような、虚無な顔をしている。
趣味とか嗜好じゃないから!
単なる確認だから!!
「お前も揉んでみろって」
「そのような嗜みは持ち合わせていない」
「ちっげぇし!
向かって右乳!!
陥没してんだろ?
……乳頭じゃねぇよ、乳房全体の話!!!」
一体いつ、誰がチクビの話をした!?
突起部分よりも注目すべき部分があるだろうが!!
何よりも真っ先にソコに目がいく、お前の方が余程変態だわ。




