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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを無双する。  作者: 可燃物


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神さま、疑問が増える。


部屋に残ったカノンと二人、ノートを覗き込む。



使われているキャンバスノートは、木材が調達困難だった施設では馴染み深い、非木材紙が使用されている。


砂糖生成のために育てられていたサトウキビの絞りカスであるバガスや、二酸化炭素を効率良く吸収してくれる上、成長が早いケナフが、その主原料だ。


バガス以外の農産廃棄繊維も使われていたが、どの紙も漂白するコスト削減のため、大抵は薄く茶色味を帯びた色をしていた。



だが琥珀(こはく)の前世は、さすが施設でもかなり高位の地位にいただけあって、かなり上質の紙が使われている。


経年劣化による変色や、手垢の色こそ縁についているが、地中で保管されていただけあって日焼けはしておらず、全体的に多少黄色くなっている程度だった。



最も優れた情報の保存媒体は紙だといわれているが、正しくその通りだな。






羊皮紙はインクによっては腐食してしまって読めなくなるし、石は割れたら終わり。


電子媒体の場合は、簡単に消えてしまう。

物理的に言うなら磁石をくっつけたり、メモリー部分を破壊されたら終わりだからね。



……施設のマザーコンピューターは、稜霓(ろうげつ)が今も管理をしているから、何百年も経っていても問題なく動いているけれど。


アレは少々特殊だからね。

稀有な例である。



日本最古の書物とされていた古事記なんかは、原本こそ失われてしまったが、その写本で最も古いものが八世紀始めに作成されたとされている。



世界で見るなら、紀元前二六〇〇年頃に作成されたとされるメレルの日誌がある。

コチラも使われたのは、パピルス紙という植物の茎から作られた筆記媒体だ。


パピルスは、狭義の紙ではないけれど。

表面が平たくないからね。


だけどまぁ、植物の繊維を使っているという点では、紙と共通している。



粘土板なんかは、紀元前三二〇〇年以上前の楔文字が書かれた文書も残っている。


焼かれて陶器になって、後世まで残ったものもあるけれど、基本的に衝撃を与えたら割れて終わりだ。


何より、持ち運びしにくい。



記録媒体としては、少々不便である。



なので最強は紙!

異論は認めない。



電子はホント、ダメだよ。


一時的な記録媒体としては優秀だが、何もかもを委ね過ぎていたせいで、施設に避難する事になった直接の原因は、記録が残って居ないからねぇ。


同期させる前に、施設の外の文明が滅びてしまったんだもの。

どうにもならない。



だから本当に必要な事は、紙に残して置くべきだと、つくづく思う。






「お前はここに書いてある文字は全て、読めるのか?」


「そりゃあ、当然。

 カノンは難しい?」


「漢字が、厳しいものもある……

 なんだ……この日に、玉と書いてある文字は?

 こんな字、あったか?」


あぁ……曜の略字か。

俗字とも言うが。



‘’㐧‘’やら‘’木キ‘’やら、確かに簡体字と草書体を合体させたような字が、結構頻繁に使われている。



キーボードで文字を打つのが当たり前になっていると、全然出会わない漢字である。


つまり俺も、馴染みはない。

なのに不思議と読めるのは、何故だろう……?



前後の文字で、自然と予想してしまうのだろうか。



門構えの漢字は、全部俗字になっているな。



個人的な研究結果をまとめるノートで、第三者に見られると思っていなかっただろうから、書くスピードを優先させたのかな。


琥珀(こはく)のちょっと意外な一面が見えて面白い。






「カノンが読めないとなると、俺が読めるのはおかしな話になるよな。

 紙の毛羽立ち具合を考えても、ココら辺のページを村長は熱心に読んでたみたいだけど。


 ココだけでも、読めないかな?」



「……あぁ、書物のどれだけ紙を捲ったか表す時の言葉は、‘’面‘’だ。

 この場合は……裏表紙から、十二面目の、三行目という言い方になる。


 ……暫し、時間をくれ。

 分からん所があったら、聞く」



先程瑞基に‘’ページ‘’に相当する言葉を何と言って良いか分からず、言い淀んだのはバレバレだったようだ。


察してくれたようで、教えてくれた。



瑞基も気付いただろうが、何故言葉に詰まったのかまでは分からないだろうし、指摘をされない限りは知らぬ存ぜぬを貫けと言われた。


了解です。



このノートには書かれていないが、カノンが管理している書籍の多くは、通しノンブルが振られている。


基本的に、流通している本は大抵紙面の中央下部か、綴じられる内側のノドの部分に書かれているそうだ。


場合によっては、隠しノンブルが振られているのだとか。



そこまで気にした事が無かったな。

今度確認してみよう。






村長が熱心に見ていたページは、特定の植物が土壌の汚染物質を吸い上げ、土を浄化する能力が高い事。


またその効果を増幅させる遺伝子組み換えのレシピと、重金属の資源回収方法の実験がまとめてあった。



植物によるファイトマイニング――金属捕集は日本に限らず世界中で注目されている分野だったな。


何億円もの資金提供を国からされるレベルで重要視されていた。



ニッケルやマンガンが多く含まれている土地は、作物を育てるとなると毒となり得るが、集まればレアメタルとして利用価値が高い。


植物を焼却する際の温度管理が少々大変なようだが、一ha(ヘクタール)あたり数百kgの金属を回収出来るようになるケースもあるからと、鉱山採掘よりも低コストで行えるとか、なんとか。


金や鉛のような、利用価値の高い金属も集められるのだから、そりゃ研究も加速するだろう。



だがファイトマイニングに有用な作物とされる、約七五〇種の超集積植物のことごとくが、先の大戦で喪われてしまった。



もちろん遺伝子データはマザーコンピューターに残っているので、俺の「スキル」なら創り出す事は可能だ。


しかし俺は、琥珀(こはく)の前世である(モトイ)から、この研究の要請を受けていない。


ついさっき、こんな研究をしていた事実を知ったくらいだし。



頼ってくれれば、もっと効率的にココに書かれている実験が出来ただろうに……


効率よりも、格好付ける方を優先させたのだろうか?



単に俺を――俺の「スキル」を利用する許可が降りなかっただけかもしれないけどね。


上層部から許可を得ない限り、好き勝手に使ってはいけないと言われていたし。



バレない程度には使ってたけど。

なにせ反抗期だったもので。



(モトイ)は、よくもまぁ、コレだけの研究をほぼ一人でやってのけたな。


草花だけではなく、苔や樹木でも研究しているぞ。


何人に分裂したら、コレだけの成果が得られるのだろうか。





「毒物を取り除くための研究が、何故 粉媒楢(クォルクス)の蔓延に繋がるのだ?」


漢字の読み方や意味を教え、該当ページを一通り読み終わった後の、カノンの感想が、コレである。


全くもって、その通りだ。



粉媒楢(クォルクス)の特性は、人間を土壌にして繁殖するというものだ。


人間の毒物ってなると、この世界じゃ瘴気や魔力が代表的だね。



粉媒楢(クォルクス)の特性を理解せずに、毒を除去するって部分だけに着目して、瘴気に侵されている人達にワザと撒いたってパターンもあるかもしれない。


瑞基ばかりが賢者様と敬い親しまれている現象が気に入らず、彼女以上の功績を提示すれば、自分もチヤホヤされるかも。


そう短絡的に思った可能性は、あのサル以下の知能の持ち主ならば、否定出来ない。



だけど反村長派が重篤化したり、回復したとしても、何度も繰り返し 粉媒楢(クォルクス)が発芽するような、明確な悪意を感じる事例もある。


たまたまと言うには、偶然が重なり過ぎている。



それに村長は、「効きもしない薬」と断言をしていた。


俺がどんな薬を作ったのか、確認もせずに。



一般的には樹化病(ダプネー)には角骸鯨(ポーコゥル)の角が効くとされているのだ。


ソレを材料に使ったのに、断言した、その根拠は何だ……?


ココに書かれている事以外にも、何かしらの要素が絡んでいるのだろうか。


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