神さま、首を傾げる。
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いくらカノンがイイ奴だと分かっていても。
他人にべらべら喋るような奴ではないと分かっていても。
過去の全てを語る日は、永遠に来ないだろう。
琥珀が何を、どれだけどこまで話をしたかは知らない。
だが彼が知っている事ですら、ほんの、極僅かな欠片でしかない。
何よりも、彼はあくまで、第三者だ。
ソレ等の事実は、人伝に聞いた情報でしかない。
ソコに俺の感情は、伴っていない。
苦痛も怨嗟も、絶望も厭世も排除されている。
俺のいない所でコソコソ話していたと知った所で、大して問題には思わない。
当時の事を教えろと言われれば、カノンになら、まぁ、教えても構わないが……
それでも断片的な、一部しか言えないと思う。
俺が語るのも思い出すのもイヤだから、という理由はある。
だがそれ以上に、全てを知ったら、優しい彼は気にしてしまうと、そう思うから。
腫れ物を触るみたいに接されるのなんて、ご免だ。
俺はガラス細工でも、人形でもない。
人間だ。
飾って愛でられるだけの、意思のない、ガラクタじゃない。
……ましてや、誰かの代用品なんかじゃない。
この世で最も嫌っている男の顔が思い浮かぶ。
拳を強く握り締めたせいで、手のひらに血が滲んだ。
カノンにバレないよう、そっと「スキル」で傷を塞いだ。
大事を取るべきだと言われ、患者達にフルーツジュースの差し入れに行くのは却下された。
もう産まれたての子鹿みたいな状態からは脱したのに。
過保護なヤツめ。
瑞基達からは聞けないような、オプスクリス開拓村の問題点や、村長や瑞基に対する不平不満を含めた評価等、情報収集をするには最適な場だったのに。
会話に飢えているオバチャン達と、それはそれは有意義な時間を過ごさせて貰ったよ。
ただ看護をするだけ手間の掛かる事、俺がするワケ無いじゃん。
だがカノンには再度却下された。
「俺が代わりにしてくる」と言うが、コミュ障が何寝言を言っているのか。
オバチャントークの勢いに押し負ける事無く、欲しい情報を聞き出す事が、果たしてお前に出来るかな?
それは関係なく、ろくに食べられない中、栄養不足のままいると、薬を飲んでも充分な効果が得られない。
カノンも重々理解している。
しかしセルフサービスにさせて貰って、届けるだけにしたとしても、その間に何かあったらと考えると、離席するのは避けたいようだ。
心配性なヤツめ。
……まぁ、そうさせるに至ったのは、俺が村長に着いて行ったからなのだが。
こういう時に、精霊なのに肉体のある琥珀が出て来られると便利なんだよな。
先程助けてくれた時に、姿を見せたのは完全なイレギュラーだものね。
これ以上は頼ってはいけない。
他の皆にも、早く肉体を作ってやりたいな。
約束もしているし。
皆の利便性がより高くなると、俺も助かるからね!
そんな不敬な事を考えていたら、慌てた様子で瑞基が部屋に飛び込んで来た。
「見付かったのですか!?」
「ぁ……
今しがた、落ち着いて、呼びに行こうと思っていた所だ」
カノン?
お前今、小さく「あ」言うただろ。
俺を探して奔走してくれていたであろう人に対して、なんて不義理なヤツだ。
イヤ、俺が話なんて始めてしまったせいか。
瑞基に確認してから話すべき事もあったのだから、先走るべきではなかったな。
落ち着いたと思ったけれど、まだ動揺していたか……
「お騒がせして、申し訳ありませんでした」
「こちらこそ、村の者が……その……」
「未遂、ですよ。
ご安心を。
それに……こう言ったらカノンに睨まれそうですが、収穫が幾つかありましたし、私は村長の部屋に行って良かったと思ってます」
青い顔をして口ごもった瑞基に笑いかければ、非常な複雑そうな顔をされた。
そしてカノンには、予想していた以上に睨まれ凄まれ、とんでもない顔をされた。
だが実際、結果的には、割と本気で襲われて良かったと思ってる。
どのタイミングになるかは不明だったが、カノンが村長の部屋に来る事は予想していたし。
書き置きを残しておいたからね。
俺の予定では、瑞基の奪われた日記を見せて貰って「スキル」でコピーした後、原本を四次元ポシェットに確保し、偽物を村長に返す。
そのつもりだった。
ソレの対価として押し倒される可能性はあるよなと思っていた。
セリアから村長は色狂いだと聞いていたし。
……ソコまでは言ってなかったか。
だがまぁ、何だかんだと言いくるめ、話題を逸らし時間を稼いで、だいたい押し倒される前後のタイミングで、カノンが来てくれるだろうと予測していたのだ。
村長が思ったよりもケダモノだったせいで、話をする間も、何の前振りもなく襲われてしまい、ひん剥かれてしまったが。
頭蓋骨の中身が金タマで出来てるんじゃなかろうか。
サルの方が、余程理知的だぞ。
まぁ、余程高揚していたのだろう。
隠し事までポロッとゲロってくれたので、俺としてはソレだけでプラスになったと思っている。
その上、取り戻すべき物も、ひとつだけだが手に入った。
見覚えのある文字がタイトルに書かれている、一冊の大学ノートである。
「それは……っ!」
「瑞基様の盗られた物は、コチラで合っていますか?」
「そのうちの一冊で、間違いない!
あぁ……ありがとう」
瑞基は感極まったように目を潤ませながら、差し出したノートを抱え込んで礼を述べた。
カノンといい瑞基といい、ここの親族連中は、ファザコンになる血筋なのだろうか。
他にも遺品ならあるだろうに、ここまで感動されると、若干引く。
だがやはり、村長の言っていたように、盗られた物は幾つかあるって事か。
このノート。
俺が取り戻した物ではない。
あの背から伸びてきた影のひとつが、四次元ポシェットの中にこのノートを突っ込んでくれたんだよね。
どうせなら、他の物も回収してくれれば良かったのに。
そう文句を言いたくなるが、影の手の有効範囲を考えると、何かしら、箱や棚の中に入った状態だと無理なのだろう。
……まさか、闇の精霊に助けられるとは、思わなかった。
施設では散々人を痛め付けておいて、今更助けるとか。
……どういうつもりなのだろう。
この世界に転移してからも、闇の精霊とは一度たりとも会っていない。
精霊ならば、脳内で会話をする念話だって出来る。
なのにソレもした事は無い。
他の精霊達と違って、契約の指輪を貰ってもいないから、俺の現状を把握する術は無いはずだ。
あったとしても、村長に襲われた時のように、俺が危機だと感じていなければ、彼等は俺がどういう状態なのか、離れていたら知る事が出来ない。
……あれ?
そう考えると、琥珀は何で俺が襲われていると分かったのだろうか。
不思議である。
鑑定眼を通して、向こうに俺の視界が共有されているパターンは考えた事がある。
鑑定眼は、闇の精霊の能力だからね。
だがあの時眼は、発動させて居なかった。
当然だ。
あんな状況で、一体何を視ようと言うのか。
……ホント昔から、あの父親が何をしたいのか、よく分からん。




