神さま、移動する。
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誤字報告ありがとうございます。
反映させて頂きました。
発熱した時って、冷たい飲み物が欲しくなるよね。
だけど発熱って、そもそも白血球が頑張って働いている証拠なんだよ。
免疫機能を高めるために起こる反応だから、基本的に冷たい物を飲んで体温を下げるのは、NG行為だ。
体温が一℃上がると、白血球を含めた免疫細胞が約五倍も活性化されるという。
体温が高い人ほどガンになりにくいと言うけれど、そういうカラクリがあるからなのだ。
せっかく高まっている自然治癒力を、水分補給のたびに低下させてしまうのは、あまりにも勿体ない。
脳ミソが固まってしまうといけないから、頭を冷やすのは大切だけどね。
冷たい飲み物を飲んではいけない理由は、他にもある。
体温調節機能を混乱させてしまい、免疫機能に割かれるためのエネルギーが体温調節に使われてしまう。
そうすると、免疫が下がるリスクがあるからだ。
またノドの炎症を刺激し悪化させたり、咳を誘発して体力を減らしたりもする。
ノドの筋肉が冷却され萎縮すれば、痰の排出が難しくなる。
胃が冷却され消化酵素の働きが阻害されれば、消化不良や下痢を引き起こし、脱水や体温低下が更に加速する。
そうなれば、当然免疫機能の低下を招く。
良い所が全然無いのだ。
ココで寝ている人達は、魔物の種子が体内に入り込んでいる事実がある。
どうしても、聖水を摂取して欲しかった。
聖水は、魔の存在を祓うからね。
しかしただの水だと、ノドが痛むから飲むのが億劫だと言う人が多かった。
氷にすれば、無理のない範囲で少しずつだが、確実に摂取出来る。
だが体温を奪うのは避けたい。
なので濃縮還元ジュースのやり方を真似する事にした。
まずフルーツジュースの水分を抜く。
この際に熱を加えたら、せっかくの大量のビタミンが壊れてしまう。
なので浅葱をこき使って、水だけを果汁から取り除いた。
超音波霧化分離よりも品質を損なわずに済むのだ。
精霊の力って素晴らしい。
そしてその後、常温の聖水で戻し与えた。
水の精霊神の能力の無駄遣いだと頭の中で文句を言われたが、人助けなんだし、堅い事を言うな。
冷たい物で良ければ、凍らせた聖水を一緒にミキサーにかけたのだけれど。
まぁ、仕方ない。
手間は増えたけれど、オカワリの言葉も貰って、作ったジュースは無事完売御礼となった。
見た目こそヘドロだったが、そんなに美味しかったのか。
どの果物を幾つ入れたか、どれくらい使ったか、全く覚えてないので同じ味は二度と出来ない。
一口だけでも飲んでおくべきだった。
比較的軽症、と言われた部屋にいた人達ですら、もう助からないと判断を下さなければならない人が若干数だが居た。
その事実が、中等症の部屋に向かう足を、自然と重くさせる。
そうは思えど、賢者としてのカノンの仕事だし、村長に恩を売って瑞基の奪われた物を返して貰わなきゃいけないし。
それに今後‘’精霊の使者‘’として活動するなら、こういう疫病が蔓延している集落に行く事もあるだろう。
人の死に、そしてその際に立ち合う事に、慣れなければならない。
ひとつ上の階に移動し、形だけのノックをして部屋に入る。
重症者が押し込められていた部屋は、モロに木にしか見えない 粉媒楢ばかりだったが、ビジュアル的には、この部屋が一番、クるな。
身体の一部が、樹木になり掛けている人達ばかりだった。
辛うじてベッドに寝かせられてはいるけれど、腕は自分の意思に反して天を向いている。
既に意識が無いのか、朦朧としているのか……
口はだらしなく開いたまま。
目も虚ろで、何を映して、どこを見ているのかすら定かではない。
全員、助からないのは明白だ。
しかし樹化病だと思っている人達には、それが判らない。
まだ樹木になっていない部分があるのだから、助かるかもしれない。
そう思っているからこそ、重症者とは分けた部屋割りになっているんだよな。
この認識と現実の差が、辛い。
とりあえず中に入る。
粉媒楢になり掛けている人達の口から呻き声が漏れているし、正直、長居したくない場所である。
ただ、だからこそ軽症者がいた部屋とは違い、この部屋には殆ど人が訪れない。
内緒話をするには、もってこいの部屋なのだ。
「とりあえず、この後、どうする?」
「俺としては、白く塗ってても分かる、その顔色の悪さを解消させたい」
「施設では、流行病の類が無かったからな。
こういう場面に、慣れていないだけだよ。
そのうち落ち着くだろうから、放っておけ。
……そうじゃなく。
粉媒楢の始末だよ。
これ以上の被害を拡大させないために焼くか、時の精霊の力を借りるか」
「原因は……視て分かったのだろう?
根本的な解決をしなければ、同じ事を繰り返すだけだ。
……あれだけ食べて、お前は大丈夫なのか?」
「俺はね。
体内に異物が入ったら、スキルが勝手に発動するから。
そう言うお前は?」
「颯茉様が対処して下さった」
「あぁ〜……
アイツも治癒術みたいなの使えるんだっけ。
……どうしたもんかね。
病気にならないために、メシを食うなとは言えないし……」
風の精霊神:颯茉と特別な契約をしているカノンは、その恩恵を最大限に受けられる。
元々得意だった風系統の精霊術が更に強化されたし、颯茉が前世生まれながらに持っていた「スキル」の能力が使えるらしく、カノンも劣化版の「再生」が使用可能となった。
つまり手遅れにならない程度のケガや病気ならば、カノンも治せるようになった。
あとは、解毒や回復薬の効果を底上げしたりだね。
妹のアリアは使える治癒術が、自分には使えないと嘆いていたし、念願叶って良かった、良かった。
今回は、気付かないうちに 粉媒楢の因子を取り込んでしまったため、颯茉が治してくれたらしい。
そうじゃなければ、俺が真っ先に「完全再生」をのスキルを使っている所だ。
必要無さそうだから、どう対処をしたのか、質問をしたが。
「まず何よりも先にして欲しいことなら……ある」
「ヵ……ツイキがそんな事を言うなんて、珍しい。
何?ナニ??」
俺に頼み事をするなんて、天変地異の前触れか!?
そう思ってしまうくらいに、余りの珍しさに、思わずカノンと言いそうになってしまった。
他人の前で口調や声のトーンを変えるのは、誰にでもある事だ。
なので万が一誰かに盗聴されてても言い訳が効く。
だが呼び名だけはね、どうにもならないからね。
前のめりで聞くと、小さな、か細い声で「……女装を解いて欲しい」と言われた。
落ち着かないのだそうだ。
まぁ、この部屋に入ってから声だけ通常仕様に戻したから、違和感は確かにあるだろうが。
残念ながら、オプスクリス開拓村にいる間は、この格好のままで〜す。
俺だって、化けの皮を剥ぎたいよ!
顔が重いんだもの。
寝る時くらいは、落として良いだろうか。
夜這いとか、流石にして来ない……よな?
あの村長??




