神さま、ボヤく。
頂いたメニューがオプスクリス開拓村で日常的に食べられているメニューならば、脂肪は十分。
ミネラルとビタミンは、ソコソコ摂れている。
だが圧倒的に、タンパク質が足りていないな。
樹化病が流行する前は、もっと頻繁に狩りに出ていたと言うし、以前はまだマシだったのだろう。
だが魔物の強さは変わっていないのだ。
動かせる人員が減って、頻度が減ったと言った所で、たかが知れている。
メニュー的には、短期ならば問題無い。
だが好き嫌いの影響か、女子よりも男子が優遇されるが故なのか、セリアは棒のように細い。
日常的にカロリーが足りていない証拠だ。
長期的に見た時には、タンパク質の確保と、あとは絶対的な量を増やさなければならないな。
根本的な原因は 粉媒楢ではなく、オプスクリス開拓村の戦力の乏しさになる。
ぶっちゃけコレは、すぐに解決出来ると思う。
地球人の血を継いでいるのならば、固有の「スキル」があるはずだから。
何代を経ると血が薄れて発現しなくなるのかまでは分からない。
だがいずれにせよ、精霊術は使えるはずだ。
地球人は「スキル」に慣れすぎていて、似て非なる精霊術を使う感覚を掴むのが難しい。
そのため使えないとされているが、俺やカノンのように、使える者もいる。
訓練次第でどうにでもなるものなのだ。
特に「スキル」を使う際に消費する生命エネルギーは、霊力に換算すると物凄い莫大な量になる。
しかも霊力と違い、生命エネルギーは寝たり食べたりすれば、勝手に回復する。
霊力はそれだけでは回復する量が微々たるもので、自然に存在する霊力を、直接体内に取り込まなければ回復が出来ない。
霊力の濃度が高い所に行って深呼吸をしてみたり、地中の霊力を吸い上げた野菜を使った食事を食べたりして、ね。
地球人の血が入っているだけで、生命エネルギーは「スキル」と共に遺伝をする。
チート能力が備わっているようなものなのだ。
なのに使わずにいるなんて、もったいないにも程がある。
他の村や街にも配っている、精霊術を使うためのHowTo本を提供するのはもちろんするとして。
瑞基がこの地下施設を造ったのであれば、改善案の提案をし、一考して貰たいな。
そのためにも、いい加減カノンへ向ける、その警戒心を解いて貰わなければならない。
「ご馳走様でした。
……この骨、おかわり頂けませんか?」
「お粗末さまで……え?」
俺の言葉に、お膳を下げようと立ち上がり掛けたセリアの、動きが止まる。
「おい、無遠慮が過ぎるぞ」
「ですがこちら、余っているのでしょう?
少し手を加えれば美味しく食べられそうなので、試食をしていただけないかなと思ったのですが」
ちゃんと俺は腹いっぱいになったし、これ以上食べるつもりはないよ。
だけど、普段廃棄している部分も食べられるようになるなら、それに超したことはないじゃない?
俺達が村の内部を弄り回す事に拒否感を示されたとしても、少しでも取り入れられる要素を、例え微々たるものでも採用してくれれば、今よりも生活は改善される。
特に食事は、生きていたら切り離せないものだからね。
栄養をシッカリ取れば、 粉媒楢に侵されたとしても、抵抗出来るようになるのだ。
慢性的な栄養失調じゃなければ、きっとココまで被害は大きくならなかったと思う。
瑞基に命じられて、セリアが再び席を立つ。
困惑したまま、部屋を出て行った。
「……それで?
セリアを排して、何を話したいの?」
「あぁ、分かりましたか」
「だってアレを美味しく、なんて無理だもの。
うん、ならあの子がいない状況を作りたいってことに自然となるでしょ?」
失礼な。
俺がウソを吐いてまで、セリアを追い出したと思っているのか。
とんだ風評被害である。
「いえ……骨髄を美味しく食べる方法も、勿論お伝えしますよ」
「は?」
四次元ポシェットからニンニクやタイムのような香辛料と、バケットや大きなキノコのようなプラスアルファの食材を取り出す。
こういうものと合わせて焼けば、あのクドい脂を気にせず十分食べられるようになる。
ニンニクも香草も、育てるのは比較的簡単だ。
種さえ渡せば、すぐに取り入れられる。
骨髄料理に使わなかったとしても、他の料理にも使えるのだ。
育てない選択肢は無いだろう。
キノコなんかは栄養も豊富だし、この世界では回復薬の材料にもなる。
脂との親和性が高いし、椎茸もマッシュルームも、エノキやエリンギも置いていきたい。
シメジや舞茸は……育てられるかなぁ。
菌糸類ってそれぞれ最適な湿度や気温が違うから、育てるのが難しいかもしれない。
あとはザワークラフト……じゃなかった甘藍の塩漬けがあるのなら、当然生の甘藍もあるだろ。
時期になれば、このスープを使ってロールキャベツもどきを作ったり、唐辛子漬けでチゲスープを作ったりとか、幾らでも応用はきく。
レシピも置いていこう。
もっと野菜をスープに多く入れられれば、脂は気にならなくなるはずだよね。
だから田畑の改善は推進したい。
受け入れてくれるなら、品種改良して大人しくした妖鶏を譲渡しても良い。
生体は四次元ポシェットに入れられない。
なので持ち歩いてはいないけれど、妖鶏の遺伝子は「知識」に登録済みだ。
いくらでも、「万物創造」のスキルで創り出せる。
鱗魔猪の糞も鶏糞も、立派な肥料だもの。
肉から内臓、排泄物まで何でも利用出来る、優秀な家畜だからね。
取り入れない手はない。
汚れ仕事も上等だと思ってくれるなら、瑞基は優秀な「地のスキル」の持ち主なのだ。
土に混ぜ込んで攪拌して、好気発酵させる事は容易だろう。
琥珀も生前やっていたのだし。
是非父の背を追って、能力を発揮してくれ。
まぁ、窒素分が多すぎて、追肥するには合わない野菜もあるけれど。
そういう部分も、彼の研究ノートに書かれて居たはずだ。
継いでいるなら、参考にして貰えば良い。
試行錯誤が必要な部分は、俺達が口出しするものではない。
教えを乞われれば、もちろん教えるが。
衣食住の、食の部分だけでも、簡単に改善出来る項目がコレだけある。
俺が瑞基に話をしたかったのは、いい加減カノンを賢者と認めて欲しいと言う事だ。
俺達の言葉を聞き入れる体制を取って貰わないと、話が出来ない。
彼は自分から賢者と名乗る事は少ない。
周りが言っているだけである。
そのせいなのか、自称するのに抵抗があるようだ。
だから強く言いはしないけれど、そのせいで瑞基との対話が上手くいかず、村の中の様子を確認し対処するのが遅れて、 粉媒楢の侵略が進んでしまったらどうするのだ。
その責任を負う覚悟が無いなら、ジャマをしないで欲しい。
……と言うか。
責任なんて、事が起きた後に口先や態度で取るものではない。
人が死んでからでは遅いのだ。
行動した、その結果ダメだったのなら、ソレは致し方が無い。
諦めもつく。
自分も、周りも。
その段階で発生した責任は、取らねばならないだろう。
だが何もせず意地を張って、救える手立てがある者の行動の邪魔をして、結果人が死んだ後に取る責任なんかに、何の意味がある?
首を差し出した所で、誰も喜ばないし溜飲も下がらない。
むしろ死んで逃げたと、責めるだろう。
怒りのやりどころが無くなり、遺された者達は更に苦しめられる事となるだけだ。
この村より外に 粉媒楢の被害を出すつもりは、毛頭無い。
危険な魔物だからね。
だからといって、住民がいる村を焼き尽くしてはいかんだろう。
だから協力して貰えないからとヘソを曲げて、この村を放置するつもりもない。
全滅したと、後々風の噂で聞いても目覚めが悪いし。
最善を尽くすためには、責任者の協力が必要不可欠なのだ。
どうやら村長は別に居るらしいが、話を聞いていると、女子供を明らさまに見下すタイプのように思える。
自分さえ良ければ問題無い、みたいな性格ならば、自分に魔の手が伸びるその瞬間まで、事の大きさを正しく理解出来ないだろう。
自分にしか目を向けていないからね。
世襲制なのか何なのかは知らんが、何故そんなろくでもない奴を頭に置いているのだか。
自分の感情を優先してしまっている時点で、瑞基なら良いとも思えないけどね。
友人の娘じゃなければ、一度は怒りを爆発させている所だぞ。




