神さま、食す。
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「あの、本当に残り物でいいのですか……?」
「他に何を食べたのかを説明して頂きたいですが、むしろ、コレが良いです」
「はぁ……」
困惑しているセリアから、食器の乗せられたお盆を受け取った。
粉媒楢に喰われている真っ最中の人であると認識してしまった今、あの部屋には長居したくない。
かと言って村人達への説明をしないまま、自称賢者とその弟子、なんて怪しい人達をウロウロさせるのも宜しくない。
感染症が蔓延していると思われている、真っ最中なのだ。
外部からの客人ですら、招いたとなれば浅慮だとセリアが責められてしまう。
一応、代表には許可は貰っているそうだけど。
どうやらソレも、子供の相手をしているヒマは無いと、適当に返事をされただけのようだ。
言質をとった事には違いないからと、俺達を迎えに上層に戻った所で、瑞基に捕まり、胡散臭いと言われ同行したという流れだそうだ。
つまり俺達を歓迎してくれている人は、セリア以外に居ない。
信用の置けない状態で、他の住民に姿を見られるのも、下の階に行かれるのも困る。
そう言って最上階の同じフロアの中に、瑞基が俺達が寝泊まりするための部屋を急遽、作ってくれた。
地下一階のこの場所ならば、居住区や商業区等に許可なく立ち入る事が出来ない。
何かが会った時に疑いの目を向けられずに済むので、俺達もその方が有難い。
……と言うか、まだ瑞基はカノンを賢者と認めていないのか。
間違いなく本人なのにね。
カノンの親の名前を出せば、すぐに‘’賢者‘’本人だと信じて貰えそうなものなのに。
‘’賢者‘’が三英雄のうち、二人の息子だっていうのは、世界的にも有名な話なんだろ?
それにカノンには使われていなくても、父親である基未には、瑞基と同じ‘’基‘’の漢字が入っている。
ソコで血縁者か否か判断しているなら、話を通りやすくするためにも、教えてしまえば良いのに。
……普段使わないからって、父親の漢字の書き方忘れているとか、言わないよな??
セリアに運んで貰った食事は、思っていたよりはマトモだった。
キトキトの脂が浮いている、野菜スープ。
それとふくらはぎ位の長さと太さのある、半月型の何か。
丸太を半分に切ったら、こんな感じだよね。
見るからに硬そうだ。
どうやって食べるんだろ。
疑問には思うが、慢性的な食糧難の中、それでも残される食事となると、余程酷い、豚のエサみたいなものなのだと想像していたのだが。
匂いは独特の獣臭があるけれど、思っていたより全然普通だ。
コレをこのままかぶりつけと言われたら、顎が鍛えられそうだなぁとは思うけれど。
少なくとも、不味そうには見えない。
外は、とにかく寒い。
そして精霊術が使えない人にとって、魔物はただの脅威でしかない。
なのにソレを、クッソ寒い中走り回って狩らなきゃいけないんだろ?
弓が使えないから農業に従事している男性がいたとか言っていたから、狩りも追い立てる方ではなく、ワナを仕掛けたり、待ち伏せする方法を取っているのかもしれない。
どっちだろうと、外で活動するのには変わりない。
そのためには、脂肪の層を着ていないと、カロリーが足りなくて発熱出来ず、凍死する危険性が高くなる。
だからスープがコッテリ系なのは、当然と言える。
角骸鯨を含めた、この地帯に棲息している魔物が皆、分厚い脂肪に覆われているのも、ソレが理由だ。
突然の吹雪が襲っても、耐え忍ばなければならないからね。
特に角骸鯨なんかは、極寒の海の中を泳いで移動する上、狩りは水陸両方で行う。
脂肪もそうだが、毛皮もかなり立派な構造をしていそうだ。
そうなると、倒すのも一苦労だろう。
弓程度の攻撃じゃ、一発で倒すのは、まずムリだ。
長期戦になれば、体力勝負な部分がどうしても出てくる。
そしてそうなると、魔物の欠損部位が増えて、得られる肉を含めた資源が減る。
しかし命あっての物種だ。
一日に何匹も魔物を狩れるような力は無いだろうし、t単位の獲物を持ち帰った所で、住民で分配すれば一人あたりの食べられる量は少なくなる。
魔物の中身が、全部可食部なワケないし。
余す事無く使えはするだろうが、骨や毛皮は流石に食わないだろう。
もしかしたら、血はソーセージにして食べてるかもしれないか。
ロシアの死んだおばあちゃんを始めとして、牧畜が盛んだった国や地域では、古くから作られていたものね。
それでも精肉と内臓を合わせた可食部なんて、多く見積っても体重の半分しかない。
牛で約四割、豚で約五割、鶏が六割未満って所だったから。
だから施設では、成長が早く、オスは肉、メスは卵を産ませ、年老いてからも十分食べられる鶏が、貴重な動物性タンパク質だったんだよね。
肉用鶏のブロイラーなんかは、動物愛護団体も真っ青な過密飼育をしていたよ。
採卵鶏のレグホンや、ブロイラー用の雛を産むためのプリマスロックは、ストレスを与えないように、比較的広い部屋を与えられていたけれど。
それでもまぁ、限られた空間で、太陽光も浴びれなかったから、ストレスは半端なかっただろうね。
かつては経済効率が下がった老鶏、親鶏、成鶏、あと怪我が酷くて成長出来ずに死んでしまった個体なんかは廃鶏とされていたけれど、有難くタンパク質として、ちゃんと食べてたよ。
なにせ育てなければ、手間暇をかけないと、肉は手に入らなかったからね。
この世界みたいに、外に狩りになんて行ったら、磁気嵐と宇宙線に晒されて死んじゃうもの。
そもそも、外にいた動植物は全て全滅したって教えられていたし。
それに採卵用として、食肉用よりも栄養添加の高いエサを与えられているから、その肉も相応に養分が高い。
肉質が硬い以外の問題が無いのだもの。
ミンチにしてしまえば、肉質なんて関係ないし。
旨味が凝縮されていて、濃いダシが取れる、スープには持ってこいな食材だ。
食べない手はないよね。
施設ですら、そうやって食えないとされていたものでも、なるべく食べていた。
環境的には、この村は施設と似ている。
選り好みをして残飯を出すような余力が、あるようには思えないのだが……




