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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを無双する。  作者: 可燃物


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神さま、交渉する。

眉根を下げ、あくまで自分達の要求を通すためではなく、村を心配しているだけなのだと主張すると、セリアは再び両手をグッと握り締めた。


そして「がんばります!」と小声で返事をして、瑞基のすぐ傍まで駆け寄った。



「賢者様!」


声を掛けられ振り向くカノン。

……と、瑞基も。



瑞基は溜息を吐いて、眉間にシワを寄せながら、話の腰をポッキリ折ったセリアを咎めた。


その顔が、つくづくカノンソックリである。



「セリア。

 私は今、彼と大切な話をしています。

 あなたの話はまた後で聞きますから、後ろに控えていなさい」


「いいえ、賢者様。

 この人たちは、わたしのお客さまです。

 村長からも許可をいただいてます。

 それに、風も出てきました。

 お話をするのであれば、お家でお願いします」



なぁんだ。


代表からは既に許可が出ているのに、瑞基が個人で暴走して通せん坊をしているだけなのか。


なら遠慮なく入ってしまおう。



だがセリアの手は、小刻みに震えている。


マントを羽織っている今、萎縮しているのは、寒いからではあるまい。






名前ではなく‘’賢者‘’と呼んでいるのは、瑞基がこの村の中で立場が強い事を意味する。


賢者と言えば世間一般ではカノンをさす言葉だ。



しかし他の人間を賢者と呼んではダメ、なんて決まりはない。



名付けが禁止されているのは、三英雄と魔王の名前くらいだ。

特に通称ならば、別に自称しようが問題あるまい。


名前負けと言われてイジメられでも、自己責任としか言えないが。



そんな中、瑞基は‘’賢者‘’として村の人達に受け入れられている。

ソレだけの働きをしているのだろう。



ならば村の代表という立場では無いにしろ、彼女の地位はかなり上の方にあると見て良い。



瑞基の意に反する事をすれば、罰せられる事もあるやもしれない。






この子の立場が悪くなる振る舞いは、したくないなぁ。


短い付き合いでしか無いだろうが、既にコチラの都合の良いように事を運ぶため、利用させて貰っている。



セリアが自発的に俺達のためと思って行動していても、ソレは俺がけしかけた結果だ。


命を助けた恩以上に便利道具扱いをして使い捨てをするのは、よろしくない。



「横から失礼致します。


 貴女方が大切な話をしているのは事実なのでしょうが、セリアの発言も最もです。

 風が出て来たということは、この後ブ……吹雪がこの一帯を襲う可能性があります。

 そうなれば、貴女も村に入るのが難しくなるのでは?」



やっべぇ、ブリザードって言う所だった。


バレないように慎重に行動しようと、決めたばかりだったのに。






この世界において英語は基本的に、精霊達が喋る言葉だ。

日常会話では使われていない。



公用語である日本語以外だと、ラテン語っぽい響きに感じる、元々この世界で使われていた言語が、魔物の名前や地名で残っている程度だ。


カタカナ英語は通じない。



瑞基には通じるだろう。

彼女には、通じてしまう。



何て意味の言葉だ?と他の人なら考える所、通じてしまうが故に、俺が地球人(エルフ)だとバレて、芋づる式に魔王本人であり、自分の父親の仇だと知られてしまうかもしれない。



カノンが何となく通じてしまうから、特に気にせず今まで喋っていたけれど、日本語縛りで喋るのをクセ付けるべきだろうか。



微妙なニュアンスとか、長い言葉を一言で言い表せられるから、便利なんだけどな〜……


それこそ、ニュアンスとか日本語で言おうとしたら、ドえらい長い文章になってしまうだろ?



ある言葉が持つ表面的な意味以外の、直訳では表現出来ない微妙な意味や感情。

また、その言葉を用いることによって意図される事柄や雰囲気。



……説明口調が過ぎる。


そんなグダグダ喋るヤツがいたら、右頬を前置きなく殴り飛ばす自信があるぞ。



「この業務はアウトソーシングにアサインしてアサップでよろしく!」


……みたいな感じで、日本語で良い所をわざわざカタカナ語で言う。

そんなウザイ喋り方をするつもりは毛頭無い。



だから普段使いしやすい英語くらい、普及させてくれ。


全部のカタカナ語を禁止すると、ストレスが溜まりそうだ。



しかしパンは麦餅ではなく、パンと言うんだよな。

ビールは麦酒でワインは葡萄酒だけど。



……あぁ、施設に日常的にあったものか否かの差か。


パンは日常的に食べられていたけれど、アルコールはごくごく一部の特権階級の人の嗜好品か、成人を迎えるまで生存権を手放さなかった人々へのお祝いで振る舞われるくらいなものだったから。


身近に無いものだから、この世界に転移した地球人(エルフ)達が日本語で言うならこうかな?と考えたのだろう。



苦労が偲ばれる。






「……私たちは、この村の者よ。

 貴方たちが大人しく立ち去ってくれれば、天候なんて関係ありません。

 中に入るのなんて、わけないわ」


「そうでしょうか?

 拝見させて頂いた方陣を見る限り、七つの術式に霊力を流しながら、指でなぞる必要がある形式ですよね??

 しかも、素手で。


 今ですらお湯が一瞬で凍るような外気温です。

 ココに暴風が加われば、とてもじゃないですが、痛みで方陣に触れるなんて出来ないでしょう???


 何よりセリアは、我々の入村許可は取っていると仰っています。

 我々には、病人を置いてココを立ち去る、理由がありません」


「貴方……なんでそんなことまで分かるの!?」


「……、…………賢者様ガ仰ッテマシタ」


「クッ……!

 賢者の名は、ダテじゃないってことね。


 ……いいわ。

 セリアに免じて、入村を許可します」


悔しそうにカノンを睨み付けながら、瑞基はようやく彼が賢者だと認めてくれた。


対してその賢者様は、恨めしそうに俺をジト目で見下ろす。



まぁ、良いじゃん?


カノンだって、今よりも鑑定眼を使いこなせるようになったら、早かれ遅かれ、見えるようになるんだし。


方陣に関しては、俺よりもカノンの方が余程知識があるのだから。



俺が方陣を写している間にも、俺はどんな内容の術式が書かれているのか考察する時間があった。


そのため今、どんな内容かペラペラ喋れただけだ。



同じ条件だったら、カノンの方がより詳細を把握出来ていた事だろう。


俺が言った答えまで辿り着けていなかったとしても、仕方ないのだ。


……だから、ねめつけてくれるな。



お陰で中に入れるのだ。

結果オーライじゃない。

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