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もと神さま、新世界で気ままに2ndライフを無双する。  作者: 可燃物


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神さま、アハ体験をする。

「貴方達が賢者を名乗るなら、真名を提示しなさい。

 そうじゃなければ、村の中に入れることはできないわ」


「マナ?」






精霊教会が国王暗殺未遂事件を犯した時に、聞いた覚えがある響きだ。



表立って名乗っている名前と、実際の名前が違う場合、後者を真名と言うんだったかな。

精霊がそうだよね。



彼等の場合は、真名――前世の名前を呼ばれると、地球の感覚に引っ張られてしまって、この世界との繋がりが薄くなってしまう。


そのせいで弱体化してしまうから、呼んではいけないと言われている。



カノンにそんなものがあるなんて、聞いた事はないが。



「……その様子だと、アンタじゃないわね」


「こいつは精霊様から直々に御使いに任命された、俺の弟子、だ。


 国王から視察の勅命状も出ている。

 (あらた)めるなら出す」



今の、間!

絶対弟子の後ろに(笑)(カッコわらい)って付けただろ、テメェ。



対外的には弟子の方が通りが良いからそうしようって、精霊の皆に言われて頷いたのは、他でもないカノンだろうが。


お前が自然体で紹介出来ずにどうする。






「私が出すよう要求したものは、真名です。

 それ以外は、入村の交渉材料にはなりません」


女性はカノンを真正面から見上げ、キッパリと提案を跳ね除けた。



身長差こそあるけれど、ハキハキとした喋り方と、堂々とした雰囲気のせいだろう。

なんだか、デッカく感じる。



着膨れさえしていなければ、バリキャリウーマン然としていて格好良かったのに。



人は見た目が九割というものね。


物理的にデカいせいで、残念が過ぎる。






「なぁ、真名って何?」


「ああ、地球人(エルフ)には独自の文字が伝わっていてな。

 普段使わないその文字で示す自分の名前は、家族や友人といった親しい者しか、基本的に知らない。


 ……なので、こういう場面で示すのは、少々……と言うよりは、かなり御免蒙りたいな」


「へぇ〜……

 ソレって、お姉さんがカノンに家族になってくれ的な、遠回しな告白をしているとか、そんな意味になるって事?」


「あ”?」


「ばっ!

 ち、違う!

 断じて違うぞ、少年!


 本当に賢者なら、私の知人なのだ!」


「俺は知らん」



お姉さんの素の喋り方は、ソッチなのね。


慌てふためき、顔を赤く染め、球体になっている身体から伸びる手をバタバタと振り回し、俺の言葉を慌てて否定した。



ソレに対して、カノンはぶっきらぼうに短く返す。



身体の造形はともかく、美人さんに好意を寄せられたのかもしれない、と思えば、男なら例外なく嬉しいもんだろうに。

そんなゲンナリとするなよ。


お相手に失礼だぞ。






カノンは知らないの一点張りだが、この女性が、賢者と知り合いだとウソを吐く理由が、思い浮かばないんだよなぁ。



部外者を村に入れたくないだけなら、最初から俺達が諦めて立ち去るまで、放置していれば良かったんだもの。



かといって、カノンが覚えていない、ではなく知らないと断言しているのだから、会った事は確実にない。


いくら年寄りと言えど、痴呆は入っていないもの。

まだまだ肉体も脳ミソも、現役バリバリだ。



有名人に対して、同じ空間にいた事があるとか、目が合ったとかで‘’会った‘’と言ってしまう人は少なからずいる。


そんな感じなのかな?






「ならば貴女が先に書いて見せろ。

 知り合いの名は忘れん」


俺なんて、ただ会った事があるだけの人だと、必要無いと判断して、サッサと脳内デリートかましちゃうのに。


ただの知り合い止まりの人も、施設のマザーコンピューターが管理している名簿でコッソリ照らし合わせないと、思い出せないよ。


カノンは偉いねぇ。



滅茶苦茶親交のあった友人連中なら、モチロン覚えてるけどさ。


そのせいで、精霊の皆の本名をウッカリ言いそうになってしまうんだもの。



だから忘れてしまえた方が、俺としては都合が良いのだけれどねぇ……


忘れられない、なぁ。






カノンは俺が渡した紙とペンを女性に又貸しをする。


一言許可くらい取れよ。

貸しはしたが、あげはしていないぞ。



受け取った女性は、眉間にシワを寄せた。


植物で作られた紙はまだ、見た目が羊皮紙と近いから問題無いだろう。

しかしボールペンは、初見では使い方が分からないかもしれない。


書き心地も全然違うし、文字が上手く書けないかも。



鉛筆や筆が主流だからね。

あとは羽根ペンか。



だが魔物の羽根は、軽量化の付与に使われる事が多いため、文房具としては市場に出回らないんだよね。

何より高くつく。


なのに先が潰れればその都度削らなければならないのだから、不便で仕方がない。



学校がもっと広く一般化されれば、書く事に対してもっと利便性が求められ、万年筆が一般化されると思うのだけれど。



今回のカノンみたいに、使う場所によっては、ペン軸の中身が凍ってしまってインクが溢れてしまう問題も出てくるだろうが。



インクカートリッジが交換出来る仕様にすれば、温度を一定に保つ付与を施せば良いだけだ。

万年筆もお手製なのだから、作ってしまえば良いのに。






それよりも気になるのは、女性の顔だ。


眉間にシワを寄せるその顔は、やはり見た事があるような気が……



……クルリと、顔を横に向ける。

眉間にシワを深く刻んでいる、カノンの方に。



もしいつも傍にいる精霊神がいたら、間違いなくソチラも見ていただろう。



なぜ今まで、気付かなかったのだろうか。



コイツ等、どことなく雰囲気が似ていないか?



ダルマストーブ姐御(ネキ)がモコモコなイヤーカフをしているせいで、耳が見えないから確信が持てない。


鑑定眼を使って、確認してしまいたい。



だが鑑定眼で視ると、年齢やら体重やら、本人が隠したがるような、色んな個人的な情報が抵抗も許されず表示されてしまう。

断りもなく女性を視るのは少々、気が引ける。






良心と好奇心の応酬に、内心身悶えしていると、女性は自分の真名を書き終えたようだ。

牡丹餅が入った岡持や傘でも渡すかの如く「んっ!」と紙をカノンに向かって突き出す。



もし俺が予想している人ならば、幼少期に一度、会った事があるんだよね。


その頃の姿しか知らないが、彼女は俺の死後も、この世界に転移して来るまで施設で過ごしていたのだ。

マザーコンピューターに登録されているだろう。



名前さえ分かれば、検索出来る。



そう思い書かれた文字を覗き見ようとしたら、カノンに咎められた。


口を尖らせ、せめて読み上げてくれやしないかと、カノンが紙を開くのを待った。



「これは……何と読むのだ?

 ずい……?」


「わざと読めないフリをしているのですか?」


「ズイウンやショウズイに使われる文字だろう?

 違うのか?」


互いに似た顔で、イライラしながら押し問答をするのは辞めないかい?



話題に置いてけぼり喰らっているセリアが、後方でどうしたら良いか分からずにオロオロしているよ。



お互い何百歳と歳を重ねているだろうに。


若干十四歳の子供に、気を遣わせるんじゃありません。






瑞雲や、祥瑞に使われる漢字。


なるほど。

やはり俺が知っている人物で、間違いない。



彼女の名前は瑞基(ミヅキ)



地の精霊神:琥珀(こはく)の、実の娘だ。






……正確に言えば前世の、ね。

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