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未来の種


長いテーブルには、白いテーブルクロスがかけられている。机の上には、蝋燭や豪華な料理の品々が並べられている。パンやスープは湯気を立てていた。私は食事作法を思い出しながら銀のフォークとナイフを手に食べ進めていく。対面席に座るエリオスをチラリと見ると彼は完璧な所作でナイフとフォークを使い、食事していた。


「…」


「…」


沈黙が重い…!室内は静かで時計の針の音と、時折ナイフとフォークを動かす音や杯を置いただけが響く。沈黙に耐えきれず、私は何か話題を探す。


「えっと…殿下に相談と言うか…一つ、許可を頂きたいのですが…」


「何だ」


エリオスが顔を上げた。紫の瞳が私を捉える。


「城の外に行ってもいいですか?買い物をしたくて…」


エリオスが私の姿を眺める。彼は杯を手に持ちながら言った。


「ああ、ドレスやらアクセサリーを買いたいのか」


彼は思い出す様に口にする。


「今までの側室達も金を贅沢に使い、俺に贈り物をするよう、求めて来たな」


ウンザリした様に彼はため息をついた。杯に口をつけて飲む。


「勝手にしろ」


そう言って杯を置いた。外出許可が出たことに安堵しつつ、私は言った。


「あ、いえ…そうでは無く、花の種を買いに行きたいんです。部屋の庭にある花壇に埋めたくて」


元王妃の部屋の庭のには、花壇の跡がある。それを修理して花の種を植えたくなったのだ。何せこの城は本を読む事以外、娯楽が無いのだ。暇を持て余した私は、ガーデニングを始めたくなった。庭にあったレンガを並べるだけでも花壇になるし。


「花の種?」


意外な事を聞いた、と言う様に彼は呟いた。


「はい。花を植えたくて」


私は頷く。今の季節なら何を植えるのがいいんだろうか。私は花壇に咲いた花を思い浮かべてワクワクする。


「…勝手にしろ」


今度は静かに、彼は許可を出した。エリオスにとって興味の無いことを話してしまった。私は俯いて食事を再開した。そのまま、お互いに何も喋らない時間が続いた。長く感じた食事の時間が終わり、私は解放された気分で外出の準備をする。

私はリエンと一緒に、久しぶりに外に出た。グラディア王国の城下町には、大きな橋がかけられており、そこから沢山の人や馬車が出入りしていた。街中をよく見ると風車や噴水、レンガ道など、インフラが整備されている。


「さすが大国ですね!すごく賑わっています!」


リエンも初めて見る景色に興奮している。


「そうね。それにインフラもしっかりしてる」


「エリオス様が現王になってからインフラを整え、新しくしたそうですよ!」 


「へぇ、そうなのね」


老化していた物を新しくし、まだインフラが普及してなかった範囲にまで広げたらしい。だから民はエリオスを恐れつつ、敬意も同時にある様だった。街中には、グラディア王国の国旗だけで無く、王家の紋章の旗も飾られていた。 


「戦だけで無く、国の統治もちゃんとやってたんだ…」


私は怖い一面ばかり見て来たけど、彼の賢王の一面も知った。私は花屋さんに寄る。


「あの、花の種ってありますか?」


「はい!今の時期なら…この花がおすすめですね!初心者でも、育てやすいですよ!」


「じゃあ、それで」


私は桃色の花の種を貰った。


「良かったですね!ステラ様!」


「ええ。帰る前にお茶でもする?」


「ステラ様とご一緒できるなんて…!嬉しいです!」


リエンは大袈裟な程に喜ぶから私は微笑ましくて笑ってしまった。リエンとカフェでお茶をしてから帰ると、廊下でジェードと出会った。


「おかえり。買い物をして来たの?」


「ただいま。そうなの、庭の花壇に埋めようと思って」


ジェードは廊下に飾られていたある肖像画の前に立っていた。


「その人は…?」


私が気になって尋ねると、ジェードは嬉しそうに言った。


「この国の初代国王だよ!民のことを心から想う、素晴らしい人だったんだ!」


ジェードは目を輝かせ、うっとりと語る。


「初代国王は本当に素晴らしくて、優しくて人格者だったんだ。最初にこの国を作り、貧しい者達にも住む場所や仕事を与えたんだ。福祉も充実させていたんだよ」


それから私はジェードに、いかに初代国王が素晴らしかったかを語られた。何故だろう、ジェードが推しを布教するオタクに見えてきた。


「叶うことなら、同じ時間を生きたかった。でも、初代国王が作ったこの国を見守ると決めたんだ」


初代国王の肖像画を眺めるジェードの瞳には、親愛と敬愛が滲んでいた。


「現王であるエリオスの肖像画は無いんだ。そんな王、前代未聞だよ」


ジェードはため息をつき、呆れた様に溢した。


「歴代の王の中でも、一番の問題児だよ。肖像画が無くても、忘れないだろうね」


その声には、呆れと深い親愛があった。


「ーーそれでその時、この国の最果てで初代国王が一緒に朝焼けを見ながら俺に、一緒に建国しようって言ったんだ。はぁ〜っ!もう最高!その瞬間、最後までついて行くって決めたんだ!同じ景色を見たいと思ったんだよ」


私はジェードに捕まり、結局最後まで思い出話しを聞かされることになった。そうして空はすっかり暗くなり、エリオスが部屋に来る時間が近づいていた。

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